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87話 妊婦

家族の安否確認の為に1区へ戻った被験者達だったが家族も友人も被験者達の事を覚えている者はいなかった。


失意の中81区のエルヴィンの元に戻ってきたイシュタル達を待っていたのはナズィだった。


そしてナズィはイシュタルか身ごもっている事を赤裸々に皆に伝えた。

イシュタルはT-SHOCKの人体実験で体外受精によりエンリルの子を宿している。


ナズィの空気を読まない発言でこの事実を知った周りの被験者達の雰囲気は一変した。


女性も男性も憤慨して怒りを顕にした。


その中でもヤムの憤りは特に激しかった。


ヤムは引きつった表情で大きくため息をつくと頭を抱えてしゃがみ込み、凍りつく様な表情で一点を見つめ始めた。


しかし、その目にはハッキリとエンリルに対する殺意の炎が燃えている。


呪いの炎とでも呼ぶべきだろうか?


ドス黒い負の感情がふつふと沸き起こり後の『非情で冷徹』な雰囲気が見え隠れし始めていた。


しかし彼にはすでに合理主義な面が芽生えていた。


感情に任せて暴走したりはしない。


だからこそイシュタルにとって役に立つ存在になれない自分に絶望しているのである。


ヤムは呪文の様に一人ボソボソと何か呟いていたが近くにいた耳のいいウンマには聞こえていた。


ヤム「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」


ウンマ:こ、怖いわん。。。


狼狽えたウンマは聞こえないフリをした。


そんな被験者達を尻目にナズィは相変わらずだ。


自分だってつい今しがたエルヴィンに助けられるまではすっかり怯えていたのに喉元過ぎれば熱さ忘れるとはこの事だ。


ナズィ「で、これからどうするの?」


イシュタル「わたしはウルク孤児院のみんなを助けに行きたいわ。」


ナズィ「は?何言ってんの?ダメよ!アンタ妊婦でしょ?」


ナズィの妊婦という言葉がヤムの心に突き刺さる。


ヤム「ぐはぁ。。。!」


ウンマ:なんか倒れたわん。。。


イシュタル「そ、そうだけどこのまま放ってはおけないわ!」


ナズィ「それに今どこにいるのか分からないじゃない!」


イシュタル「居場所なら見つけたわ。」


ナズィ「え?ホントに?どこに連れて行かれたの?」


イシュタル「ゾーン5から北東へ100マイルぐらいの所に軍の収容施設みたいなのがあるわ。そこにいるはずよ。」


ナズィ「ちょっと待って、軍の施設なんて危険すぎるわ。」


ナズィ「アンタ妊婦なのよ!?無理したらアンタもお腹の子も危ないわ!」


ナズィの「妊婦」「お腹の子」と言う言葉がヤムの心に追い打ちをかける。


ヤム「ウゲェ!ぐはあ。。。」


ウンマ:もん絶してるわん。。。



アルル「あの。。。イシュタル様、横からすみません。」


イシュタル「はい?どうされました?」


アルル「今の話、身重のイシュタル様自ら軍の収容施設に潜入すると言うのは我々としましては流石にとても看過できません。」


イシュタル「私のお世話になった孤児院の人達が捕まっているんです。」


アルル「しかし。。。」


「イシュタル様、危険です。」


「私が変わりに行きます!」


「俺も、俺は『擬態』ができます。潜入なら俺が!」


しかし、イシュタルは皆をなだめようとするばかりだ。


イシュタル「あの。。。皆さん、わたしは大丈夫なので心配しないで下さい。」


アルル「しかし。。。」


イシュタル「聞いてください。」


イシュタル「私も皆さんと同様あそこに捕まっている間に酷い思いをしました。」


イシュタル「今まさに『家族』がそんな目に遭おうとしているかも知れないんです。」


アルル「ではせめて我々も同行させて下さい。」


イシュタル「今回はT-SHOCKとは関係ないんですよ?皆さんを巻き込むわけには。。。」


アルル「我々はイシュタル様に忠誠を誓っております。どうかそんな事を言わないで下さい。」


イシュタル「えーっと。。。忠誠ってそんな大袈裟な。。」


イシュタル:大体なんでみんな私の事『様』つけて呼ぶの。。。?


アルル「足手まといにならない様に使える者だけでもお連れください。」


ヤムはこの時ハッとした。


ヤム「僕が!!僕が行きます!!」


イシュタル「アルル。。。?」


アルルの名乗りで皆、あ然となった。


何故ならアルルは色々あってブリッジをした状態で名乗りを上げていたのだ!

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