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15話 始まりのカプセル

ドナルド・ニクソン副大統領の計らいで無事、ナノマシーン研究機関での活動が可能になったエルヴィンとエンキ親子だった。



しかし、アヌの放ったオーラが太陽光を遮り地球は氷河期に突入する。



それはとても厳しい時代の始まりであった。

エンリルを生命維持装置に入れてコールドスリープさせた後、地球が全球凍結する迄の5年間、エンキはエルヴィンに習い、人が変わった様にナノマシーンについての勉強に没頭した。



そして、ついにはエルヴィン、つまりウトナと迫るほどの技術者となっていた。



その頃、世界は苦難の時代であった。



特に食料危機は深刻で今や市場の食料の殆どが人工疑似食品だ。



動植物の絶滅も著しく、遺伝子操作にたけていたナノマシーン研究機関ではそういった動植物の遺伝子や個体の保護や保管の役割も担っていた。



そんな中で国としてもナノマシーンに再び期待を高めていたが未だティアマトのチカラの暴走を抑えるには至っていない状況に二人はいきどおっていた。



然しながら、エルヴィンが提案した『カプセルシティ計画』を公約にして大統領となったドナルド・ニクソン大統領の強力な援助もあって研究するに事欠かない状況でもあった。



エルヴィンは『カプセルシティ計画』実現の為にナノマシーンを建築に転用した。



設計プログラムを入れて材料を与えておけば自己建築し自己修復するといった物だ。



これは画期的で大統領はこれを使い公約通りワシントンD.C.に直系30キロの巨大な密閉型のカプセルを作った。



後の1区の誕生である。



その頃他の国はと言うとまず、核攻撃を行った国々ではこの氷河期の原因になったのではと言う憶測が蔓延し、内乱状態にまでなった。



そして対応が遅れて国家としての体裁が保てなくなりやがて滅亡した。



戦わずして破れたのである。



発展途上国各国は2年を待たず次々に滅亡していった。



国として滅亡したのではなく本当に絶滅した国が続出したがもはやそれを気に留める者も少なかった。



先進国各国でも一部の大都市の地下シェルターや急ごしらえの防寒施設に避難した人々がジリ貧になりながら飢えと戦っていた。



元々寒い地方の人々もやはり飢えで死んでいった。



そうして5年が過ぎ、見渡せば国として機能していたのはもはやアメリカだけとなっていた。



この時のアメリカの人口400万人に対して日本はわずか1万人程となっていた。



この400万人という数は世界人口の半数以上を占める数字だった。



それだけの数の人口の食料供給を支えたのもまた、ナノマシーン研究機関で行っていた簡易ナノマシーンによる細胞の再生能力を利用した動物肉の量産だった。



最大の利点はその費用だ。



まず、水と土と光を与えてナノマシーン適合した植物の細胞を増殖させる。



これを媒体にしたナノマシーン適合した動物の細胞を増やす。



つまり飼育に必要なのは土と水と光だ。



広大な畑も牧場を必要ない。



それは3Dプリンターによる人口肉よりも上質で味も良かったが加熱処理をしてからでないと食用に向かないためにレア肉を食べる機会はなくなっていた。



そんなある日



ワシントンの街はすっかりカプセルに覆われていた。



町並みは氷河期前と変わらないが空が前天球の巨大なカプセルの天井に変わっていた。



あまりの高さに雲が自然発生している。



千年後のショウ達の世代のカプセルとは規模がまるで違っていた。



その外壁にソーラーパネルと分厚い天窓が並行して幾重にも並んでいた。



この巨大な外壁を支える為に内側には巨大な柱が等間隔に立ち並び下からライトアップされている。



天井は高さがあり過ぎるので照明を取り付けるには効率が悪く取り付けられていない。



その為この旧型のカプセルは常に暗かった。



日中は天窓からの明かりはあるがそれでもとても薄暗く外でも電気をつけていないカーテンを閉めた部屋の中ぐらいの明るさだった。



それでもこのカプセル内は外の世界から見ればまさにオアシスだった。



そんなカプセルの中にあるワシントン研究所の研究室にエルヴィンとエンキの二人はいた。





エルヴィン「エンキ、あとはオイラに任せて君も生命維持装置に入るんだ。」



唐突にエルヴィンはエンキにエンリル同様生命維持装置に入る様に持ちかけた。



戸惑いを隠せないエンキ



エンキ「でも、それじゃ何の為に私はこの研究をしてきたのでしょう?」



エンキ「やれる所までやらせて下さい。」



エルヴィン「今のペースじゃ君だけ歳を取って先に死んでしまいかねないよ。。」



エルヴィン「大丈夫!ここの研究員の中にもオイラの事が見える人も何人か出てきたしオイラがいい感じになるまでやっておくよ!」



不服そうなエンキに重ねて説得するエルヴィン



エルヴィン「エンリルが目覚めたときにおばあちゃんになってたらエンリルきっとショックだよ。」



エンキ「それは。。。」



エンキはちょっとムッとしたがすぐに肩の力を抜いてひと呼吸つくと



エンキ「わかったわ。エルヴィン、あなたを信じます。」



と言ってエルヴィンの頭をちょんと指でつついた。



エルヴィンは目を細めながら微笑むとまるで普通の猫のようにニャアと鳴いた。



数日後、エンキも生命維持装置に入った。



そして100年の月日が流れた。






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