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25話 友達

■前回までのあらすじ

55区にあるというエルヴィンの研究施設は何故か争いの跡があり、肝心のナノマシンのリミッターも手に入らなかった。



希望を失ったイシュタルは引っ越したばかりのアパートで伏せってしまう。



学校を休んで二日目の夕方、イシュタルのアパートに訪ねて来たのは同級生のナズィだった。




■登場人物

イシュタル

17歳、女性

ポールローレンス・ダンバー高校11学年(高2)

合唱部とチアリーディング部を兼務

8年前の1区西海岸独立戦争で家族を亡くし戦争孤児としてウルク孤児院に引き取られた。



ナズィ

17歳、女性

イシュタルの同級生

チアリーディング部のチームメイト

ボーイッシュな金髪ポニーテールの女の子



エルヴィン

ナノマシンを知るというイシュタルにしか見えない不思議な猫



■その他

『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店

ナズィがアルバイトをしているレストラン

イシュタルもこれから働く事になった。


イシュタル:ナズィ。。。



イシュタル「マイクオン」



「マイクをオンにします。」



イシュタル「ナズィ。急にとうしたの?」



ナズィ「あ、イシュタル!大丈夫?お店にも来ないし学校にも来ないし心配したんだよ?」



イシュタル「ごめん。今開けるから。」



イシュタル「エントランスを開けて。」



「わかりました。」



するとアパートのエントランスの施錠が外れて外にアナウンスが流れる。



「どうぞお入りください。」



するとナズィはインターホンに



ナズィ「イシュタル、そっち行くね!」



と、声をかけてからイシュタルのアパートのエントランスへ入った。



入ればすぐに階段である。



いかにもアメリカといった感じのアパートで細く四角い螺旋状の階段と階ごとに小さな踊り場と扉が転々とある。



イシュタルは自室の扉を開けてナズィがその階段を上がってくるのをぐるぐると四角い螺旋階段の上から覗いて待った。



しばらくするとナズィも上から見られている事に気がついて笑顔を見せる。



ナズィ「イシュタルー!生きてるかー?」



イシュタル「んー。。なんとかー。。」



ナズィは階段を登り切ると少し息を切らせながらイシュタルの元へ駆け寄った。



ナズィ「着いたー!」



イシュタル「急にどうしたの?」



そう言われてナズィはイシュタルの頭をポンと叩き。



ナズィ「どうしたの?じゃぁないっ!」



と、怒った様子。



イシュタル「こめんね。色々あってお店とか行けなかった。。」



ナズィ「ホントに大丈夫?なんか顔色悪いよ?」 



イシュタル「え?あ、うん。大丈夫。」



ナズィ「色々って?ちやんと説明してもらうからね!」



玄関先からイシュタルは終始圧倒されながらナズィをリビングへ通した。



そのリビングは真新しく買ったばかりの落ち着いたベージュ色のカウチソファと小さなテーブル、そして木製のチェストがあるだけのシンプルな部屋だった。



越したばかりで物がない。ちょっと寂しいリビングという感じではあったが、そこにイシュタルがいると不思議と絵になるのであった。



ナズィ「いい部屋ね。」



イシュタル「ありがとう。飲み物取ってくるから座ってて。」



そう言うとナズィを残してイシュタルはキッチンへ入っていった。



部屋を見渡すナズィ。



ナズィ「生活感ないなぁ。」



しばらくするとイシュタルが丸いトレイにマグカップを2つ持ってきてナズィの前に置いた。



ひとつは茶色いトラ猫の柄のマグカップだ。



中には温かいミルクティが湯気を立てている。



イシュタル「お菓子とか何もなくてごめんね。」



ナズィ「ううん。」



ナズィは迷わず猫の柄のついていない方の白いマグカップを選ぶ。



エルヴィン「ちぇっ!わかってないなぁ。。」



不満そうなエルヴィン。



イシュタルは何も言えず苦笑い。



するとナズィは



ナズィ「とうしたの?何か可笑しかった?」



と、不思議そうにイシュタルを見た。



イシュタル「え?いや、何でもないよ!猫のマグカップ選ばなかったなぁって思っただけ!」



ナズィ「え?あぁ、わたし猫はあんまり好きじゃないんだよねー。」



イシュタル「え?どうして?」



ナズィ「小さい時に引っ掻かれた事があるんだよねぇ。。ちょっとトラウマでさっ」



イシュタル「へー。そうなんだ。」



チラリとエルヴィンを見る。



エルヴィン「そんな野生動物とオイラを一緒にするなよ!」



とますます不満そうにぷりぷりしている。



イシュタル:いや、エルヴィンの話じゃないんだけど。。



ナズィ「そんな事より!」



イシュタル「え?なに?」



ナズィ「なに?じゃない!何があったの?絶対おかしいよ?」



イシュタル「。。。う、うん。。」



ナズィ「さ!ちゃんと話して!」



イシュタル「。。。わかった。」



そしてイシュタルは渋々先日の日曜日の話をナズィにした。



もちろん、エルヴィンの事や自分も難病発症の恐れがある事は伏せてだ。





◇  ◇  ◇  ◇  ◇



ナズィ「は?何それ?その人、役職下でしょ?どういう事?」



イシュタル「わかんないよ。。なんか病院側の都合ばかり優先してる気がする。。」



ナズィ「絶対ガツンと言った方がいいよ!」



イシュタル「はぁ。。次に会うのが憂鬱たぁ。。」



ナズィ「それで学校まで休んでたの?」



イシュタル「んー。。。まぁ他にもあるけど。。。」



ナズィ「イシュタル、あんたまだ何か隠してない?」



イシュタル「え?そ、そんな事ないけど。。」



明らかにうろたえるイシュタル。



ナズィ「ほーら!何か隠してる!」



ナズィ「わたしにも言えないこと?」



イシュタルは視線をそらせたまま答える。



イシュタル「今は。。。ちょっと。。。」



まっすぐとイシュタルの目を見るナズィ。



ナズィ「。。。」



しばらくじっと見つめた後、少しため息をつき諦めたかのような表情をみせると



ナズィ「わかった。今は聞かない。」



イシュタル「ありがとう。。」



ナズィ「でも、ホントに無理になったらすぐに連絡してよ?」



ナズィ「ね!」



イシュタルはようやくナズィの顔を見てうなずいた。



イシュタル「うん。」



その表情は久しぶりに柔らかかった。



ナズィ「ところでこの紅茶おいしいね!」



イシュタル「わかる?」



ナズィ「○△□○△□」



イシュタル「○△□○△□」



その後、二人は久しぶりに他愛もない会話で笑った。



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