56話 本社潜入
意思を持ったラフムの体毛、アンソニーは仲間に道しるべを残すためにナズィの髪の毛を点々と残した。
その結果、ナズィの前髪だけ残して全て剃ってしまった。
流石に前髪が視界から消えるとバレるとナズィの頭の上で一人思い悩みながらたたずむアンソニーだった。
透明になったナズィは自分の頭の上で起きている事など知りもせずにT-SHOCKの本社に潜入した。
流石に本社ビルの正面入口に入る時には心臓がはち切れんばかりに緊張したが中に入ってみると誰もナズィを気に留める者はなく、一安心するのも束の間エルヴィンが早速何かを感知した。
エルヴィン:ナズィ、当たりだ!イシュタルの波動を感じる!下からだ!地下にいる!
ナズィ:ホントに!?
エルヴィン:間違いない。イシュタルだ。随分弱っているみたいだけど。。。
ナズィ:じゃぁ急いで下へ降りましょう!
そう言って下へ降りる階段やエレベーターなどを探し回ってみたがどこを探しても一向に地下へ降りる手段が見つからない。
エルヴィン:おかしいな。。どこにも下へ行く手段がないぞ?
ナズィ:どうしよう?案外、建物の外からしか地下へは行けないとか?
エルヴィン:なるほど。それはあるかも。。ナズィ、建物の外も見てまわ回ろう!
しかし、このビルには共有スペースや花だんや駐輪場、駐車場やベンチすらなく、建物自体の壁面が周囲の道路に面している。
エルヴィン:ダメか。。。
ナズィ:どうしよう?
エルヴィン:ちょっと危険だけど地下一階までテレポートするか。。。
ナズィ:大丈夫?
エルヴィン:危険だけどこのままじゃらちが明かないよ?
ナズィ:。。。そうよ。。ね。
ナズィ:分かった。行こう!
エルヴィン:よし、じゃぁ最短距離で空間をすり抜けよう。建物の中に入って左手のトイレに入って!トイレの上下は同じ作りみたいだ。
エルヴィン:それにトイレの中なら監視カメラもないし多少光や音がもれたりしてもきっと怪しまれないよ。
ナズィ:あ、なーるほど!エルヴィンさえてるね!
エルヴィン:まあね!
ナズィは言われた通りトイレに入ると誰もいなくなるタイミングを待って多目的トイレに入って戸を閉めて鍵をかけた。
赤ちゃんを座らせる椅子やオムツ替えの台、車椅子用の手すりや背の低い手洗いと鏡、そして便座の正面には背の高い通常の手洗いと鏡もいつている広い個室トイレだ。
今は透明なのでナズィの姿はその鏡には写っていない。
そこにいるのに鏡の中には居ないというのは何か不思議な感覚だ。
エルヴィン:ちょっと待ってね、下のトイレの人影がなくなってから飛ぶから。
ナズィ:うん。
1分ほど沈黙が続いた後
エルヴィン:今だ!
というエルヴィンの声と共に目の前が白くなり、それが晴れると先程と殆ど変わらないトイレの個室が現れた。
違いといえば全体的にあまり使用されていないのかキレイな事とトイレットペーパーの片方が未使用になったこと、それから閉めていた個室トイレの戸が開いている事ぐらいだった。
後はテレポートが終わると一旦ナズィの透明化も外れていた。
そこで、ナズィは鏡に写った自分を見て凍りついた。
前髪だけを残してキラリと光る坊主頭になっていたのだ。
そして頭の頂上には一本カールした毛、アンソニーがそびえ立っていた。
ナズィ「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」




