56話 心配
すいません、3日以内にはと思ってたんですが、気づけば4日経ってました。(´。・д人)゛
「た、ただいまぁ……」
恐る恐る家のドアを開ける。
姉さん達、多分心配してるよね…………
「ラゼル……心配したんですよ? 一人で魔物の討伐に行くなんて……何かあったらどうするんですか……もう!」
部屋に入ってすぐ、リファネル姉さんが僕の前に凄い速さで移動してきた。
僕の体をペタペタと触り、怪我がないかを念入りに調べてる。
過保護過ぎるよ……
あれ? でもなんで魔物の討伐に行った事を知ってるんだろ?
もしかしてギルドに行ったのかな。
「ごめんね、リファネル姉さん。だけど怪我はしてないから大丈夫だよ」
僕がそう言うと、リファネル姉さんはペタペタと触るのを止め、僕の目をジッと見つめる。
こんなに間近で見つめられると、何だか照れるな。
「ラゼル、お姉ちゃんは少し怒ってます。どれだけ心配したと思ってるんですか? もしラゼルに何かあったらと思うと…………そう考えるだけでお姉ちゃんは、気が狂いそうになるんです」
姉さんの目が潤んでる。
あと少しで、目尻に溜まった涙が落ちてしまいそうだ。
「本当にごめんね。だからそんな泣きそうな顔しないでよ。もう勝手に居なくなったりしないからさ」
「……約束しましたよ?」
本気で心配してくれる姉さんに対して、嘘をついた罪悪感が込み上げてくる。
確かに過保護過ぎるけれど、いつも僕の事を思っての行動だもんね。
「うん。約束するよ」
「あらあら~? 随分となが~いジョギングだったわね、ラゼル?」
リファネル姉さんをなんとか宥める事に成功したと思ったら、次はレイフェルト姉か…………
「い、いや~…………つい熱が入って、走り過ぎちゃったよ。……とか言ってみたり」
「ラ・ゼ・ル?」
「嘘です。ごめんなさい……」
何とか冗談で済まないかなぁと、軽くふざけてみたけど、レイフェルト姉も怒ってるみたいだ。
「まったく……私も心配したんだから。次からは、せめて私は連れて行くのよ?」
「うん。反省してるよ」
今回は僕が悪かった。
次からは、ちゃんと言ってから出掛けないと。
でもそれだと、絶対ついてくるんだよね…………どうしたもんか。
「私はまったく心配してませんでしたよ。お兄様を信じてますから」
最後はルシアナだ。
けど、僕の想像してた展開と違った。
ルシアナの事だから「お兄様ぁ!」とか言って、リファネル姉さんよりも早く僕の所に来ると思ったんだけど。
「何いってんのよ、貴女が一番心配しながら見てたじゃないの」
ん? 見てた? どういう事?
「レイフェルト姉、見てたって?」
「ふふふ、ルシアナの肩を見てみなさい」
肩? 別にいつも通りだけ――――いや、何だあれ?
ルシアナの肩に、真っ赤な小さい妖精? みたいなのが乗ってるんだけど……
「どうしたの、その生き物?…………魔物?」
「違いますわお兄様。これは私の使い魔です。『ピクシィ』と言って、大変便利な使い魔ですの。もう一体の青色のピクシィが見た景色を、こっちの赤いピクシィが映し出してくれるんです。このように」
ルシアナが、赤いピクシィをちょんちょんとつつくと、ピクシィの目が光り、その光りがルシアナの持ってる水晶に当たった。
すると、何だか見たことある景色が映し出された。
これ、家の前の道だ…………使い魔ってこんな事が出来るんだ……凄い。
「そんな便利な使い魔がいるんだね……初めて見たよ」
「ええ。使い魔を使役するのはそう難しい事ではありませんが、魔術師の数自体が少ないので、見たことなくても仕方ないですわ」
えっと、じゃあ僕は今までずっと見られてたって事か…………何だか恥ずかしくなってきた。
僕、変な行動してないよね……?
「この子とリファネルったら、水晶をずっと落ち着かなそうに見てたのよ」
「それは貴女も同じでしょう、レイフェルト! 声が届く訳でもないのに、「ラゼルゥ」とか叫んでたではありませんか」
「だって心配だったんだもの。仕方ないじゃない」
「まぁ、それには同意ですがね」
僕の知らない所で、そんな事が起こってたのね…………
「まったく、お姉様達ったら。危なくなったら、待機させてる別の使い魔で、オーガを消し炭に変えると言いましたのに。心配性ですわね」
僕の周りにそんな強力な使い魔がいたのか…………全然気付かなかったよ。
まぁ、これで一件落着かな? 皆も落ち着いたっぽいし。
次から嘘は駄目だね。
「じゃ、僕はお風呂行ってくるから」
オーガとの戦いで、全身泥だらけだよ。
早くスッキリしたい。
「そう言うと思って、お風呂の準備はできてますわ。さ、どうぞどうぞ」
「ありがとうルシアナ。でも一つ聞いていいかな?」
「どうしました?」
キョトンとした顔で小首を傾げる。
いや、可愛いんだけどさ……
「なんでルシアナまで服を脱ごうとしてるのさ……」
「フフフ。昔のように、兄妹仲良く流しッコでもしようかと思いまして――――」
「――――一人で洗えるから大丈夫だよ」
僕はルシアナをドアの向こうに押し出し、一人でお風呂に向かった。
どうやったらルシアナに、羞恥心というものが芽生えるのだろうか…………
面白い。
続きが気になる。
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