2話 チーズちゃん
イシュタルがオーラを発するとその場にいたT-SHOCK本社の被験者達はイシュタルに迷いもなく平伏した。
彼等は口々にイシュタルの事を『女神』と呼んだ。
そんな中、一体だけメジャーな気ぐるみ『チーズちゃん』だけが彼等とは違う挙動をしていた。
イシュタル「それじゃあ行ってきます。すぐに戻ってきますので皆さんはここで待機していて下さい。これからの事は帰ってきてからちゃんと話し合いましょう。」
アルルを筆頭に一同は膝を付き頭を下げる。
ヤム「イシュタル様の事は僕に任せておきな!」
ヤムは得意げだ。
アルル:ヤムの奴め、調子に乗りおって。。。
アルルは内心ヤムの態度にイライラしていたがぐっと飲み込んでイシュタルに別れの挨拶をした。
するとイシュタルはまたオーラを輝かせ始めた。
その光はヤムとイシュタルを包み込んだかと思うと瞬く間に何処かへ消えてしまった。
二人の姿が完全に消えた後、アルル達は立ちあがると不満を漏らし始めた。
アルル「やはり心配だな。。。あの小僧が一緒だと余計に心配だ。」
「そうですよ。足手まといになるに決まっています。」
「あのヤムとか言う生意気なガキはどうにかならないのか?」
ウル「お前達、イシュタル様の決定だ。そんな事を言うべきじゃない。」
ウルは後にバアルの教育担当となる実直な男だ。
非常に几帳面で物事を常に論理的に考える『人種』の被験者だ。
アルル「それはそうだが。。。我々は心配で仕方がないんだ。」
「そうです。いくらイシュタル様が最高のティアマトのチカラを持っていたとしても身重の体であまり無理をされては。。。」
ウル「それは分かるが信じるのもまた忠義だ。主を信頼する事も臣下として大切な事だとは思わないか?」
アルル「確かにその通りだ。ありがとう、感情で道を踏み外す所だった。」
ウル「分かってくれたなら良い。」
アルル「なるほど、君は信頼できそうだ。イシュタル様に心血を注ぐ仲間として友になってくれないか?」
ウル「イシュタル様に忠誠を誓う我らは等しくイシュタル様の子であり兄弟だ。」
アルル「それではあのヤムに対してもそう思うか?」
ウル「イシュタル様の御心のままに従うのみ。」
アルル「そうか。。。確かにその通りだ。」
ウル「我々が必要な時はきっと連絡を下さるだろう。それまでは言われた通り情報を収集しよう。」
アルル「そうだな。。。情報は力だ。我らが微弱な能力ではきっと足手まといにしかなるまい。」
アルル「我々は我々にできる事でイシュタル様に貢献しようぞ。」
ウルはそれを聞いて少しほっとした様にうなずいた。
そしてようやく落ち着いたアルル達はまたニュースを見たり地元で手に入れてきたネットワーク機器で情報を収集し始めた。
そんな中、未だに一人で起き上がれない四角い物体『チーズちゃん』は部屋の片隅で力尽きていた。
ナズィだけが『それ』を凝視していた。
この『チーズちゃん』はさっきからナズィが見ている限り他の被験者達と違ってイシュタルに臣下の礼を取っていない。
そしてこの体力のなさ。
ナズィ:うーん、これはひょっとして。。。
そしてそんなナズィの視線と『チーズちゃん』に気がついた者が一人。
10代前半ぐらいに見える気の強そうな女の子だ。
名を『エリドゥ』と言う。
彼女は近くのテーブルにあったペン立てからコンパスを手に取るとそっと『チーズちゃん』に近づいた。
ナズィも何をするのかとそれを見ている。
タイツを履き、プリプリしたお尻を突き出してそれは動けずにじっとしている。
よく分からないが何故かイラッとくるお尻のプリプリ加減だ。
だからと言って普通だったらどうするという事もないのだが、このエリドゥは違った。
ナズィの様子を見て既にこのチーズちゃんを不審に思っていたのだ。
次の瞬間、エリドゥは何も言わずにそのプリプリしたお尻の頬にそのコンパスの針をぶっ刺した。
チーズちゃん「痛っ!!!」
チーズちゃんは足を伸ばしてのけぞるがそれでも起き上がることは出来ない。
ナズィはエリドゥのその行為自体にも驚いたがそれ以上に何かを納得した様だった。
ナズィ「やっぱり。。。」
チーズちゃん「何!?何!?何か刺さった!?」
チーズちゃんは不安そうな声を出してさらにジタバタするがやはり起き上がれない。
エリドゥはそんなチーズちゃんに無慈悲に何度もコンパスの針を刺した。
チーズちゃん「痛い!!痛い!!痛いです!!やめて!!」
それを見てナズィは流石に止めに入った。
ナズィ「ちょっと!ストップ!ダメよ!それ普通の人よ!」
「え?部外者?」
「ス、スパイか!?」
ナズィの一言で部屋はチーズちゃんをとり囲んで騒然となった。




