43話 事故
行方不明のイシュタルを探すナズィと目的を同じくするコーガ達は第三者の目を避けて学校で意見交換をしていた。
そこでコーガはナズィ達にあるニュースの記事を見せた。
コーガは腕時計から空中ディスプレイを開くとくるりと指でタッチパネルを操作するかの様に画面を反転させてナズィとラフムにあるニュースの記事を見せた。
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『1区公用車両、原因不明の爆発事故。』
昨夜、ゾーン1の路上にて区の所有する車両一台が突然原因不明の爆発を起こしました。
この事故により運転手1名と乗車していた3名が死亡したものと見られています。
尚、現場から遺体は見つかっておらず、車は前後に分断され座席部分は消し飛んでいました。先日ゾーン5で起きた地震の際に発生した大穴の底から検出されたものと似た粒子が検出されており、警察では関連を調べています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ナズィ「これは。。?」
コーガ「事故があったのはイシュタルさんがいなくなった日の夜です。」
ナズィ「この前の地震の事もイシュタルが何か関係してるって言ってました。」
コーガ「イシュタルさんから何か聞いたんですか?」
ナズィはうなずく。
コーガ「あの地震はT-SHOCK側も把握してなかったみたいです。何か言ってましたか?」
ナズィ「はい。。話が突拍子もなくて本当かどうか分からないんですが。。。」
ナズィ「あの地震はエルヴィンという誰にも見えない喋る猫が何かと戦って起こったんだって言ってました。。。私もこんな事になるまで信じられなくて冗談かと。。」
コーガ「エルヴィン。。。T-SHOCKのトップシークレットデータの中に確かその名前ありましたよ。中は見れませんでしたが最重要調査対象にもリストされています。」
コーガ「でも。。。猫。。。ですか?エルヴィンって」
ナズィ「イシュタルは猫って言ってました。」
コーガ「別人。。。いや、別猫か?。。しかしそんなチカラをもった者が他にいるかな?うーん。。。」
ナズィ「どうかしたんですか?」
コーガ「いえ、その猫については後で詳しく聞かせて下さい。今はこの事故の話をします。」
ナズィ「分かりました。。」
コーガ「まず、結論から言うと俺はこの事故にあった車がイシュタルさんをさらった車ではないかと睨んでます。」
ナズィ「え。。。それじゃぁイシュタルはもう。。?」
ラフム「NO!」
コーガ「いえ、おそらくイシュタルさん自身は別の何者かに奪取されたのではないかと。車の破壊は証拠隠滅でしょう。」
コーガ「そしてこんな事が出来るのは恐らく俺が知る限りこの世に二人しかいません。」
ナズィ「T-SHOCKの社長親子。。?」
コーガはうなずく。
コーガ「車は公用車とあるのでイシュタルさんを連れ去ったのは恐らく区の高官の手の者でしょう。」
コーガ「以前からT-SHOCKは意図的にイシュタルさんの情報を区の上層部にリークしていました。」
コーガ「俺はイシュタルさんの早期退院から全て仕組まれていたんじゃないかと思います。」
ヨーコ「彼女の退院自体、病院側としては認められない状態でした。上の方にかなりの圧力があったみたいで私にはどうする事も。。。」
コーガと「俺も当時は会社から病院側のつかんだ情報を是が非でも探れと言われてました。」
ナズィ「イシュタルの行方不明って。。。T-SHOCKが絡んでいるんですか?」
コーガ「。。。証拠はないっす。」
シーンとする四人。
ナズィは少し恐ろしくなってきていた。
イシュタルの話を聞いた事でどんどん危ない世界に足を突っ込んでいる様な気持ちになっていた。
ラフム「あなた達はひょっとして非常に危険な事をしているのではないですか?」
ラフムも流石に不安になって二人に問う。
コーガ「はい、イシュタルさんの事が世間の話題になる迄はかなり身の危険を感じていました。」
コーガ「ですがこれだけ騒がれてくれると世間の目が常にあるんで今はそうそう手を出して来ないと思います。」
ナズィ「でも、こんな状況長くは続かないと思いますよ。」
コーガ「だからそれ迄にイシュタルさんを見つけたいんです。」
コーガ「この注目度の中でT-SHOCKの闇を暴くしかないんです。」
コーガ「俺も命懸けっす。」
ナズィ「命って。。。」
ヨーコ「ごめんなさい。この人、極端なの。T-SHOCKだってそんなに急いで辞めなくても良かったのにイシュタルさんが入院した時に色々あったみたいで疑いが確信変わってしまったらしいの。」
コーガ「あの時は本社もかなり泡立たしくてヒーラーさんも上層部に呼ばれて緊急会議に参加していました。お陰で内容はすべて盗聴できました。」
コーガ「その内容を聞いて俺は足が震えましたね本当。ここに居ちゃいけないって思ったんです。」
ナズィ「その内容って。。。?」
コーガの表情が硬くなる。
一息ついてナズィの目を見てコーガは聞いた。
コーガ「聞く覚悟はありますか?」




