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12話 ウトナイ症候群

■前回までのあらすじ

レストラン『T-SHOCK』のアルバイトをする事になったイシュタル。



初勤務の日、お店に行ってみると全員が並んでイシュタルを出迎えていた。



そして訳もわからないまま本社のあるワシントンまでヘリコプターで連れてこられた。




■登場人物

イシュタル

17歳、女性

ポールローレンス・ダンバー高校11学年(高2)

合唱部とチアリーディング部を兼務

8年前の1区西海岸独立戦争で家族を亡くし戦争孤児としてウルク孤児院に引き取られた。



ラフム

年齢不肖、男性

音楽教師

神がかった音楽指導能力を持つ。

人気ロックバンド『Q-WIN』のシンガー

イシュタルの合唱部のバンドディレクター



桃井

年齢不肖、男性

ウルク孤児院の院長

旧世界のロックシンガー、フレディ・マーキュリーを崇拝

ピンクが好き



ナンナ

12歳、女性

戦争孤児としてイシュタルと一緒にウルク孤児院に引き取られた。



リリイ

年齢不肖、女性

3歳まで犬に育てられた。

ウルク孤児院にて保護されている。



ナズィ

17歳、女性

イシュタルの同級生

チアリーディング部のチームメイト

ボーイッシュな金髪ポニーテールの女の子



ナンシェ

24歳、女性

『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店の店長

真面目で少し近寄り難い雰囲気のある



三浦シュウ

年齢不詳、男性

T-SHOCKコーポレーション専務取締役。



■その他

『T-SHOCK』アッシュランドアベニュー店

ナズィがアルバイトをしているレストラン

イシュタルもこれから働く事になった。



ポールローレンス・ダンバー高校

イシュタル達の通うハイスクール



ウルク孤児院

桃井からは想像がつかないがプロテスタント系の教会の流れをくむ孤児院。


三浦シュウ「あなたは『ウトナイ症候群』というのを聞いたことがありますか?」



イシュタル「?。。ニュースで聞いたことはありますが詳しくは分からないです。。」



三浦シュウ「我々は医療分野での支援活動も広く手掛けていましてね。そういった難病に対する医療技術の支援もしています。」



イシュタル「。。。はい。」



三浦シュウ「イシュタルさん。実はあなたにはそのウトナイ症候群に対する強力な抗体を持っている事が分かったのです。」



イシュタル「え?わたしが?」



三浦シュウ「そうです。そこで多くの苦しんでいる人の為にどうか私達に協力願えないかとお呼びしました。」



イシュタル「え?でも、わたし医療とか全然。。」



三浦シュウ「定期的な血液提供とDNA採取、それから簡単な治験に付き合って頂ければ大丈夫です。」



三浦シュウ「もちろんその都度は詳しく説明します。」



イシュタル「で、でも。。」



三浦シュウ「気乗りしませんか?」



イシュタル「こ、こわくて。。」



三浦シュウ「確かに突然ですからね。」



三浦シュウ「では一度この映像を見てください。」



三浦がそう言うと部屋の明かりが消えてブラインドが自動的に下りてきた。



それと同時に空中に四角く光が現れて映像が映し出された。



ナンシェ「イシュタルさん、どうぞお掛けになって。」



イシュタルが気が付くと後ろに椅子が用意されていた。



イシュタル「すいません。」



そしてイシュタルが遠慮がちにその椅子に座ると動画は始まった。



自動車教習所などで見るようなナレーションと簡単なBGMで記録動画や写真を説明する簡単なものだった。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇



タイトル「T-SHOCKコーポレーションの慈善事業のとりくみと社会貢献」



「今、この1区ではウトナイ症候群という病気が深刻になりつつあります。」 



病院の風景



「この病気の特徴は一度発症すると短い時間で非常に強い苦痛を伴い、精神に異常をきたしてしまうというところです。」



隔離室の映像が流れる。



のたうち回る患者。



「この男性は発症後、自分を傷つける行為が止められずに床に頭を打ち付けて死亡しました。」



思わず見をそむけるイシュタル。



しかし映像は続く。



「また、電気ウナギの様に電気を発しながら近くのものに無差別に襲いかかるケースも後を絶たない為、発症した患者は全て拘束して隔離する必要があります。」



そして、大部屋に顔以外を袋詰めにしてベッドに固定された数十人の人々がうめき声を上げながら苦しんでいる姿が映し出されるとイシュタルは言葉を失って涙を流した。



「これらの症状は、発症すると患者たちは息絶えるまでこの苦しみに耐えるか、自らの放電で焼け死ぬしか道がありませんでした。」



「しかし、今年に入り我社T-SHOCKの医療技術研究チームの努力によりひとつの希望が見いだされました。」



「ひとつはこの病気で活発化する細胞を抑える働きのあるウイルスの発見。」



「2つ目はこの病気に対して耐性を持った方がいるという事の発見です。」



これを聞いてイシュタルはハッとしてまた映像を見る。



「1つ目はこの絶望的な苦しみを取る代わりに別の病気に感染させる為、最善の手段とは言えません。しかし、そのリスクを背負っても苦痛や放電の危険性を取ることを望まれる患者さんが多いのも事実です。」



「ただし、この方法を取るにはその都度区の認可が必要でなかなか希望する全員に処置する事ができません。」



「2つ目はまだ僅か数人そういった体質の方が見つかっただけで治療方法は確立されていません。しかしながら根本解決の糸口になると大きな期待か寄せられています。」



◇  ◇  ◇  ◇  ◇



その後もその動画は数十分の間、苦しんでいる人やT-SHOCKによって一命を取り留めた人達のドキュメント映像が流れていった。



イシュタルは、ただ食い入るようにそれをみつめていた。


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