53話 帰宅
「……と、ただいま」
ハナさんとラナを二人残して、家へと帰宅した。
返事が聞こえないので、レイフェルト姉は寝てしまったんだろう。
「ラゼル、私はお風呂に入りますが、先に入りますか?」
リファネル姉さんは長風呂だから、気を利かせて聞いてくれたんだと思う。
「僕は最後でいいよ。せっかく広いんだから、ルシアナも一緒に入ってくれば?」
さりげなく一緒に入る事を進めて、僕の時に入ってこないようにする。
「私は大丈夫ですよ。お兄様と入るので」
僕が大丈夫じゃないんだけどなぁ…………
「ほら、ルシアナ。行きますよ? たまには姉妹仲良く入ろうではありませんか」
「え、ちょ、私はお兄様と――――」
ナイス姉さん。
ルシアナはリファネル姉さんに引きずられながら、お風呂へと向かっていった。
僕は自分の部屋に向かった。
ガチャリと、ドアを開ける。
「…………はぁぁ」
わかってた事だけど、レイフェルト姉がベッドで寝ている。
レイフェルト姉を起こさないように、そっと自分の剣を掴み、外にでる。
せっかく庭があるんだし、お風呂が空くまで剣でも振ってようかな。
それにしても、今日の戦い。
ハナさんの魔術も凄かった。
姉さんは半端者とか言ってたけど、魔術も剣術もあれだけ使えるならいいよね。
僕は魔術が使えないから、必然的に剣術を鍛えるしかないけど、いくらやっても強くなれない。
本当にルシアナとリファネル姉さんと同じ血が流れてるんだろうか…………
あの二人をみてると、たまにそう思ってしまう。
「ラゼル? お風呂空きましたよ」
「ありがとう、今いくよ」
リファネル姉さんがタオルを渡してくれたので、汗を拭いながら家へ戻る。
やっぱり庭があるっていいね。
夜遅くても、周りを気にしないで済む。
「ラゼルは今のままでいいと思いますよ? もし敵がいたら私が斬り捨てますので」
「昔から剣を振ってたからさ、もう日課みたいになってるんだよね」
「そうですか、あまり無茶をしては駄目ですよ」
確かに姉さん達がいれば、僕の強さなんて必要ないだろう。
何が起こっても、きっと姉さん達がなんとかしてしまう。
その圧倒的な力で。
でも、いつまでも姉さん達が僕の近くにいるとは限らない。
人生何が起こるかなんて、誰にもわからないから。
そういう時の為にも、最低限生きていけるくらいの強さは必要だと思う。
「あ~気持ちよかったぁ」
お風呂上がりに部屋へ戻ると、ベッドにはリファネル姉さんとルシアナがプラスされていた。
自分の部屋の意味が…………
「布団を温めておきました。さ、寝ましょう」
ルシアナは既に眠っていて、起きてるのはリファネル姉さんだけだった。
「いや~、ベッドもいっぱいみたいだしさ、僕はルシアナの部屋で寝るよ」
「何を言いますか、ちゃんとラゼルの場所は確保してます。さぁ来て下さい」
ベッドを見ると、姉さんとルシアナの間に少しだけ、隙間がある。
「いや、でも…………」
「それとも、お姉ちゃんの事が嫌いなんですか?」
姉さんが悲しそうな目でこっちを見てくる。
嫌いとかそういう問題じゃないんだよね。
普通はこの歳で、姉弟一緒に寝るなんてあり得ないと思うんだ。
「……嫌いじゃないけど」
「なら来て下さい、さぁ!」
仕方ない、今日だけ我慢しよう。今日だけ……
「姉さん、ちょっとくっつき過ぎじゃないかな? 暑いんだけど…………」
「そうですか? いつも通りですが」
そりゃ、いつもくっついてるけどさ…………
仕方ない、こういう時は何も考えず寝てしまおう。
姉さんに抱きつかれたままで、心を無にして寝ようとしたけど、中々寝付けない。
「姉さん、起きてる?」
「はい、起きてますよ。どうかしましたか?」
「いや、ラナとハナさん大丈夫かなって」
「ラナはハナの事が、なんだかんだ好きみたいですし、大丈夫なんじゃないですか?」
「だといいんだけど」
「姉弟は仲良しが一番です」
姉さんが僕を抱く力を強める。
「そっか…………そうだよね」
僕達は仲が良すぎる気もするけど…………
近いうちに、ラナに仲直りできたか聞いてみよう。