40話 暴露
ひょんな事からコーガとヨーコと言う難病課の関係者と知り合ったナズィ。
安心して話をする為に三人はナズィの学校で話をする事にした。
イシュタルの入院理由を聞かれたヨーコは神妙な面持ちになった。
ヨーコ「何から話せばいいのかしら。。。」
コーガ「やっぱ難病の事からじゃない?」
ヨーコ「そうね。。。」
ヨーコ「まず、イシュタルさんはウトナイ症候群と言ういわゆる難病にかかっていました。」
ラフム「難病?」
ヨーコ「最近発見された病気であまり世間的には認知されていません。なのにうちの病院ではかなり本格的に研究されていて、それてまいて調べれば調べる程これが病気かどうかも怪しいのです。」
ラフム「?」
ヨーコ「私はその難病の研究をする為にジョンズ・ホプキンス病院に引き抜かれて来ました。」
ヨーコ「その難病は、弱ければ感染している個体と共生して強力に身体を守ります。」
ヨーコ「しかし、何らかの原因でそのバランスが崩れると一気に暴走して身体と心を破壊しながらエネルギーを生み続けます。」
ヨーコ「最初はこの氷河期に起こった突然変異か未知のウイルスだと思いました。」
ヨーコ「しかし、それらは個ではなくそれぞれが何らかの方法で連携し合い、まるで全体で意思を持っているかの様に本人の意思と別で振る舞うのです。」
ヨーコ「患者は皆口を揃えてそれには『何者か』の意思があると言います。」
ナズィ「ティアマト。。。?」
その言葉を聞いて驚きの表情を見せるヨーコとコーガ。
コーガ「え?」
ヨーコ「どうしてそれを?」
ナズィ「イシュタルから聞きました。」
ヨーコ「そう。。。彼女は何か言ってた?」
ナズィ「。。。私、聞こえました。」
ナズィ「。。。イシュタルの直接会話。」
ヨーコ「え!?あなたまさか。。。」
ヨーコは肩からかけていたトートバッグから何か測定器のような物を取り出すとこう切り出した。
ヨーコ「この測定器は難病が発症する可能性のある因子、T-SHOCKではナノマシーンと呼んでいるようです。それとの親和性と許容量を測定する事の出来る機械です。」
ヨーコ「許容量を超えた値の親和性になるとナノマシーンは暴走しますが何かの抑制があるようで『きっかけ』がないと一旦は安定しています。」
ヨーコ「しかしその『きっかけ』が起ると度合いによってその抑制が開放されます。」
ヨーコ「開放されたのが自分の許容量を超えたものなら暴走してそのチカラに飲まれます。」
ヨーコ「そのチカラを我々はティアマトと呼んでいます。」
ナズィ「きっかけって何ですか?」
ヨーコ「分かっているのは精神的や肉体的に自我が崩壊する程の強い負荷が加わった時です。」
ナズィ「暴走したらどうなるんですか?」
ヨーコ「一度暴走したら死に至るまで地獄の様な苦しみが続き、やがて死に至ります。」
ヨーコ「その中で患者はティアマトの声を聞くそうです。まるであの世への誘いのような。」
ナズィはそれを聞いてゾクリとした。
ナズィ「イ、イシュタルは。。暴走したんですか?」
ヨーコ「彼女の場合はどちらかと言うと『覚醒』ね。ある一定ラインを超えた親和性と許容量で調和するとティアマトのチカラの流入が暴走せずに具現化して光を放ち、強大なチカラをコントロールできるようになるの。」
ヨーコ「彼女はそのチカラをかつてないレベルで制御してみせたのよ。」
ヨーコ「あの、ナンナと言う女の子の為に。」
ナズィ「ナンナは脳死と診断されていました。それが回復したのってひょっとして。。」
ヨーコ「イシュタルさんのティアマトのチカラよ。彼女の意思がティアマトのオーラを介して現実に作用したの。」
ナズィ「そ、そんな事が。。」
コーガ「俺の知っているかぎりティアマトのオーラを具現化出来たのはT-SHOCKの社長とその息子さん、それからイシュタルさんだけです。」
ナズィ「T-SHOCKの?どう言う事ですか?」
コーガ「ラフムさんの前なんで正直に言ってますけどね。かなりヤバイ話なんで他言無用でお願いします。」
コーガ「専務の三浦シュウと言うのがいるんですけどその男が中心になって『慈善事業部』てのをやってるんすが、これが謎だらけでして。」
コーガ「利益度外視して全国の病院に貢献している代わりにかなり深く色んな病院に入り込んでいるんですよ。」
ヨーコ「ジョンズ・ホプキンス病院も多額の援助をT-SHOCKから受けています。」
コーガ「そして、俺はその慈善事業部がこの難病を意図してばら撒いてるんじゃないかと睨んでます。」
ナズィはさらにゾッとした。
ナズィ「そ、そんな事、言っちゃっていいんですか。。?」
コーガ「めっちゃヤバイっすよ。」
コーガ「でも、イシュタルさんを本気で探してるんですよね?」
ナズィは息を呑む。
ナズィ「。。。はい。」
ヨーコ「それに、もうあなたにとってもこの話は他人事ではないわ。」
ヨーコ「直接会話が聞こえたと言う事はあなたの身体にもそのナノマシーンの因子がいつの間にか投与されて既に適合していると言う事よ。」
ナズィ「。。。」
ヨーコ「気付いていたみたいね。」
ナズィ「。。。はい。なんとなく。」
ヨーコ「ナズィさん。あなたの親和性と許容量も測定させてね。」
ナズィ「。。。はい。」
そして、ヨーコはナズィの事を測定した。




