8話 ギルドマスター
次の日の朝、軽い朝食を済ませてから再びギルドに向かった。
ギルドマスターに会って、白いゴブリンを討伐した時の状況を説明して欲しいとのことだが。
僕みたいな弱そうな男と、女性であるレイフェルト姉が、一撃で倒しました、といっても信じて貰える気がしない。
けど白いゴブリンの魔石があるのは事実な訳だし、ギルド側も信じるしかないんじゃないか? いっそのこと僕達が遭遇した時には、もう瀕死の状態だったとか嘘を言うのもありかもしれないな。
そんな事を考えてる内にギルドについてしまった。
「すいませんラゼルさん、態々きていただいて」
「いえ、今日も何かいい依頼があったら受けようと思ってたので大丈夫ですよ」
「そう言って貰えると助かります、ギルドマスターは奥に居るのでどうぞこちらに」
受付のお姉さんと簡単な挨拶をすませ、カウンターの奥の扉を開ける。
「失礼します、話を聞きたいとの事だったので来たんですけど」
「おお、態々すまんな。ワシはここでギルドマスターをやらせてもらっとる、セゴルという者だ以後よろしく頼むぞ。ラゼルに、えーと……レイフェルトだったか?」
奥の部屋には50代くらいの、いかにも昔冒険者でしたって感じのイカツイ親父が椅子に腰かけていた。
セゴルと名乗ったその人は、僕を少し見た後、暫くレイフェルト姉を見てから何か納得したように、成る程といった感じで一人頷いていた。
「はい、こちらこそ宜しくお願いします」
「ほう冒険者にしては礼儀正しいのぉ、中々の好青年じゃないか」
「当たり前じゃないのよ、誰だと思ってるの? 私の可愛い可愛いラゼルよ」
僕はレイフェルト姉のじゃないけどね、レイフェルト姉は相手がギルドマスターでもいつも通りだった。
「まぁそれはさておき、さっそくで悪いが本題の白いゴブリンのことだがな、一応その時の状況を教えてくれるか?」
サラッとレイフェルト姉を流すセゴルさん
うーん結局何て言ったもんか、考えが纏まらないままだけど……よし、僕達が遭遇した時は瀕死だった事にしよう。
それが一番丸くおさまりそうだ。
僕が喋ろうとすると
「状況も何も、ただゴブリンが出たから斬っただけの話よ。説明するまでもないわ」
レイフェルト姉が先に口を開く。
もう、せっかく僕が色々考えてたのに。
「はははっ、ゴブリンが出たから斬ったか。そりゃそーだ」
ほらやっぱり信じて貰えてないじゃないか、ギルドマスター笑っちゃってるよ。
「ワシも白いゴブリン討伐の話を聞いたときは正直信じられなかったが、嬢ちゃんを見たときにわかったよ。これでもワシは若い頃はAランク冒険者でな、人を見る目には自信がある。嬢ちゃん、あんた相当つえーだろ?見た瞬間に白いゴブリン倒したってのも納得しちまったよ。あんた何者だ?」
だからさっきレイフェルト姉をみてたのか。
それにしてもレイフェルト姉の強さを見抜くなんて、流石は元Aランク冒険者ってとこだろうか。
「何者っていわれても、私は私よ。そうね強いていうならラゼルの保護者みたいなものよ」
多分セゴルさんが聞いたのは、そういう意味じゃないと思うんだけど。
「まぁ、言いたくないならいいさ。本題はここからだ。白いゴブリンを倒した奴をDランクにしとく訳にはいかなくてな、ギルドマスター権限で嬢ちゃんのランクをAに引き上げる事になった」
いきなりAだなんて凄い、流石レイフェルト姉だ。
本来ランクというのは何個も依頼をこなして、ギルドに実力が認められて初めて上がるものらしい。
それをレイフェルト姉は1つの依頼で達成したのだ。
「もちろんラゼルもAランクになるのよね?」
「すまんがそれは無理だ、どうみてもラゼルにAランクの実力があるようには見えない。上がるのは嬢ちゃんだけだ」
よかった、実力もないのにAランクにされたら色々と面倒くさそうだしね。
「あらそうなの? なら私もDランクのままでいいわ」
あっさりとランクアップを断るレイフェルト姉。もったいない。
「いや、そういう訳にもいかんのだ」
「ならラゼルもAランクにしなさい。いい? 私とラゼルはパーティを組んでるの、一心同体なの、私の強さはラゼルの強さよ!」
「こりゃまたとんでもない考えだな……わかった、この件はとりあえず保留にしておく」
「なんかすいません」
レイフェルト姉の謎の圧力にギルドマスターもおとなしく引き下がってしまった。
僕が原因なので一応謝っておく。
さてさて、これでギルドマスターへの説明も何とかなったし、今日も何かいい依頼がないか見てみようかな。
話が終わってカウンターの方に戻ると、なぜかギルド内がザワザワしている。
揉め事でも起きたのだろうか?
「ラゼル!! やっぱりここにいたのですね!!」
突然僕のほうに、もの凄い勢いで走ってくる女性が一人。
…………何でここにリファネル姉さんが?




