18話 決心
■前回までのあらすじ
『T-SHOCK』での初仕事が終わり、おみやげにケーキを買って帰ったイシュタル。
しかし、その心にはある決意があった。
■登場人物
イシュタル
17歳、女性
ポールローレンス・ダンバー高校11学年(高2)
合唱部とチアリーディング部を兼務
8年前の1区西海岸独立戦争で家族を亡くし戦争孤児としてウルク孤児院に引き取られた。
ラフム
年齢不肖、男性
音楽教師
神がかった音楽指導能力を持つ。
人気ロックバンド『Q-WIN』のシンガー
イシュタルの合唱部のバンドディレクター
桃井
年齢不肖、男性
ウルク孤児院の院長
旧世界のロックシンガー、フレディ・マーキュリーを崇拝
ピンクが好き
ナンナ
12歳、女性
戦争孤児としてイシュタルと一緒にウルク孤児院に引き取られた。
リリイ
年齢不肖、女性
3歳まで犬に育てられた。
ウルク孤児院にて保護されている。
ナズィ
17歳、女性
イシュタルの同級生
チアリーディング部のチームメイト
ボーイッシュな金髪ポニーテールの女の子
ナンシェ
24歳、女性
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店の店長
真面目で少し近寄り難い雰囲気のある
三浦シュウ
年齢不詳、男性
T-SHOCKコーポレーション専務取締役
ドラゴ・ヒーラー
40歳、男性、体重102キロ
難病対策課課長
かなり腰が低い。
メガネをかけている。
ドラゴ・コーガ
35歳、男性、体重110キロ
難病対策課
メガネをかけている。
ジェシカ・キム
30歳、女性
ヒーラーをいつも冷たく諌めている。
■その他
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店
ナズィがアルバイトをしているレストラン
イシュタルもこれから働く事になった。
ポールローレンス・ダンバー高校
イシュタル達の通うハイスクール
ウルク孤児院
桃井からは想像がつかないがプロテスタント系の教会の流れをくむ孤児院。
ジョンズ・ホプキンス病院
イシュタル達の学校や孤児院からほど近い世界屈指の病院。
『T-SHOCK』から強力な資金と技術援助を受けており、この中にT-SHOCK慈善事業部難病対策課が設けられている。
ケーキも食べ終わり、夜も更けてナンナとリリイは歯を磨いて寝静まった頃
ウルク孤児院のキッチンにはイシュタルと桃井の姿があった。
思いつめた顔をしたイシュタルはその場の空気を張り詰めさせる。
ウルク孤児院があるのは街中だが騒音は少なく、部屋には古い置き時計の音だけがカチコチと響いていた。
そんな中、桃井は神妙な面持ちでイシュタルに聞く。
桃井「話ぃというのは、何かねぇ?」
イシュタル「はい。。」
ひと呼吸おいてイシュタルはゆっくりと話し始める。
イシュタル「まず、わたし今日働いている所で正社員になりました。」
すると、桃井は驚いて問う。
桃井「ちょっと待ってぃ、お前はまだ未成年だよぉ?保護者の許可もぉなしにかい?」
イシュタル「ここボルモチアでは法律的には問題ないそうです。それに私は孤児ですから区も孤児の自立には寛容だっていってました。」
すると、桃井は騒然として聞き返す。
桃井「ちょっと待ってぃ。自立ってまさぁか?」
イシュタル「ここを出てどこかアパートを借りようと思っています。」
すると、桃井は狼狽して尋ねる。
桃井「ちょっと待ってぃ。お、お金は。。学校はドゥするんだい?」
イシュタル「お金は会社からたくさん頂きました。。奨学金を返して自立するぐらいはあります。」
すると、桃井は驚愕して反論する。
桃井「ちょっと待ってぃ。そ、そんな大金。。おかしいじゃぁねいかい?」
イシュタル「もう、決めたんです。学校はやめません。ちゃんと通いながらでも大丈夫です。」
すると、桃井は立ち上がり
桃井「ちょっと待ってぃ。」
すると、イシュタルはすかさず
イシュタル「待ちません。」
と、桃井の言葉をふさぐ。
そして桃井は言葉を失った。
桃井「チョートクヨシタカ。。」
イシュタル「は?」
桃井「いや、とにかくここぉを出ていくのわ卒業してからでぃも遅くなぁいよ!」
イシュタル「もう決めたんです!この前みたいな事されても困るんです!」
桃井「学校ウェイ行ったことかい?だってあれは。。」
イシュタル「とにかく!もう決めたんです!」
桃井「。。。イシュタル。」
イシュタル「焼け出された私を引き取ってくれた事は感謝しています。」
イシュタル「でも、私は出来るだけ早く自分の力で生きていきたいんです。」
桃井「OH,,,,」
イシュタル「すいません。」
そう言うとイシュタルは席を立ち寝室へ下がっていった。
残された桃井はただ呆然と立っていた。
桃井「。。。なぜ?」
寝室ではすやすやと眠るナンナとリリイがいた。
その寝顔を少し眺めて、それから優しく掛け布団をかけ直しす。
イシュタル「落ち着いたら迎えに来るからね。」
起こさないようにそっとそう言うとようやくイシュタルは自分のベッドに入り眠りについた。
イシュタルにとっては長い長い一日だった。
そしてまた一週間が過ぎた。




