16話 帰還
■前回までのあらすじ
難病ウトナイ症候群。
その奇病に特別耐性のあるイシュタルはT-SHOCK慈善事業部難病対策課に入る事を決意。
ジョンズ・ホプキンス病院にある難病対策課へやって来た。
■登場人物
イシュタル
17歳、女性
ポールローレンス・ダンバー高校11学年(高2)
合唱部とチアリーディング部を兼務
8年前の1区西海岸独立戦争で家族を亡くし戦争孤児としてウルク孤児院に引き取られた。
ラフム
年齢不肖、男性
音楽教師
神がかった音楽指導能力を持つ。
人気ロックバンド『Q-WIN』のシンガー
イシュタルの合唱部のバンドディレクター
桃井
年齢不肖、男性
ウルク孤児院の院長
旧世界のロックシンガー、フレディ・マーキュリーを崇拝
ピンクが好き
ナンナ
12歳、女性
戦争孤児としてイシュタルと一緒にウルク孤児院に引き取られた。
リリイ
年齢不肖、女性
3歳まで犬に育てられた。
ウルク孤児院にて保護されている。
ナズィ
17歳、女性
イシュタルの同級生
チアリーディング部のチームメイト
ボーイッシュな金髪ポニーテールの女の子
ナンシェ
24歳、女性
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店の店長
真面目で少し近寄り難い雰囲気のある
三浦シュウ
年齢不詳、男性
T-SHOCKコーポレーション専務取締役
ドラゴ・ヒーラー
40歳、男性、体重102キロ
難病対策課課長
かなり腰が低い。
メガネをかけている。
ドラゴ・コーガ
35歳、男性、体重110キロ
難病対策課
メガネをかけている。
ジェシカ・キム
30歳、女性
ヒーラーをいつも冷たく諌めている。
■その他
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店
ナズィがアルバイトをしているレストラン
イシュタルもこれから働く事になった。
ポールローレンス・ダンバー高校
イシュタル達の通うハイスクール
ウルク孤児院
桃井からは想像がつかないがプロテスタント系の教会の流れをくむ孤児院。
ジョンズ・ホプキンス病院
イシュタル達の学校や孤児院からほど近い世界屈指の病院。
『T-SHOCK』から強力な資金と技術援助を受けており、この中にT-SHOCK慈善事業部難病対策課が設けられている。
ヒーラー「あの!えっと!なんだっけコーガ君!?」
コーガはその大きな体に不釣り合いな小さな電子手帳をちまちまといじりながら
コーガ「んー。分かんないですね。」
ヒーラー「え?そうなの?」
コーガ「逆に何で俺が知ってるんですか?って話っすよ。」
ジェシカ「。。。ハァ」
ジェシカはため息をつくと仕方ないという感じで話始める。
ジェシカ「専務からの共有資料によりますと、難病科への研究協力と本社技術開発部へのデータ提供とあります。」
ジェシカ「難病科への研究協力スケジュールは本社で決定するので勝手に進めないようにとの事です。」
イシュタル「本社技術開発部へのデータ提供というのは何をするんですか?」
ジェシカ「取り急ぎの資料なので詳しくは書いてありませんが免疫検査機のテストと意識や精神が難病に与える影響について調べるそうです。」
イシュタル「意識。。。ですか。。」
サトヤマ「実際、この病気は何故起こるのかよく分かっていないんです。」
話が専門的になって来た時、ヨーコ・サトヤマは突然解説を始めた。
サトヤマ「実際、患者から細胞を採取して試験管で観察してもまるで病気が無かったかのように健康な細胞として振る舞うんです。」
サトヤマ「私は患者の細胞の中に我々が見ている時だけ姿を隠している何かがいるのではないかと推察しています。」
イシュタル「それじゃあどうやって私がその病気に耐性があるってわかったんですか?」
サトヤマ「実は、耐性のある細胞はある特殊な力の波長の様なものを出す事がわかっています。あなたはそれが一般の人より顕著に出ています。」
イシュタル「力の波長。。ですか。。」
サトヤマ「我々はそれをティアマトと呼んでいます。」
イシュタル「ティアマト。。。?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕方
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店
ナズィ「あーー忙しい!!!店長とイシュタルは一体何をしてるのー!?」
女性店員「ボヤかないボヤかない!口じゃなくて手を動かしなさい!」
ナズィ「はーい。。こんなハズじゃなかったのになぁ。。。」
男性店員「なぁナズィ!あの新しい子!今度ちゃんと紹介してくれよ!」
ナズィ「え?はぁ。。」
男性店員「頼む!な?!」
ナズィ「はぁ。。まぁ。。今度。。」
ゴリ押しの男性店員にタジタジのナズィ。
するとタイミングよく
女性店員「ナズィ!洗い場まわって!洗ってある食器が足りない!」
と、ヘルプの要請が来る。
ナズィ「ハーイ!」
と、ナズィは待ってましたと言わんばかりにホールから洗い場に移動した。
洗い場には山のようにシンクに溢れる食べ終わった食器の山。
ナズィ「うわぁ。。」
食洗機もあるのだがピーク時はまるで追いつかない。
最後はやはり人の手が要になる。
ドッチャリ
まさにそんな感じの食器の山にナズィは渋々手を付け始めるとため息をついた。
ナズィ「あー何この量。。」
ジャブジャブロブロブ。。
ガチャガチャジャー。。
泡を立ててお湯の張ってある槽から取り出した取り出した食器を流れるように素早く泡のついたスポンジでなでまたとなりの水の貼ってある槽へ放り込む。
これをある程度やったら次は放り込んだ槽に溜まった食器を水洗いして乾燥棚へ入れる。
この繰り返しだ。
ようやく1ターンが終わって最初のお湯の張ってある槽を見るとまた使い終わった食器の山が築かれている。
永遠とも思えるこのループは夜のシフトの人達に交代する18時を越えて21時頃まで続く。
そして今、時間はもうすぐ17時。
これから最も忙しくなる時間だ。
そんな時、店の奥から声が聞こえてくる。
男性店員の声「店長、お帰りなさい!あ!ど、どうも!」
男性店員の声がばかり大きく何を話しているのかはよく分からなかったがすぐにその原因は分かった。
店長とイシュタルが戻ってきたのだ。
ナズィ「もーイシュタル遅いー!」
しかし、ナズィが独り泣き言を言っても特にナズィに助けが来る訳ではなかった。
ナンシェとイシュタルは来て早々フロントに立ったのだ。
ただならぬ雰囲気に洗い場からこっそりイシュタルの様子を覗いたナズィは目を疑った。
ナズィ「え?黒2本??」




