57話 下着姿
「あぁ~、サッパリし…………た……」
お風呂で汗と汚れを落として、スッキリした気持ちで部屋のドアを開けたんだけど、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
「どう? 似合ってるかしら?」
「…………なんで皆、下着姿なのさ?」
そう、何故か部屋に入ると、全員もれなく下着姿だった。
僕がお風呂に入ってる間に、何があったんだ……?
「あら? 昨日言ったじゃない。新しく買った下着のお披露目会をするって。で? 私のこの姿を見て、何か言うことはないのかしら?」
レイフェルト姉が両手を後頭部に当て、その豊満な胸を前に出すように強調しながら、いつも通りの口調で聞いてくる。
上下黒色の、レイフェルト姉らしい色っぽい下着だ。
朝起きるといつも下着姿だけど、こうしてまじまじと見るのは初めてだった。
家族同然の姉さん達の下着姿を見て、なんて言えばいいんだろうか…………
いや、どういう意図があるかはわからないけど、姉さん達は僕に下着が似合ってるか聞いてきてるので、どういった言葉を望んでるかはわかる。
わかるんだけど…………16歳にもなって、姉や妹の下着姿を評価するのはどうなんだろうか………………
でも今日は皆に心配をかけてしまったし、嘘までついてしまった。
この罪悪感を拭う為にも、今日だけは心を無にして、姉さん達を褒め倒してあげようかな…………恥ずかしいけど。
「…………ってるよ……」
「え? な~に? 声が小さくて聞こえなかったわぁ」
悪戯な笑みを浮かべながら、僕の言葉を待つレイフェルト姉。
「似合ってるよ。レイフェルト姉の大人っぽい雰囲気と、白い綺麗な肌に、黒色の下着が凄い合ってるよ」
もうヤケクソだ。
こうなったら皆まとめて、褒め倒し作戦だ。
褒めて褒めて褒めて、早く服を着てもらおう。
「フフフ、顔を真っ赤にしちゃって、可愛いわね。お姉さん、ラゼルの照れて困ってる顔を見ると、キュンキュンしちゃうの」
「ちょっと待って、その格好で近づかな――――」
ムニュウっとした、柔らかな感触の胸に、僕の頭は抱き締められていた。
下着姿だから、いつもよりも柔らかく暖かい………………って、そんな事を考えてる場合じゃない、早く何とかしないと。
「アンッッ! そんな所触っちゃ駄目よぉ」
「ごっごめん、わざとじゃないんだ…………」
抜けだそうと、必死にもがいていたら、いつの間にか両手が柔らかいナニカをムニュっと掴んでいた。
「やっぱりラゼルも男の子なのね。でも大丈夫よ、今はいきなりでビックリしちゃったけど、ラゼルならいくらでも触っていいわよ」
何も大丈夫じゃないんだけど…………
「レイフェルト、あまりラゼルをからかわないで下さい。次は私達が見てもらうんですから」
「からかってないわよ。私は本当にそう思ってるもの。まぁいいわ、存分に見てもらうといいわ。私の後じゃ、印象に残らないでしょうけどね」
「ふ、笑わせないで下さい。私はラゼルのお姉ちゃんなんです。貴女に負ける訳ありません。さぁ、どうですかラゼル、お姉ちゃんを見て下さい」
リファネル姉さんが両手を広げて、スタイルのいい体を、惜しげもなく晒している。
レイフェルト姉とは対照的で、リファネル姉さんの下着は上下白だ。
下着姿は少し恥ずかしいのか、若干顔が赤い。
だったら脱がなきゃいいのになぁ…………
それに、いつの間に勝負になったんだろ?
「うん。レイフェルト姉は妖艶な感じがしたけど、姉さんはなんていうか、清楚な感じがして凄い似合ってるよ」
レイフェルト姉に勝るとも劣らないその大きな胸は、少し刺激的だけどね…………
「まぁ清楚だなんて、照れます」
姉さんの顔が更に赤くなった気がした。
喜んでもらえたなら良かった…………
さて、残るは…………
「次は私ですわ」
「ルシアナ…………」
やっぱり一番の問題はルシアナだったか…………
「似合う似合わないの前にさ、下着を着けようね」
おかしいな、さっきまで着けてたように見えたんだけど…………
ルシアナが両手を腰に当てながら、僕の前に立っている。
自らの裸体を見せつけるかのように。
「下着なんて必要ないですわ。で、どうなんですお兄様? 私の身体は」
どうって言われてもね…………
けどさっきから、姉さん達の破壊力抜群の体を見てたせいか、ルシアナの子供体型を見ると落ち着くなぁ。
「うん、いいと思うよ。だけど、外に出るときは下着を着けようね」
僕はルシアナに近付き、頭を撫でる。
「は~い、わかりましたわ」
気持ち良さそうな顔のルシアナ。
よし、これで大丈夫だ。
何とか乗り切った。
「じゃあお披露目会も終わりってことで、そろそろ服を着てよ。風邪引いたら大変だしさ」
この姉達が風邪を引くとは思えないが、とにかく服を着てほしい。
「駄目よ、今日はこのまま寝るんだから。風邪を引かないように、ラゼルが暖めてね」
耳元でレイフェルト姉が囁いてきた。
熱い吐息が耳に当たり、ビクッとなってしまった。
「いやいや、いくら姉弟っていってもさ、その格好で一緒に寝るのはどうかと思うんだ……」
いつも朝には、どうせ下着姿になってるんだけど、最初から下着の状態で寝るのとは話が違ってくる。
「私達に嘘をついて心配をかけたんだから、それぐらい大丈夫よね?」
「お姉ちゃんはもの凄く心配しました……」
「私もですわ」
はぁ…………。
深くため息をつく。
僕は知ってるんだ…………これは諦めるしかないパターンだって。