表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/298

17話 目覚め

百年の眠りからが冷めたエンキとエンリル親子だったがブラジル跡に新設された55区に移住した後、また再び眠りについた。



そして次にエンキが目覚めたのは何と700年という長い歳月を経た後だった。



しかし彼女はまだその事を知らなかった。

薄暗い部屋



窓はなく生命維持装置からの明かりがボンヤリと部屋を照らしている。



壁紙はなく金属の様なそれでいて石のような特殊な材質でできた部屋なのが分かる。



物音ひとつしない。



外にも何の気配もない。



エンキはハッとして隣のエンリルの生命維持装置を確認する。



見るとエンリルの生命維持装置はまだ生きていた。



ホッとして胸をなでおろすエンキ。



ふと見るとそばにはテーブルがひとつあり、そこに小さな箱がある。



触れると中身は真空だったのか空気がシュッと入る音がしてフタが空き、中から手紙が一通出てきた。



便箋びんせんの裏を見るとエルヴィンからだ。



エンキは椅子に腰掛け、その封のされていない便箋びんせんを開ける。







エルヴィンからのメッセージ



--------------------------------



親愛なるエンキ・ボーア様

エンリル・ボーア様





やぁエンキ、もしかしてエンリル?



ようやくお目覚めかい?



これを読む頃、世界がどうなっているのかわからないけどオイラは君たちを未来に託す事にしたよ。



生命維持装置やこの手紙を入れている箱、そらからこの部屋も特殊なナノマシーンでコーティングしてあるから普通のカプセルで使ってるナノマシーンと違って千年は持つと思う。



外壁のナノマシーンは100年持たなくてちょっと色々あったけど。。



まぁ、それはいいんだけどね。



この部屋だけど、コールドスリープが解除されるまではこの部屋の酸素濃度は10%程に設定してあります。



この部屋にも生命維持装置にも酸素濃度を管理するシステムが入っているのでどちらかが故障しても補えるようになってるから大丈夫だと信じています。



この手紙を入れた小箱もほぼ真空になる仕組みだからこの手紙もきっと劣化しないと思います。



窓もない殺風景な部屋で清々しい目覚めって訳にはいかなくてゴメンよ。



本題に入るけど、君たちを未来に託したのは訳があるんだ。



一つは朗報だよ。



ナノマシーンの制御に成功したんだ。



リミッターは全部で14段階。



オーラの見えない低位の7段階と赤から紫まで虹と同じ7色にオーラを発する7段階に分けてリミッターが発動するよ。



一番下のランクだと病気しなくなる程度。



一番上はアヌと同等って感じかな。



元々ナノマシーンはアヌの細胞を培養してその中で生まれたものだから一番上の紫までいく人はもう出てこないと思うけどね。



これだけ聞くとじゃあ何ですぐにエンリルに施さないのかってなると思うでしょ?



でも、今はまだリミッターが完全にはナノマシーンと共生してないんだ。



でも、完成すればナノマシーンに適合した人の適正に合わせて制御出来るレベルでリミッターがかかる様になるはずだよ。



今はまだ理論の確立と数兆個に一個程度の発見でしかない。



これを100%まで持っていくには数百年はかかる計算が出た。



それでも遺伝子の進化と比べれば随分早いんだけどとにかく時間のかかる作業なんだ。



そこで、リミッターとナノマシーンの共生はオートにしてそれまで君達はこのまま眠っておいてもらう事にしたんだ。



メンテナンス用のロボットが2台、その装置の監視をしてくれてるはずだよ。



だからもし、何かのトラブルで途中で起きてしまったら何とか解決してその時が来るまで生命維持装置に入ってほしい。



それからもう一つは寂しい知らせかな。



実は、オイラの存在が最近どんどん不安定になってるんだ。



オイラを認識できる人も年々少なくなっちゃって頼れるのはもう後一人だけになっちゃったよ。



オイラは消えてなくなるまでここのメンテナンスに残るけど、きっと君達が目覚める頃には消えてなくなっていると思う。



だから、この手紙をこの部屋に残しておきます。



それから、ここの説明もしておくね。



生命維持装置を背にして左の壁の扉から部屋を出れば廊下があってこの部屋の隣が研究室です。



オイラ達の研究資料は全てそこにあります。



その奥に食料庫と生活する為の施設があります。



右の壁の扉を出るとすぐエントランスでそこから外に出れるよ。



でもその頃、外はどうなっているかわからないので出るときは十分気をつけてね。



この扉は中からは手動で開くけど外からは遺伝子認証しないと開かないので認証パネルに手を置いて入ってね。



説明は以上です。



アヌとエンキとエンリルとあの家で暮らした日々が懐かしいです。



オイラにとってはみんな本当の家族だよ。



オイラはきっといないけど、また君たち親子にあんな日々が訪れます様に。



じゃ、さよなら。





成功を祈って



エルヴィン、そしてウトナ・シュレーディンガーより



愛を込めて


--------------------------------


エンキ「エルヴィン。。。」



エンキ「ありがとう。。。」



手紙を持つ手が震えながらエンキはポタポタと涙を流して暫く泣いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