14話 見つけた
■前回までのあらすじ
その奇病に特別耐性のあるイシュタルはT-SHOCK慈善事業部難病対策課に入る事を決意。
まずは顔合わせの為に健康診断を受けた地元ボルモチアのジョンズ・ホプキンス病院へとヘリを飛ばしていた。
■登場人物
イシュタル
17歳、女性
ポールローレンス・ダンバー高校11学年(高2)
合唱部とチアリーディング部を兼務
8年前の1区西海岸独立戦争で家族を亡くし戦争孤児としてウルク孤児院に引き取られた。
ラフム
年齢不肖、男性
音楽教師
神がかった音楽指導能力を持つ。
人気ロックバンド『Q-WIN』のシンガー
イシュタルの合唱部のバンドディレクター
桃井
年齢不肖、男性
ウルク孤児院の院長
旧世界のロックシンガー、フレディ・マーキュリーを崇拝
ピンクが好き
ナンナ
12歳、女性
戦争孤児としてイシュタルと一緒にウルク孤児院に引き取られた。
リリイ
年齢不肖、女性
3歳まで犬に育てられた。
ウルク孤児院にて保護されている。
ナズィ
17歳、女性
イシュタルの同級生
チアリーディング部のチームメイト
ボーイッシュな金髪ポニーテールの女の子
ナンシェ
24歳、女性
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店の店長
真面目で少し近寄り難い雰囲気のある
三浦シュウ
年齢不詳、男性
T-SHOCKコーポレーション専務取締役
ドラゴ・ヒーラー
40歳、男性、体重102キロ
難病対策課課長
かなり腰が低い。
メガネをかけている。
ドラゴ・コーガ
35歳、男性、体重110キロ
難病対策課
メガネをかけている。
ジェシカ・キム
30歳、女性
ヒーラーをいつも冷たく諌めている。
■その他
『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店
ナズィがアルバイトをしているレストラン
イシュタルもこれから働く事になった。
ポールローレンス・ダンバー高校
イシュタル達の通うハイスクール
ウルク孤児院
桃井からは想像がつかないがプロテスタント系の教会の流れをくむ孤児院。
ジョンズ・ホプキンス病院
イシュタル達の学校や孤児院からほど近い世界屈指の病院。
『T-SHOCK』から強力な資金と技術援助を受けており、この中にT-SHOCK慈善事業部難病対策課が設けられている。
やはりヘリコプターに慣れないイシュタルは恐怖で固まっていた。
ナンシェ「大丈夫ですか?イシュタル係長。」
イシュタル「だ、大丈夫ですぅ!そ、その係長って言うのやめてくださいっ!」
ナンシェ「他の社員や店員への示しがありますので少なくとも今日は係長と呼ばせて下さい。私も専務に怒られてしまいます。」
イシュタル「そ、そうですか。。キャアア!」
ヘリが揺れて叫んでしまうイシュタルの手を握りながらナンシェは慰める。
ナンシェ「もう少しの辛抱ですよ。ホラ、病院が見えてきましたよ。」
見ると見慣れた街のあの大きな病院が見たこれまで地上からはこともない角度で目の前に近づいてきていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ジョンズ・ホプキンス病院
T-SHOCK慈善事業部難病対策課
お世辞にもキレイとは言えない雑多な事務所。
ジェシカに諌められてヒーラー課長が渋々自分の席に着いた時、一本の電話が入った。
ジェシカ「もしもし、難病対策科です。みうら。。あ、専務!お疲れ様です!ハイ!ハイ!承知致しました!ハイ!」
さっきまでとは別人の様なジェシカの態度に周りはあっけにとられる。
ヒーラー「コーガ君!聞いた!?専務からだって!何だろ?」
コーガ「いや、俺に言われても。。」
しばらく電話を受け答えした後、ジェシカは頭を下げたままそっと受話器を置いた。
シーンとする部屋。
ヒーラー「ジェ、ジェシカ君。。せ、専務は何だって?」
ヒーラー「まさかこの課の取り潰しとかじゃないよね!?」
ヒーラー「困るよ!そんなの!」
ヒーラー「まだローンたって残ってるのにぃ!」
すり寄るヒーラーを鬱陶しそうに避けながらジェシカは
ジェシカ「新しい係長がもうすぐ着くから失礼のないようにだそうです!」
ジェシカ「本社からヘリでご登場だそうですよ。」
コーガ「なんすか?えらいVIP待遇ですね!?」
ヒーラー「やっぱりどこかのご令嬢なんじゃない??コーガ君!高級な紅茶とお茶菓子買っといた方がいいんじゃない!?」
コーガ「え!?もうそんな時間ないっすよ!!」
ヒーラー「あー!もうダメですよぉぉ!コーガ君がちゃんとしてくれないと!」
そこへ一人の女性が入ってくる。
技術顧問のヨーコ・サトヤマ博士だ。
サトヤマ「随分騒がしいですね。」
ヒーラー「あ!サトヤマ博士!博士も新人さんのお出迎えですか?」
サトヤマ「ま、そんなところです。」
ヒーラー「さすが!博士も押さえる所は押さえてるんですね!」
サトヤマ「は?はぁ。。」
ヒーラー「コーガ君!これはパーッとお祝いしないといけませんね!」
しかし、コーガはサトヤマ博士が来た途端に急にうわの空で
コーガ「え?あ、まあ。。そうっすか?」
ヒーラー「もー!コーガ君がそんなにテンション下げちゃ始まらないですよ!」
コーガ「え?ああ。。そうっすね。」
ヒーラー「コーガ君ー!!ホラホラ!テンション上げて!」
するとジェシカはバン!っと机を叩く。
ジェシカ「ここは病院ですよ?分かってます?静かにして下さい!」
ヒーラー「。。。はい。すいませんすいません。」
そんな事をやっているうちに外からヘリコプターの音が聞こえてくる。
その音はどんどん近づいてきて病院の屋上へ降り立つのが中にいても分かった。
ヒーラー「き、きた!」
ぽかーっと口を開けて、目だけ上を見るコーガ。
ジェシカ「来ましたね。」
ヨーコ・サトヤマは一人、不敵な笑みを浮かべていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
屋上
ナンシェ「では行きましょうか。」
イシュタル「は、はい!」
ナンシェ「次は足元気をつけて下さいね。」
『T-SHOCK』本社に着いた時はイシュタルが転びそうになったので今度はナンシェがしっかりついてヘリコプターを降りた。
その時だった。
一匹の猫がイシュタルの足元を走り抜けた。
イシュタルは驚いて「きゃっ!」と叫んだが猫は少し離れた場所で振り向いて「ニャーオ」と鳴いてからまた物陰へ走り去ってしまった。
ナンシェは気付いておらず
ナンシェ「どうかしました?」
と尋ねるがイシュタルは
イシュタル:なんでこんな所に猫が。。?
としばらくあっけにとられてしまった。
ナンシェ「イシュタル係長?」
イシュタル「え?あ、はい!すいません。猫がいたもので。。」
ナンシェ「猫?まさか。ここは病院の屋上のヘリポートですよ?」
イシュタル「そう。。ですよね。。?」
狐につままれた気分になりながらイシュタルはナンシェに連れられて難病対策へ向かうのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
見つけた。。。
ようやく波長の合う子を。。。
見つけた。。。




