71話 突入
やっとの事でT-SHOCK本社を抜け出したイシュタル達だったがこのまま警察に委ねてはイシュタルの細胞を使った実験体達が処分されてしまうかもしれないとイシュタルは彼らを助けに行く事心に決めてナズィを自宅へテレポートさせた。
旧55区に向けてエンキ達はヘリを飛ばしていた。
戦闘服の男「目的座標まで後20分程です!」
エンキは無言で頷く。
エンキは普段と変わらない服装だがその隣で三浦は重装備だ。
外はマイナス50度の極寒なので頭部を含む全身防寒なのは当然だがそれでも他の戦闘服の男達とは明らかにグレードの違う科学装備が多数付いているのがわかる。
三浦「こちらも捉えました。イシュタルのチカラの反応があります。」
エンキは目で了解を合図すると操縦士に声をかける。
エンキ「急いで!到着次第一気に突入よ!」
操縦士「はっ!」
そして間もなくヘリは目的地に到達する。
施設に着くと入口の両脇を戦闘員が固めてエンキがエントランスのドアを解錠する。
ドアが開くと全員に緊張が走る。
両脇の戦闘員はライフルの様な銃を握りしめる。
この銃の銃弾はあのナノマシーンの働きを抑制する薬が仕込まれた散弾銃だ。
着弾すると個々が爆発して破片と共に飛散する。
粘膜に当たるか吸引させるかを目的とした対適合者用の銃だ。
中は暗い様だ。
三浦「イシュタルのオーラは依然感知されています。」
エンキ「行きましょうか。」
三浦「はい。」
すると、戦闘員達がまず中に入り更に奥のドアの両脇を固めた。
そこへエンキが入りその後ろを三浦がついて来る。
最初の部屋はエンキがコールドスリープから目覚めた場所だ。
椅子の上には未だにエルヴィンからの手紙が少し風化しているもののそこに置かれていた。
しかしあの頃とは随分状況が違う。
今は物々しい戦闘員が所狭しと廊下への扉の周りとエントランスへの扉の周りを固めて厳重に警戒している。
そんな中、エントランスから廊下への戦闘員に囲まれた一本道をランウェイの様にまっすぐ堂々とエンキは進む。
そして廊下への扉の前まで来ると赤いランプが緑に変わり自動で扉が開く。
すると今度は開いた瞬間に中の電気は元からついているのが分かった。
誰かいる。
エンキは無言で戦闘員達に突入を指先で指示した。
次の瞬間、戦闘員達は一斉に廊下になだれ込みそのままリビングへ突入した。
リビングからは緑色に輝く光が溢れている。
戦闘員「動くな!」
抜けるようなその声と共に一斉にその光の方向に銃口が向けられると、すぐに戦闘員達の声は動揺に変わった。
戦闘員「な、なんだこれは?」
戦闘員「エンキ様、目標を視認しました!しかし、何かおかしいです!」
エンキ「どうしたの!?イシュタルはいるの?」
戦闘員「いるにはいるのですが。。。自分はこのケースを知りません!」
エンキ「何を言っているの!?さっぱり分からないわ!」
仕方なくエンキはリビングへ近寄ろうとするが三浦に止められる。
三浦「状況が分かるまで危険です!」
三浦「戦闘員、見たままを報告せよ!」
戦闘員「は!まず、床に青く光る石があります!」
エンキ「青く光る石ですって?」
エンキはギクリとした。
以前にエンキはそれを見たことがあった。
エンキ「ま、まさか!?」
エンキが三浦の制御を振り切ってリビングまで入ると見覚えのある青く光る石から照らされて浮かび上がるイシュタルの姿があった。
エンキ「これは!ただの思念じゃないわ!」




