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廃核の海 〜ログアウトしたらゲームの魔族キャラのままでした〜  作者: 織雪ジッタ
こんな姿じゃ生きていけない
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15話 バハムート

ゲームの中のキャラクターの姿のままログアウト後の世界に出てきてしまったショウ。

ゲーム運営を名乗る男達の言うまま施設へ。

アナトが発見された事もあり施設側と交戦。

秘密のニオイがする地下10階で慢心から罠にかかり能力を半減された二人を次々と刺客ロボットが襲う。

アナトがナノマシーンウイルスに侵され、ショウ一人で『機械人形』との激戦に挑む。



施設側のシステムの破損でパーティー補充用のNPC『マスク』の召喚士ミネルバ姫を呼び出したショウ。



そしてその姿を興奮気味に観察する金森博士。



ショウはこの危機を乗り切れるか?

金森「これは凄い!彼はNPCを具現化したぞ!」



ショウはゲームのNPCであるミネルバを現実世界へ具現化させた。



しかも、それは単なるNPCではなく、感情のある生きた人間としてだ。



しかも、その具現化したNPCが更に召喚獣を具現化させた事に金森の胸は踊った。



男「申し訳ありません。インプルアプリの制御が一部損傷した模様です。」



そんな男の言葉には全く意に介す様子もなく、金森はモニターに釘付けになって興奮気味に語る。



金森「それより見てみなさい。まるで生きているかの様じゃないか。感情と自由な言動を有している!これはすごい!想像以上だ!」



中央モニターに映るミネルバは元来のゲームの設定通りというよりは、性格が少しショウの性格に影響を受けているようで、それもまた金森の興味をそそった。



ミネルバ「そこの小汚い顔の機械!覚悟は宜しくて?」



右の男「しかし、これ以上インプルアプリが開放されては危険です。速やかにアプリをアンインストールをさせるべきかと思われます。」



金森「ふーむ。。。アンインストールするには、今はダウンさせている検体の中のインプルを一度完全に復旧させる必要がある。その間、無制限に能力を使える時間ができてしまう。。そうなれば、あっという間に空間転移されるかここが破壊されるだろう。。とは言えデン助だけでは荷が重いか。。」



金森は少し考える。



金森「よし、『カンビ』を用意しろ。少し様子を見る。」



右の男「は!」



男が命令されて行動を開始すると、そこにもう一人、科学者風の女が入ってくる。



金森の助手、西田恵美子30歳。



サークルアンデットにはE.C.(アースセンチュリー)252年加入。



翌年のAR機能実装の開発で活躍した研究者の一人である。



西田「博士、あの様なAIプログラムはNPCには実装さるていなかった筈ですが、これは一体。。?」



金森「分からないだろう?君にはこれまで、このプロジェクトの核心について何も話していなかったからね。」



西田「核心。。ですか。。?」



金森「君はこの研究所が『不老不死』の研究から始まった事は知っているかね?」



西田「はい、それは勿論(もちろん)です。ナノマシーンによる病原ウイルスや悪玉細菌と癌細胞の根絶、DNAとテロメア等の修復等によって限りなく不死に近い存在になる為の技術の研究をしていた『不老不死研究所』が元になったと資料にありました。」



金森「さすがですね。その通りです。それから?」



西田「氷河期終了によって温暖化が進み、E.C.(アースセンチュリー)231年頃から過去に投棄され、放置されていた使用済み核燃料が溶けた氷と共に次々に海に沈むと海が汚染され、それがやがて地球全体を汚染しました。」



西田「そこで、防寒用に設計された従来のカプセルでの延命に限界を感じた研究者達が、『不老不死研究所』から離脱。サークルアンデットを結成し、政治的決断を待たずにナノマシーンを使って放射能に汚染された外の世界に適応する為の『人類進化計画』を発案し実行した。そう認識しています。」



金森「ふむ。模範的な回答だ。しかし、それであればこの様な魔法やNPC等の呼び出し、それから戦闘に関するシステムの具現化は不要じゃないかね?」



西田「はい、それは。。。イシュタラが現れたから?。。いえ、違いますね。その前からそれは研究されていました。」



金森「そう、イシュタラが現れる前からサークルアンデットはイシュタラとの交戦をも想定していたのですよ。」



金森「でなければ、わざわざ法に背く様な危険を犯してまでナノマシーンをバラ撒いたりしない。」



西田「イシュタラの存在を知っていたという事ですか?でも、まさかそんな。。?」



金森「そうでなければ、なぜ危険を冒してまでそんな研究をしなければならなかったと思う?」


西田は言葉につまる。


金森「考えてもみたまえ、カプセルで暮らす様になってから人類はただの一度も大掛かりな戦争行為をしていない。戦闘でカプセルが損傷しては我々は生きていけないからだ。カプセルに穴が空けばあっという間にマイナス数十度の地獄だったのだ。戦闘をすること自体、リスクが大きすぎたのだよ。」



