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29話 余韻

何かに気がついて外へ飛び出したエルヴィンは傷ついて戻ってきた。



そして、自分が戻るまで精密検査は受けるなとイシュタルにメッセージを残して消えてしまった。

窓の外からは消防車やパトカーのサイレンが多数鳴り響いている。



エルヴィンが消えた後、割れた食器の片付けもせずに寝室でイシュタルは布団に潜って耳を塞ぎながら眠りについた。



サイレンの音がぐるぐる頭の中で回って起きているのか眠っているのかよく分からないまま夜が明けた。



そして目覚まし時計のアラームがなると待っていたかのようにすぐに止めてベッドから出た。



もう、外のサイレンは鳴っていない。



イシュタルは洗面所に行くと顔を洗い、鏡を見ながら自分の顔を2度パチ!パチ!と叩くと



イシュタル「よし!」



と、何かを吹っ切るかの様に自分をリセットさせてそれからキッチンへ行って割れた食器を掃除してからマグカップに温めたミルクを入れて一息ついた。



エルヴィンはやはりいない。



全部夢だったんじゃないかと思えるほどだ。



すると部屋から前触れもなくインフォメーションが入る。



「ポーン(機械音)チャットアプリにメッセージがあります。」



イシュタル「見せて。」




「わかりました。」




空中ディスプレイが開き、チャットのタイムラインが表示される。



お決まりのルーティンワークだ。



画面の上部のメールマークのカウントは4と表示されている。



イシュタル「メール」



声に呼応してメッセージの一覧が出る。



桃井

「イシュタル、最近学校へ行ってないみたいですね。病気ですか?心配なので明日学校に行ってみようかと思います。」



コーガ

「すいません。取り急ぎお伝えしたい事があるので至急連絡お願いします。」



ナズィ

「さっきの地震?凄かったね!?明日は学校くる?」



ナズィ「イシュタルニュース見た!?何だろうね?学校のすぐ近くだし怖いね。。」



どれも気になる内容だ。



イシュタルは上から順に返事を返す。



桃井へ返信

「今日は行きます。大事です。

昨日はみんな大丈夫でしたか?

ケガしたりしてませんか?」



コーガへ返信

「何かありましたか?」



ナズィへ返信

「びっくりしたねー

ナズィの所は大丈夫だった?

でも今日は学校行くね。ナズィも来たらまた後で :p」



この返信は声でも各種端末や腕時計などでも出来るがイシュタルはこの時、空中ディスプレイを手招きする様な仕草をして自分に寄せてディスプレイに直接タッチして返信した。



ディスプレイの速報欄には「大きな音、大きな揺れ、そして突然の大穴!ゾーン5で何が起こったのか?」



と言う見出しのニュースがあった。



中を開けると地面に底が見えない程の四角い大穴が開いた航空写真が掲載されていた。



それはイシュタル達の通うポールローレンス・ダンバー高校のすぐ隣の区画だった。



イシュタルはそれを見た瞬間ギョッとして自分の目を疑った。



学校からあまりにも近い。



イシュタルも利用した事のある見慣れた図書館があった場所だ。



しかし、衝撃的な写真とは裏腹に記事の内容は全く何が起きたのかが分からない様子でパニックをおこしているような内容のものだった。



イシュタルは指でどこかに飛ばすように空中ディスプレイを閉じると窓際に行き、夜の開けた窓の外を眺めた。



相変わらずぱっとしないカプセル内の朝の風景。



ここから見る限りでは何事も無かったかのように静かだ。



イシュタルはその方向をじっと見た後、洗面所に行き歯を磨いてから手早く出かける用意をするとまだ少し早かったが早々にアパートを出た。



外に出た感じはいつもと変わらない。



強いて言えば、さっきからドローンが数機上空を飛んでいる位だ。



ドローン自体はこの時代、軽量の郵便物を配達するのによく飛んでいたので別に珍しくもなかったが、ひとところを数機で旋回するのはあまり見たことがない光景だった。



そして旋回するドローンの下を目指してしばらく歩くとようやくその場所が視界に入ってくる。



学校の隣のウォルターPカーター図書館などがあった場所だ。



そこでは警察による封鎖がされていてその周りを見物の人だかりが取り巻いていた。



街がざわついている。



人だかりでまだ『大穴』は見えないが大変な騒ぎになっている事はここまでくるとわかる。



そして人混みをかき分けて警察によるテープで侵入禁止されている人混みの最前列までいくと目に飛び込んできたその光景にイシュタルは言葉を失った。



そして確かに感じていた。



覚えのあるチカラの波動とそして身震いする程の強力な見知らぬチカラの波動の余韻を。



そしてそれは目の前に不気味に開いた底の見えない程の大穴底からゆっくりと消えつつ未だに漂っていた。

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