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80話 捏造されたニュース

子犬の様な少年のそのダンディな声と語尾が気になっている間に何かが決まり、みんながそれに納得してしまった。


そしてイシュタルは彼らにイシュタル様と呼ばれるようになった。

何だかよく分からない内に皆が納得してイシュタルをイシュタル様と呼ぶようになった後、エルヴィンの言うように取り敢えず1区の朝のニュースを見ることにした。


エルヴィン「アマクサ、1区の今朝のニュースをつけて」


エルヴィンがそう声をかけると


『1区の今朝のニュースを再生します。』


と、女性の声が部屋全体から聞こえた。


するとプロジェクターではないのだが部屋の白い壁に大きな画面が写し出されて1区のニュースが流れ始めた。


『速報です。昨夜未明、T-SHOCK本社ビル内の慈善事業部にて襲撃事件が起きました。これにより人から人へ感染の恐れのある難病指定患者が多数施設外へ逃走しました。』


ヤム「あれ?これって僕達のこと?」


イシュタル「人から人へ感染って誰がそんなデマを!?」


『事件当時の映像をご覧ください。』


画面がT-SHOCK本社の中の映像に切り替わる。


皆、息を呑んで画面を見つめる。


清潔感のある病室、明らかにあの地下ではない。


そこに大きな音がして警備員達が出動する。


すると次はエレベーターから降りたシーンだ。


そこ映っていたのは覚醒したイシュタルの姿だった。


逃げ惑う職員を次々に消し去るイシュタル。


その表情は冷酷そのものだ。


そしてどういう訳か実験体の苦しみのたうち回るシーンが挟まれる。


それから覚醒して姿が変形した者の映像やキメラの様な合成生物になった実験体達の姿があたかもイシュタルによってそうさせられたかの様に映っていた。


そして戦闘員もイシュタルに消し去られた後にそれら異形の集団がイシュタルに付き従う姿があった。


イシュタル「そ、そんな。。。これじゃまるで。。。」


『警察では行方不明だったイシュタル・カヤ17歳を事件に深く関与しているものとして行方を探しています。』


『この難病は発病すれば9割以上の確率で死亡する事が確認されています。そして人から人への感染のリスクがあります。一般の方は外出を避けて下さい。もし万が一この映像に映っている様な人、あるいは人の様な姿をしたものを見かけても絶対に近寄らないで下さい。』


『繰り返します。一般の方は外出を避けてもし見かけても絶対に近寄らないで下さい。』


イシュタル「そ、そんな。。。どうして?」


エルヴィン「先手を打たれたね。これじゃイシュタルが出ていったら警察病院から難病課に隔離されてしまうよ。」


イシュタル「どうしよう?ナズィにもこれ以上迷惑かけられないし。。」


エルヴィン「1区の警察より先にメディアと接触出来たらいいんだけど。。。」


イシュタル「。。。あっそうだ、ラフム先生!ラフム先生ならメディアに直接訴えかけられるよ!」


エルヴィン「そうだね。でもそれにしてもナズィに連絡を取ってもらわないとね。」


イシュタル「でも。。。」


エルヴィン「イシュタル、ここで彼女を頼ってあげないと君の為に危険を知りつつ単身T-SHOCK本社まで乗り込んでくれた彼女に失礼だよ?」


エルヴィン「それにこのニュースは彼女も見ている筈だ。先走ってまた何かし始めてしまうかもしれないじゃないか?」


イシュタル「確かに。。。そうよね。。。ナズィならまた一人で突っ走っちゃうかも。。。どうしよう?心配になって来た。。。」


エルヴィン「じゃぁ、やる事はひとつだね。」


エルヴィンは少し微笑んで頷いた。


それを見届けるとイシュタルは一呼吸おいて目を閉じた。


イシュタル:遥か遠く。。。ナズィを感じる。。。


イシュタル→ナズィ:ナズィ。。ナズィ。。。聞こえる?


しばらく沈黙が続く。


ナズィ→イシュタル:イシュタル!?ちょっとアンタ無事なの!?ニュース見た!?また大変な事になってるわよ!?


イシュタル→ナズィ:見た。。。人から人へ感染ってあれは完全に捏造された情報よ。。。


ナズィ→イシュタル:でしょ?嘘ばっかりついてて私、腹がたって思わずヘソで茶を沸かしちゃったわよ!


イシュタル→ナズィ:ナズィ。。。それ使い方間違ってる。。。


ナズィ→イシュタル:え?そう?


ナズィ→イシュタル:まあ、何でもいいけどさ、どうするの?これから!


ナズィ→イシュタル:このままじゃ済まないよね?


イシュタル→ナズィ:うん。。。ナズィ、ラフム先生に連絡つく?


ここでナズィはラフムと聞いてドキリとする。


プロポーズの事があるからだ。


ラフムの『結婚しようナズィ。君は僕が守る。』


その言葉を言われた時の事がナズィ心に蘇るとナズィは赤面して一人でテンパり始めた。


ナズィ→イシュタル:え!?なっなっ何!?か、彼がどうかした!?


イシュタル→ナズィ:彼。。?


ナズィ→イシュタル:え!?ヤダ、カレだなんて!違うわよ!まだそんなんじゃ。。。いや!まだとかでもないし!私達何でもないんだからね!?


イシュタルはかなり違和感を覚えたが今はそんな事を言っている場合ではない。


イシュタル→ナズィ:ナズィ、先生に連絡を取って欲しいの!


ナズィ→イシュタル:え!?あの人に!?


イシュタル:あの人?


イシュタル→ナズィ:お願い、世間の認識を変えるには先生の力が必要なの!


ナズィ→イシュタル:わ、分かったわ!ラフムさんに。。。連絡してみるんだからね!


イシュタル:ラフムさん?


イシュタル→ナズィ:本当に大丈夫?なんかナズィさっきから変だよ?


ナズィ→イシュタル:だ、大丈夫よー!大丈夫すぎよー!


イシュタル→ナズィ:お願いナズィ。連絡取れたら直ぐにこっちに知らせて!


ナズィ→イシュタル:わ、分かったわ!ま、ま、任せておいて!


そして直接会話が終わるとイシュタルとナズィの意識のリンクが外れる。


イシュタル:大丈夫かなぁ。。。ナズィ、先生と何かあったのかな。。。?


そんなイシュタルの心配を他所にナズィの胸は高鳴っていた。


ラフムの姿が思い起こされる。


オールバックに見事な口ひげ。


パックリとワイルドに開いた胸元から魅せるハードに渦巻く無数の黒いスパラル。


気が付くとナズィの顔は赤面していた。


しかし、イシュタルの為に意を決してナズィは腕の端末からラフムを呼び出した。


しかし、いくら呼び出してもラフムは出なかった。


この時すでにラフムの身柄はT-SHOCK本社ビルの一室に拘束されていたからだ。


それから、イシュタル達の元にさらに辛いニュースが飛び込む。

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