金森「そしてそのリスクは現在においてはもはや致命的だ。」



金森「イシュタラの人類に対する宣戦布告以来、彼等の攻撃でいとも簡単にカプセル群が壊滅したのを見て解るだろう?」



金森「カプセルに依存する我々はとても非力な存在だ。そしてこのまま行けば遠からず人類は滅びる。それを200年以上も前に予見していた人物がいるのだ。」


西田「200年以上。。。?」



金森「そう、それは260年前、E.C.紀元前に極寒の中にあった時代だ。当時、その環境から逃げるのではなく、克服しようとした人物がいたのだ。」



西田は疑心暗鬼な表情で金森の話に耳を傾ける。



金森「むかし話だよ。真実の歴史は(おおやけ)にはなっていないがね。。しかしてその人物は自らの研究の中で気がついた。」



金森「はるか昔、絶対的な力を得て堕落した世界を滅ぼし、神となったその存在に繋がる方法を。」



金森「そしてまず、器としてその存在の力に耐えうるだけの肉体をナノマシーンで作り、その存在へ大いなる力の源へのリンクを繋げようと試みた。しかしその試みはことごとく失敗し、検体は暴走を繰り返した。」



西田:聞いたことのない話。。。一体何を。。。?



金森「しかしある時、ついにナノマシーンが遺伝子やミトコンドリアと共生をするまでに至ったのだ。そこからはまるでナノマシーンが意思を持つ一つの生命体であるかの様に検体を守り、覚醒が安定した。」



金森「そして研究が進むにつれて、さらに進化した一人の検体が生まれた。そう、まさにそれは女神に愛された様な存在だった。」



金森「するとそれは、瞬く間に研究者の制御と束縛を解いて自由になった。そして他の検体を連れて逃走し、外の世界へ散っていった。」



金森「人間への憎悪と怨念と共に、だ。」



西田は何か悪い胸騒ぎがして胸元でぎゅっと拳を握りしめる。



金森「我々が誰と戦っているのか、わかるかね?」



西田「まさか、それって。。」



西田はざわざわと悪寒が走ると額に汗が滲んた。



重い空気に言葉が詰まる。



その時だった。監視室に轟音が響き渡り、それと共に施設を大きな地震の様な揺れが襲った。



西田はバランスを崩し倒れ込み、椅子に座っている者も机に捕まらければならないほどだった。



金森「何事かね!?」



金森が叫ぶもモニターは真っ白な光とノイズを映すだけでしばらくは何も解らなかった。



が、10秒か20秒かすると徐々にノイズが晴れていった。



そして映像が回復した時、西田はモニターに映し出された光景に目を疑った。





◇  ◇  ◇  ◇  ◇


地下10階



あからさまに早く帰りたいミネルバは、早々に大技を繰り出した。



ミネルバ「バハムート!テラフレイムよ!」



ミネルバがそう言うとバハムートは



バハムート「承知!」



と、即座に自身のスペシャルムーブ(必殺技)を繰り出す。



バハムートは力強く(りき)み、口を開くとエネルギーの塊が光の玉となって、バチバチと放電しながらどんどん膨らんでゆく。



その玉が、バハムートの巨体の半分程の大きさになると、強烈な光を放ち始める。



可視光線以外も含めたほぼ全ての周波数を含んむ眩いばかりの光を放っているのだ。



ガンマ線やアルファ線までも含んでいるのだ。



それは、光と呼ぶにはあまりにも危険なエネルギーの塊であった。



機械人形「あんだ?ソレ?眩ぢい。。」



次の瞬間、バハムートの雄叫びと轟音と共に全てが真っ白になる。



そして、光が収まると機械人形は消し飛んでいた。



機械人形が消炭になった跡には、ボロボロになったショウが倒れていた。



その後ろには、幅が3メートルはあろうかという分厚い壁に大穴が空き、中には広い空間がある。



そこに、青く光る円筒状の水槽の様なガラス張りの筒が無数に見えていた。


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