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86話 電撃発表

軍に拉致されたイシュタルの『身内』とは違い被験者達の家族や知人達は何故か記憶を失っていた。

アルルはひと呼吸おいて何かを割り切った様な表情を見せた。


そしてイシュタルが繋げていた直接会話(SP)で各地にいる被験者全員に自分の想いを語り始めた。


アルル→全員:皆に一つ言いたい事がある。


アルル→全員:皆、辛い思いをしたと思う。恐らくT-SHOCK本社のあの場所に囚われていた我々の事はもはや誰の記憶にもない様だ。


アルル→全員:あの場所で危険な人体実験体を乗り越えた我々は薬付けにされ、能力を抑えられて閉じ込められた。


アルル→全員:そう、我々には死すらも許されなかった。


アルル→全員:こうしてイシュタル様に救われてももはや帰る場所も無い。


アルル→全員:いや、もはや人ですらなくなった我々に最初から帰る場所などこの世界には無かったのだ。


アルル→全員:そして私はこう思うのです。


アルル→全員:これで良かったのだと。


これを聞いてその話を聞き入っていた者達はどよめいた。


そこら中から「何が良かったというのか!?」という不満の声が上がった。


しかし、アルルはそれが収まるまで静観してそれからまたゆっくりと語り始める。


アルル→全員:もし我々の家族や周りの人々が我々の事を覚えていたらどうなると思う?


アルル→全員:きっと家族はイシュタル様のお身内の様に拘束されてその先は生きては帰れないだろう。


アルル→全員:悲しい事ではあるが我々が人間として生きていた事実が忘れ去られることで我々の大切な人々も攻撃されずに済んでいるのだ。


アルル→全員:ここで我々が騒いでは我々を敵視する者達の矛先が我々の大切な人々に向いてしまうかも知れない。


アルル→全員:仮に家族を連れ出せても何も分かっていない家族は悪魔にでも拐われたかの様な気持ちになるだろう。


アルル→全員:我々は静かに身を引くべきだ。。。大切な人達の未来のために。。。


アルル→全員:以上だ。


しばらく沈黙が続いた。


皆、頭では分かっていても気持ちがついて行かないのだ。


その時だった。


ウンマ→全員:ウンマの母さんは犬にウンマと名付けて飼っていたわん。


ウンマ→全員:ウンマの事は分からなかったけどウンマと言う名前はきっと覚えていたんだわん。


ウンマ→全員:だから、僕達は完全に消えたわけじゃない。。。わん。


それを聞いていた者達は皆すすり泣いていた。


どうする事もできなくて悔しくて泣いていた。


イシュタルは居た堪れない気持ちになっていた。


今すぐウルク孤児院のみんなを助けに行きたかったが、被験者のみんなを先にエルヴィンの元へ戻すことにした。


イシュタル→全員:みなさん。集合場所に全員揃ったら取り敢えず一旦81区に戻りましょう。


イシュタル→全員:落ち着いて少しみんなで考えてみればいいアイデアが浮かぶかも知れません。


そして、しばらくして全員が戻ってきてから81区のエルヴィンの地下施設へテレポートした。


エルヴィン「おかえり、イシュタル。」


エルヴィンの声が聞こえるやいなやイシュタルは誰かに抱きつかれた。


ナズィ「イシュタル!」


イシュタル「ナ、ナズィ。。。?」


ナズィ「イシュタル。。もう会えないかと思ったよ。。。」


イシュタル「ナズィ、大丈夫?」


ナズィ「怖かったよぉ。。。エルヴィンが来てくれたときは天使かと思ったわ。」


そしてナズィはイシュタルのお腹に気が付く。


ナズィ「。。。んん?」


ナズィ「あれ??」


イシュタルのお腹をぽむぽむすると明らかに膨れていた。


ナズィ「アンタ。。。昨日より膨れてない?」


イシュタル「え?そ、そうかな。。?そんな一日で変わらないと思うけど。。」


ナズィはイシュタルを助ける時にイシュタルが身ごもっている事を知った。


しかしそれはここにいる者達は知らない事だった。


被験者達にどよめきが起こる。


アルル「あの。。。一体どういう事ですか?イシュタル様はまだそんな年齢ではないかと。。。」


イシュタルは言葉に困った。


いずれ分かること。


でも事の顛末てんまつを聞いてみんなは新しい命に祝福してくれるのか?


怖くて言葉が出てこない。


イシュタル:なんて伝えたら。。。


沈黙が続いた。


そして、そんな風にためらうイシュタルの耳にナズィの清々しい声が飛び込んできた。


ナズィ「あいつらの実験で体外受精させられたのよ。」


被験者達に衝撃が走る。


イシュタル「ちょっ!ナズィ!」


慌てふためくイシュタルを優しくナズィは抱きしめてさらに言う。


ナズィ「この子のおなかにはあのエンリルの子がいるわ。」


イシュタル「ナ、ナズィ。。ちょっとストレート過ぎ!」


周りにいた被験者達は驚きのあまり声も出なかった。

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