47話 駄目だった
「僕は一人部屋が欲しいんだけど」
あれこれ考えてはみたが、この姉妹を納得させるだけの案を、思いつく事が出来なかった。
ので、ストレートにお願いする事にした。
姉さん達も、僕が真剣にお願いすればわかってくれる筈だ。
第一、この歳で一緒の部屋っておかしいよね?
世間一般の姉弟のことはわからないが、ここまでベタベタはしてないと思うんだ。
部屋数が少ないとかなら、まだわかるけど。
「それはいくらラゼルのお願いでも、駄目です。ラゼルはお姉ちゃんと一緒に居るべきだと思います」
「駄目よ。リファネルはいいとしても、私は絶対同じ部屋よ。もうこれは決まってることなのよ?」
「はい、駄目ですわ。お姉様達は放っておいてもいいですが、私は構ってくれないと、寂しくて魔力が暴走するかもですわ」
見事に全員に断られてしまった。
ルシアナに至っては、もはや脅しだと思う……
「……じゃあ、せめて寝る時は各々、自分のベッドで寝てもらってもいいかな?」
もう同じ部屋になるのは、決まってるらしいので諦める。
この際、一緒のベッドじゃなければいいさ。
「それじゃ同じ部屋の意味がないじゃない。それも却下よ」
「ええ、そんな事になったら、ラゼル成分欠乏症になってしまいます」
そんな病名、初めて聞いたよ……
「私も、お兄様の匂いを全身に染み込ませないと、落ち着かないですわ」
だからって全裸になるのは、本当にやめて欲しいんだ……
はぁ、駄目だこれ。
やっぱり、僕が何を言っても変わらない。
「…………わかったよ」
こういう時は、諦めが肝心だ。
ちょっと前までの、絶対に一人部屋を手に入れるという僕の決意は、早々に散っていった。
引っ越しは明日なので、今日は宿に泊まるのだが、最後になりそうなのでシルビーにお別れの挨拶をしようと思う。
この前、シルビーに似合いそうな髪留めを見つけたので、それも一緒に渡そう。
「シルビー、これよかったら貰って。シルビーに似合うと思って買ってきたんだ。明日で僕達は宿を出ちゃうからね、今までのお礼だよ」
「わぁ可愛いです。いいんですか?」
「その為に買ってきたんだから貰ってよ。シルビーには色々お世話になったからね」
「ありがとうございます、大事にしますね」
どうやら気に入ってもらえたようだ。
「この国に住んでる以上、また会う事もあると思うから、その時は一緒にご飯でも行こうね」
「はい! 是非とも」
シルビーに挨拶を済ませ、部屋に戻った。
姉さん達の姿は見えない、二人で買い物にでも行ったのかな。
「お兄様ぁ、私にも何か買って下さい」
部屋に戻ってすぐ、ルシアナが甘えた声で僕にすり寄ってきた。
シルビーに髪留めをあげたのを、見られてたようだ。
「こんなにお金があるんだから、好きなものを買ってきなよ。魔族撃退に一番貢献したのはルシアナなんだから、それくらいはいいんじゃない?」
僕達の部屋の机には、今日貰ったばかりの、大量のお金が入った袋が並べられている。
こうして見ると、白いゴブリンの時に貰ったお金が、霞んで見えるな……
「自分で買った物に価値なんてありませんわ、私はお兄様に、プレゼントして欲しいんですぅ」
価値がないは言い過ぎだと思うけど。
「わかったよ、明日の引っ越しの時に日用品を買いに行くだろうし、その時に何か買うよ」
「まぁ、デートですね!!」
デートではないけど……
こんな事でルシアナが喜ぶなら、安いもんだ。
僕は昔から、なんだかんだいってルシアナには甘いと思う。
甘えた声でお願いされると断れないのだ。
新作書いてみました。
「魔王(女)の足が臭すぎるんだが」
空いた時間に、投稿出来たらと思ってます。
よかったら見て下さい。




