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73話 命の処理室

旧55区のエルヴィンの残した施設に到着したエンキ達はイシュタルの残した『青く光る石』に翻弄された。


そしてそれと入れ違いでイシュタルはT-SHOCK本社に戻って来ていた。

T-SHOCK本社ビル地下二階


そこにイシュタルとエルヴィンの姿があった。


旧55区の施設から瞬間移動して来たのだ。


ここにはイシュタルにとってその存在自体が耐え難い負の象徴『4つの部屋』がある。


その忌むべき部屋の中からまず一番最初に向かったのが処理室だった。


T-SHOCKが医療支援と称して全国的に行った健康診断によって無差別にばら撒いた不完全なリミッター付のナノマシーン。


それはもちろんオリジナルではなく粗悪な複製品だ。


それでもそれに適合した者のうち稀に覚醒者が現れる。


しかし覚醒者の数%は暴走して死んでいった。


T-SHOCKはこれを『難病』と称して研究機関を作りリミッターの研究とナノマシーンやティアマトのチカラの制御の研究をしていた。


そこにイシュタルが現れた。


彼女の細胞はかつて無いほどナノマシーンとの相性がよかった。


適正検査での異常な適正レベルを受けてイシュタルにはオリジナルのナノマシーンが投与された。


その後、彼女に適合したナノマシーンは他者のナノマシーンと混じり合う事で爆発的に冠進化を起こした。


その実験の中で人や動物は様々な化学反応を起こしてある者は進化し、ある者は怪物と化した。


しかし、成功するのはごく一部で大半は失敗して殺された。


殺処分を行う。


それがこの『処理室』である。


その扉の前でイシュタルは死んでいった可哀想な命達の悲鳴を胸に中へ入る決意をした。


廊下から扉を開けて静かに中に入ると職員達はイシュタルに気が付き一斉にその表情が凍りついた。


死を直感したのだ。


職員「お、お前はイシュタル!?どうしてここに!?」


イシュタルの表情は冷たい。


その目は憎悪で満ちていた。


イシュタルのそんな目と目が合った瞬間、その職員はこつ然と姿が消えた。


他の職員達はそれを見て恐怖にかられてさらに慌てふためく。


辺りを見渡して逃げ道を探す者もいたが出口の前には緑色に輝くオーラをまとう覚醒したイシュタルが立ち塞がっているのだ。


普通の人間に突破など出来よう筈もない。


しゃがみ込んでパニックになる者や逃げ惑って壁に貼り付く者、デスクの下に隠れる者はいても冷静な人間は一人も居ない。


皆、自分達のやってきた事の残酷さを自覚している。


それを思えばその報復がどのようなものか想像もつかない程恐ろしいのだ。


中にはブルブルと震えている失神する者まで現われる始末だ。


その様な心の弱い人間達が命を弄んでいたのだ。


いや、その様な人間達だからそれが出来たのだろう。


人は知的好奇心の為ならば他人の危険や痛みを全くいとわなくなる事がある。


だからこそ力を持つものは人格者でなければならない。


ここはそれが欠落した場所だった。


それは自らの滅びを自らで導くに等しい行為でもあったのだ。


今、彼等は自らが招いた破滅を目の前にしているのだ。


職員「た、頼む!見逃してくれ!私達もやらされていただけなんだ!」


職員「ヒィィィ!!い、命ばかりは!」


逃げ惑う人々を下げ荒む様に見下ろしながらイシュタルはつぶやく。


イシュタル「そんな風に命乞いをした子達を一人でも見逃した事があるんですか?」


イシュタルはそうつぶやくと自ら投げかけた問いに答えるのを待つまでもなく職員をまた二人消し去った。


残った職員はパニックになって暴れまわる。


本やフラスコや手当り次第をイシュタル投げつけるがそれらは当然イシュタルのオーラに弾かれてかすりもしない。


イシュタルは悲しそうに、残念そうに、そして少し悔しそうに言った。


イシュタル「。。。」


イシュタル「見苦しい。」


そして処理室には誰も居なくなった。


次の瞬間、部屋はイシュタルを中心に円形に球を押し付けた様にめり込んで破壊されて真っ暗になった。


イシュタルは振り返って扉がなくなった明るい出口からその部屋を後にした。

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