18話 魔神イフリート
ゲームの中のキャラクターの姿のままログアウト後の世界に出てきてしまったショウ。
ゲーム運営を名乗る男達の言うまま施設へ。
施設側と交戦後地下10階へ向かうも慢心から罠にかかり能力を半減された二人を次々と刺客ロボットが襲う。
アナトがナノマシーンウイルスに侵される中、パーティー補充用のNPC『マスク』の召喚士ミネルバ姫を呼び出す事に成功。
新たな刺客、カンビに操られて次の部屋へ入るもアナトだけは何とか戦闘から外したショウだった。
カンビ「いやぁ、お客さんやなんて久し振りやわぁ。ホンマ嬉しおす!」
と、やはり目玉だけ上を見たまま会心の笑顔を見せた。
が、同時に両方の鼻の穴からムカデがはみ出ていた。
それを見たミネルバは青ざめて劇画タッチで叫んだ。
ミネルバ「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
慌ててショウの後ろに隠れて頭を抱えてブルブル震えた。
ショウ:やはり人ではないか。。。
カンビ「そないに毛嫌いせんでもよろしおす。こいつらもナノマシーンで強化された虫ですよってあんさんらと同じ仲間でっせ!」
そう言うと鼻の穴からカンビの体には不釣り合いな数のムカデの大群が堰を切ったかの様に飛び出した。
カンビ「こいつらは何でも喰いまっせー!強化された皮膚でさえも食いちぎる!牙からナノマシーンが出てきて、毛穴から入ってガードを解きますんや!」
そしてショウ達の足元に向けてどんどん蠢く黒い絨毯の如く広がり迫ってきた。
それを見た瞬間ミネルバは凍りついて何かブツブツ言い始めた。
そして、プツンっと何かが弾けた。
ミネルバが召喚魔法を詠唱するとドス黒く赤い魔法陣が現れてその上に人の様な姿が浮かぶ。
周りを熱気に包みながらその筋肉質なシルエットは次第にその全貌を明らかにする。
燃え盛る毛髪からは高山に住む野生のヤギを思わせる大きなツノがそびたち、地の底から地響きがするような唸り声を上げるその口からは炎が溢れ出す。
その屈強で重そうな体がフワリと地面に着地すると近くにいた虫たちは灰塵と化した。
炎の魔神、イフリートだ。
魔神は現れた途端に真っ直ぐカンビを目指し疾風のごとく走り寄ると、有無を言わさず殴りつけた。
しかし、カンビの顔は消し飛んたかに見えたがそれは虫の塊だった。
首を失った体はバラバラに虫となって飛びさる。
次の瞬間イフリートの後ろに現れたカンビは
カンビ「いきなり何しますねんな。危ないなぁ」
と余裕を見せるもイフリートは間髪入れずにカンビをその燃え盛る拳で執拗に殴り続けた。
まるでキレたミネルバがそのままイフリートに乗り移ったかの様に、我を忘れた獣のごとく怒涛の攻撃が続く。
カンビはそれを目にも止まらない速さで避け続けたが避ける度に少しずつ虫たちを焼かれて徐々にやつれてきた。
それでもイフリートは狂ったかの様に攻撃を続けると、堪らずカンビは術者のミネルバ目掛けて突進して来た。
カンビ「おおおおまあああえええ!!いいいいいい加減にさらせぇぇええよおおおおお!!!!」
しかし、迫りくるカンビに目もくれずミネルバは
ミネルバ「オーバードライブMAX。。」
ミネルバ「イフリート!地獄の業火!!」
と叫んだ。
スペシャルムーブ(必殺技)が発動しイフリートの叫び声と共に防御不可の火柱と爆炎が上がりカンビと散らばった虫たちを焼き尽くくす。
カンビ「まさか、こんな小娘に!!ぎゃぁぁぁぁあ!!!」
カンビを焼き尽くした火柱はそのまま天井を突き抜けて何階か上の階まで貫いた。
これで退路も出来た訳である。
そして役目を終えたイフリートはそのまま姿を消した。
ミネルバ「ハァハァハァ。。」
肩で息をするミネルバは疲れ切っている様子だった。
そしてショウもようやく金縛りが溶けた。
ショウ「ミネルバ。。大丈夫か?」
ミネルバ「tamori。。怖かったですわー!」
ミネルバはホッとした途端、涙を流してショウに飛びついた。
ショウ「おいおい。。」
泣きじゃくるミネルバの頭を撫でて
ショウ「ありがとう。助かったよ。」
ショウ「ほら見てみろ。上から脱出出来そうだ。ミネルバのお陰だ。」
と、珍しく優しいショウに涙が止まらないミネルバだった。
そんな空気も束の間、ショウはその時背中に違和感を感じた。
ムカデが一匹ショウの背中を喰い破っていたのだ。
その『穴』に目掛けて突然床から突き出した巨大なサソリの尻尾の様な物が後ろからショウの腹を撃ち抜いた。
強化が効いている腹部の方は貫けすに皮膚が50cmほど突き出してミネルバの目の前に付き立てられた。
ミネルバ「きゃあああああ!!」
叫ぶミネルバの後から巨大なサソリと化したカンビの顔が現れた。
カンビ「油断大敵でっせぇぇえええ!!」
ショウ「ぐはっ!これは!!ヤバい!!」
ショウは口から大量の血を吐いた。
上を見ると天井の穴からは同時に4体の機械人形『デン助』が飛び込んで来るのが見えた。




