23話 青く光る石
700年近い長き眠りから覚めたエンキはエルヴィンの残してくれた施設で目覚めたエンキはハウスキーパーマミイから色々と情報を聞き出す。
ここが旧サンパウロな事、旧リオデジャネイロ跡に新しい55区がある事。
ウナデューンの事。
そして、リミッター完成後に見せるはずのエルヴィンからのメッセージの存在をマミイから聞き出すと、それを見せてもらう事になった。
しばらくしてマミイはリビングに、指輪でも入っていそうな品の良い小箱を持って戻ってきた。
マミイ「こちらになります。」
マミイがそのシルクの様な光沢のある小箱を開くと、その後ろ側に取り付けられた蝶番を軸に小箱は上下にパカリと開き、中には青く光る宝石の様な半透明の楕円に丸みを帯びた石が入っていた。
その神秘的な美しさにエンキは思わず見とれてしまう。
エンキ「綺麗。。。」
マミイ「エルヴィン様は存在自体が不確定な為に通常のカメラや撮影機器ではお姿を直接撮影出来ません。」
マミイ「ですので、その思念をナノマシーンの結晶に込められた物がこちらになります。」
エンキ「思念を?」
マミイ「はい。姿を写し取るのではなく、意識を写し取る。と言った感じでしょうか。」
マミイ「ナノマシーンにはそう言った意識の媒体となる事が出来る性質があるようです。」
マミイ「エルヴィン様はティアマトの意識とのリンクもそう言った物の1つだと仰っていました。」
エンキ「興味深い話ね。」
エンキ「マミイさん、貴方はティアマトって何だと思う?」
マミイ「私の様な者の考えで宜しいのですか?」
エンキ「ええ、勿論。是非お聞かせ願いたいわ。」
マミイ「では、僭越ながらお答えします。」
マミイ「ティアマトとはこの宇宙の外側にある無限に広がる完全なる力の海であり、自発的にその完璧さはゆらぎ、崩壊した力の均衡から無限の宇宙を生んでいると思われます。」
マミイ「そしてエルヴィン様はその力の海その物に『意思』がある。と仰っていました。」
エンキ「ティアマトの意思。。。」
エンキ「その意思はどうして人間の意識にだけリンクするのかしら?」
エンキ「動物植物や単細胞生物との適合は勿論、意思を持たない人間の細胞に適合させてもティアマトのリンクは発動も暴走もしないわ。」
マミイ「私にはそこまでは解りかねます。。」
少し困った様子のマミイにエンキはつい興奮し過ぎてしまった自分に気がつくと肩の力を抜く。
エンキ「フゥ。。ごめんなさい。」
エンキ「あなたを責めている訳じゃないのよ。さぁ、エルヴィンからのメッセージを見せて頂ける?」
マミイ「ありがとうございます。解りました。」
マミイは小箱からその青く光るナノマシーンの結晶を取り出すとエンキの前にコトリと置いた。
戸惑うエンキ
エンキ「これは。。どうすればいいの?」
マミイ「この結晶石にはエルヴィン様の意思が込められています。」
マミイ「その意思に対してエンキ様の意識を向けて下さい。」
マミイ「そうすれば、エンキ様の意識に反応するはずです。」
エンキ「私の意識に。。」
まじまじとナノマシーンの結晶石を見つめながらエンキは少し緊張しつつ
エンキ「わかったわ。やってみる。」
そう言うとその結晶石の輝きに意識を集中した。
すると、結晶石から出る青い光がゆらぎ始める。。
溢れ出る光はやがて輝きを増すと何かの形を型取り始めた。
エンキ:見覚えのあるシルエット。。。
エンキ:そう、これは。。エルヴィンの!
その瞬間、きらめく光の中よりエルヴィンが現れた。
エルヴィン「やぁエンキ!エンリル!久しぶりだね!」
エルヴィン「これを見ていると言うことはとうとう完成したんだね!」
苦笑いをするエンキ
エルヴィン「おめでとう!うんうん、さすがはオイラの作ったシステムだなぁ。」
エルヴィンは自慢げに振る舞っているのがいたたまれない雰囲気だ。
それからエルヴィンの説明が始まった。
「完成したリミッターについて重要な注意事項があるんだ。」
「まず、リミッターは段階的に制御を外す事が可能だ。」
「外し方は2つ一つは自分のティアマトのチカラで突破する方法。」
「もう一つはリミッター解除コマンドをナノマシーンに与える方法。」
「どちらも正直お勧めしない。」
「制御リミッターはそもそも必要があるからかかっているんだ。」
「無理に外そうとしたら体への負担も大きいし暴走の危険もある。」
「解除コマンドは単に外すだけなのでこれは言うまでもない。」
「不必要にティアマトのリンクレベルは上げるべきじゃないんだ。」
「それから、アヌの復活を模索するのもやめたほうがいい。。」
エルヴィンのその言葉を聞いたエンキは思わず声を出して呆然とした。
エンキ「。。。え?」
エンキ「どうして。。。?」




