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54話 最強の女

 


「して、ゾルバルよ。ロネルフィが戻ってきたというのは本当か?」


「はい、昨晩戻ったのを、他の護衛が確認しております」


 ラルク王国、王の間にて、国王と側近のゾルバルが言葉を交わしていた。

 剣聖リファネルに斬られた傷は癒えたようだ。


「そうか、ではロネルフィを呼べ。今すぐにだ」


「……今すぐ、ですか……」


 なんとも歯切れの悪いゾルバル。


「なんだ? 何か問題でもあるのか?」


「いえ、なんでもありません。すぐ呼んで参ります」


 ロネルフィ。

 ラルク王国最強の女。

 実際に戦ってはいないが、その剣速や剣技は剣聖をも凌ぐと噂されている。

 強い敵と戦う事を生き甲斐としている、戦闘狂。

 ラルクを象徴するかのような女戦士、ロネルフィ。

 彼女は、ほとんどラルク王国には居ない。

 常に強いものを求めて、フラフラしている。


 その性格は非常に好戦的で、容赦がない。

 ゾルバルは若い頃、彼女に戦いを挑まれ、あっさりと敗北していた。

 そんな記憶があるからか、彼はロネルフィに苦手意識を持っていた。

 だが、国王の命令なので、重い腰を上げ、ロネルフィを呼ぶべく立ち上がった。

 その時だった。


「私に何か用?」


 ロネルフィが扉を開け、王の間へと入ってきた。


 常に戦場に身を投じている者のみが纏う、独特の覇気。

 見るもの全てを射殺すかのような、鋭すぎる眼光。

 ただそこにいるだけなのに、圧倒的な存在感を放っている。


「おお、ロネルフィ。よく戻ったな。魔族はどうだった?」


「全然駄目ね。やっぱり幹部クラスや魔王と戦ってみたいわね。そこら辺の雑魚じゃ相手にならないわ」


 ロネルフィは王からの命で、魔族を排除していた。

 命とはいっても、それは魔族と戦うのが面白そうと思ったからで、興味のない事には例え王の命でも動かない。

 彼女はそういう女だ。


「そうか、戻ったばかりで悪いが一つ頼まれてくれんか?」


「嫌よ。しばらくはゆっくり過ごすって決めてるの」


 王の頼みを一蹴するロネルフィ。


「貴様、王に向かってなんて態度を!!」


 ゾルバルがたまらず、怒鳴り声を上げる。


「ああ、いたのねゾルバル。影が薄すぎて気付かなかったわ。貴方こそいいの? 私にそんな口きいて。王の側近だかなんだか知らないけど――――斬り殺すわよ?」


「……」


 ゾルバルは黙らざるを得なかった。

 これ以上何か言えば、本当に殺される。

 殺意という名のプレッシャー。

 ロネルフィは殺ると言ったら殺る女だと、ゾルバルは知っていた。


「お前は強い者と戦いたいのだろう?」


 国王が口を挟む。


「ええそうよ。私は戦いが好きなの。強い者と戦ってる時の、ゾクゾクする感じがたまらないのよ」


「リファネルとレイフェルト、それにルシアナ。この三人をラルクに連れ戻して欲しいのだ」


「へぇ、あの娘達、国を出たの。三人も同時期に居なくなるなんて、何か理由でもあるの?」


「恐らくだが、ラゼルを追ったのだろう。少し前にラゼルをこの国から追放したのだ」


 国王は、自分の息子の事なのに、まるで他人のように語る。


「アッハハ、自分の息子を追放なんて、酷いことするわね。それであの娘達も居なくなった訳ね」


「そうだ。いくらこの国でも、あいつらを連れ戻せる程の実力者は限られてくるからな」


「ファントム辺りに頼めば?」


「ファントムは、ルシアナを止めようとして、返り討ちに合った。当分は動けまい」


「ふーん、ダサいわね、あの男も。わかったわ、連れ戻すかどうかは別として、少し休んだら様子を見てくるわ。一度あの娘達とは戦ってみたいと思ってたの」


「頼んだ」











「あの娘達と会うのも久しぶりだわ…………懐かしいわね」


 殆んど使う事のない自室のベッドに寝転がりながら、どこか遠くを見つめるロネルフィ。


 その表情は、どこか優し気だった。



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― 新着の感想 ―
[一言] あ、この最大戦力姐さんも主人公さんにとられる予感w 王様ザマァ展開かしらw
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