51話 空飛ぶヘアー
ナズィの心の中に現れたエルヴィンはそのチカラをナズィに貸すと言った。
それからナズィの心の中からエルヴィンの声がする様になった。
エルヴィン:ところで君、女子なのに凄い腕毛だね!
ナズィ「は!?」
思わず大きな声を出してしまった。
ここは町中である。
当然、いきなり大声を出したナズィに注目が集まるとまたしても恥ずかしい思い。
ナズィ:ちょっ、ちょっといきなり何を言い出すのよ!
エルヴィン:だって自分の腕見てよ!
ナズィ:何わけ分かんないこと。。
ナズィ「て!!!!」
見れば腕にもじゃもじゃした太い毛がいっぱいついていた。
ナズィ:なっなにこれ!?
顔の血の気が引く。
慌てて腕の毛を払うとその毛は逃げるように風に乗って飛んでいってしまった。
ナズィ:な、なにあれ?
エルヴィン:微弱だけどナノマシーンの波動を感じるね。
ナズィ:ずっとついてたの?
エルヴィン:ついてたよ。
ナズィはもじゃもじゃとした腕毛を生やしながら自転車をこぐ自分の姿を想像すると酷く落ち込んだ。
どおりでさっきからチクチクする筈である。
ナズィ:全然知らなかった。。。一体どこで?
エルヴィン:さあね。その内分かるんじゃない?
ナズィ:結構テキトーね。。
エルヴィン:まぁ、そんな大した物じゃないよ。あれは。
エルヴィン:それよりイシュタルの所に行かなきゃ。
ナズィ:し、知ってるの?居場所を!?
エルヴィン:そうだね。。多分探せると思う。
ナズィの表情がぱっと明るくなる。
ナズィ:ホントに!?
エルヴィン:でも、急いだ方がいい。今から行くかい?
ナズィ:でも。。。行動する時はラフム先生と一緒にって約束したし。。。
エルヴィン:じゃぁ連れて行くかい?
ナズィ:いやっでも、今はちょっと気まずいしっ。。
エルヴィン:どっちなのさ?
ナズィ:自転車で行けるとこ?
エルヴィン:ゾーン1だよ?車で一時間ぐらいかな?
ナズィ:ムリ。。。一回家に自転車置いてきたい。
エルヴィン:ああ。それなら。。。
エルヴィンがそう言うと、自転車は忽然と消えた。
ナズィは驚いて声も出ない。
エルヴィン:君の家に送っておいたよ。
ナズィ:な?何?何今の。。。?
エルヴィン:テレポーテーションだよ。
ナズィ:ま、マジっすか。。。どんどん現実離れしていってるんですけど。。
エルヴィン:ま、オイラは特別だからね!
ナズィ:これでイシュタルのいる所までピューッと行けるって事?
エルヴィン:向うに気付かれたくないんで先ずは電車で行こうよ!
エルヴィン:近くで大きなチカラを使うとバレちゃうかも知れないし。
ナズィ:そっか。。確かに!
エルヴィン:じゃ、決まりだね!早速イシュタルを助けに行こう!
ナズィ:オーケー、分かったわ。
こうしてナズィはゾーン1へと電車で向かう事になった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、ラフムは
警察官から開放されたラフムは学校の屋上にいた。
そして空をじっと眺めていた。
その視線の先に何やらモヤのような物が飛んでくる。
小虫の群れ?
そんな風にも見えるそのモヤは次第にラフムの方へ近づいて来る。
そしてラフムの胸元へ吸い寄せられる様に集まって彼の胸毛の中に消えていった。
ラフムは優しく語りかける。
ラフム「おかえり。お前達。」
そう、それはナズィの腕にはりついていた『毛』だった。




