48話 プレゼント
「じゃあね、シルビー」
「はい。またなにかあったら泊まりにきてくださいね」
次の日、シルビーに別れを告げ、僕達四人は宿を出た。
この国にきてからは、ずっとここに泊まってたから、なんだか少しだけ寂しい気持ちになる。
暇なときに遊びに来ようかな。
お金には当分困らないだろうし、無理してギルドの依頼を受ける必要もなくなったし。
「今更だけど、あの家ってこの前の被害を受けなかったの?」
「それは大丈夫よ。この前確認したもの」
さすがレイフェルト姉、ぬかりない。
「そっか。買うものとかって決まってるの?」
よくよく考えてみると、引っ越しといってもそんなに運んだりする物はないし、新しく買わなければいけない物も少ない。
この前見た時に確認したが、ベッドやカーテン、布団といった最低限のものは備え付けられていた。
日用品を買って、そのまま家に向かえばいいだけなんだよね。
「ん~、日用品くらいかしらね。私はもう少し服とか、下着も買おうと思ってるけど」
「私も新しい下着が欲しいです。この前買ったのが思いの外小さかったので。それとも私の胸が、日々成長してるんでしょうか」
自然とリファネル姉さんの胸に目がいってしまった。
これ以上大きくなったら動きにくそうだけど……
「僕は絶対行かないからね。下着とかは姉さん達だけで行ってきてね」
女性の下着売り場に男がいると、他の女性客の視線が突き刺さるのだ。
「え~、ラゼルにみてもらいたかったのに」
今見なくても、朝になったら下着姿でベッドにいるんだから同じでしょ……
「仕方ありませんよ、レイフェルト。衣類は私達だけで買いに行きましょう。お披露目は夜のお楽しみです」
「いや、お披露目とかしなくていいからね」
「フフフ、照れてるんですね? お姉ちゃんにはわかりますよ」
何もわかってないんだよなぁ……
「ルシアナ、貴女はどうするのかしら? 私とリファネルと一緒に行く?」
「いいえ、私はお兄様と居ますわ。それに私は下着なんて必要ありませんもの」
ん? さらっと、とんでもない事を言ってる気がしたけど?
気のせいだよね?
「ルシアナ? ちなみに今、下着は……」
「着けてませんわ!」
うわ、それでよくそんなヒラヒラした服を着れるよ……
「姉さん……ルシアナのも買ってきてよ」
「仕方ありませんね、ラゼルを頼みましたよ、ルシアナ」
リファネル姉さんと、レイフェルト姉は服屋がある方へと歩いていく。
その場に残った、僕とルシアナ。
「ルシアナ? 下着は着けようね、常識的に考えて」
「考えておきますわ。そんな事よりも、やっと二人きりになれましたね。さ、デート開始ですわ」
そう言いながら、僕の手を握ってくるルシアナ。
しかもただ握るのではなく、指と指をしっかりと絡めて。
よく仲のいいカップルが、こんな風に手を繋いでるけど……
「まずはあっちに行ってみましょう、お兄様!」
楽しそうに僕の手を引っ張って、屋台のある方へと進んでいく。
ま、ルシアナが楽しそうにしてるし、いいか。
僕が居なくなって、寂しい思いをしてたみたいだし。
それから、屋台で軽く買い食いをしながら、色々見て回った。
プレゼントが欲しいって言ってたけど、どんなのものが欲しいんだろ?
「ルシアナは何が欲しいの?」
「お兄様がくれるものなら、どんなものでも私の宝物ですわ」
恥ずかしげもなく、真顔でそんなこと言うもんだから、こっちが恥ずかしくなってくる。
参ったな、何でもいいっていうのが一番困るんだよね……
「ん? ちょっとこれ見て、ルシアナ」
何かないかと、キョロキョロしながら歩いてると、蒼い宝石のブレスレットが視界に入った。
「まぁ、とても綺麗ですわ」
「でしょ? ルシアナの蒼い瞳と同じで、凄い合うと思うんだ。これにしようと思うんだけど、どうかな?」
「嬉しいです、一生の宝物にしますわ」
また大袈裟だなぁ……
「はい、ルシアナ」
「わぁ、ありがとうございます」
購入したブレスレットをプレゼントすると、さっそく腕につけて、嬉しそうにニヤニヤしている。
こんだけ喜んでもらえると、プレゼントしたこっちまで嬉しくなってくる。
その後は、日用品を買ってから、姉さん達と合流して新しい家へと向かった。