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72話 イシュタルの思念

消えたイシュタルを追ってエンキ達は精鋭部隊と共に旧55区にある施設へ到着した。

半透明の青く輝く宝石の様な丸みを帯びた石から浮き出るように宙に浮かんだイシュタルはゆっくりとエンキ達の方を向いた。


その身体からは緑色のオーラが溢れ出し青い光と混ざり合ってリビングを優しくエメラルドグリーンに照らしだしている。


エンキ「あの青い石。。。ナノマシーンの結晶だわ。」


そのイシュタルの視線がエンキに向くと戦闘員の一人が思わず発泡する。


バン!バン!


密閉された室内に銃声が響く。


しかし、その攻撃はまるで霧に映し出された映像を撃ち抜いたかの様に手応えの無いもので虚しくイシュタルを通りこして後ろの壁を傷つけるだけであった。


エンキ「やめなさい!これはイシュタルの思念よ!実態がないから弾丸も薬も効かないわ!」


慌てふためくエンキ達を悲しそうな表情でイシュタルは見つめている様に見えた。


そう、イシュタルはこの時この光る石を介して本当に見ていた。


そして溢れ出るそのオーラも映像ではなくイシュタルの放つオーラそのものであった。


だからこそエンキ達の計器にその反応が出たのだ。


エンキ「その青い石はどうしたの!?どうしてあなたがこれを。。。?」


エンキ:それにこれは記録ではない。。。石を介してリアルタイムに通信している?


イシュタル「あなた方がここを突き止めてヘリで空にいる事は気が付いていました。用事が済むまでここで足止めをさせてもらいます。」


その言葉を発しながらイシュタルの幻影は更にオーラを高める。


三浦「エンキ様!下がって下さい!」


三浦はとっさにエンキを引っ張って廊下まで下げるとそれと同時にイシュタルの幻影から衝撃波が走り部屋の中の戦闘員を瞬殺した。


そしてそのまま天井をすり抜けて空に上がると同じように衝撃波を放って周囲にいたヘリコプターをすべて破壊してしまった。


エンキ達がその音に慌てて外に出て来た時にはヘリの残骸達が赤い炎と黒い煙をはきながら夜の闇に消えゆく様子をただ見ているしかなかった。


エンキ「なんて事を!」


エンキはむっとして赤いオーラを纏うと手から電撃を放ってイシュタルを攻撃した。


しかし、それはやはり虚しくイシュタルの幻影をすり抜けるだけで稲妻はそのままはるかイシュタルの後方へ雷鳴と友に落雷した。


イシュタル「無駄ですよ。」


エンキ「!!!」


イシュタル「あなた方はやり過ぎました。只で済むとは思わないで下さい。」


エンキ「はぁ!?つい最近目覚めたばかりの小娘に何ができるって言うの!?」


頭に血が上ったエンキは目にも止まらない程の俊足でリビングまで戻って今度は青い石に電撃をぶつけた。


すると青い石は薄いガラスが弾ける様に粉々に砕けちった。


それと同時に映し出されたイシュタルの姿がスッと消え去ると明るく周りに広がっていたそのオーラも夜のとばりが下りるかの様に辺りの闇に溶け込んで消えてしまった。


代わりに満点の星空が現れて凍りついた廃墟を薄っすらと照らし始める。


リビングでは暗くなった部屋で赤い光を放ちながら息を切らせたエンキが悔しそうに立ち尽くしていた。


三浦は黙ってエンキの後ろで膝をついて待機した。


エンキはそれに気が付くと深くため息をついて気持ちが落ち着くまで少し待ってからようやく三浦の方を向いた。


エンキ「してやられたわ。。。まさか逃げ出した場所に戻るなんてね!」


三浦「イシュタルは入れ替わりでT-SHOCKの本社に現れた様です。」


エンキの脳裏にT-SHOCK本社に残して来たエンリルの事がよぎる。


エンキ「エ、エンリルが危ないわ!」


エンキがフラフラと外へ出ると三浦も後に付き随うがエンキは居ても立っても居られない様子で三浦達にこう言い残した。


エンキ「私は一足先に本社に戻ります。各員は三浦の指示に従いなさい!」


そして、宙に浮かび上がると慌ただしく一直線に北の空に飛び去っていった。


そのエンキの放つ赤い光が北の空に消えた後、三浦はT-SHOCK本社に通信した。


三浦「今から本社のすべての監視カメラの映像を分散保存しておけ。」


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