46話 お礼
王城へ着くと、この前ファルメイアさんと話した部屋に案内された。
ここはちょっとした、会議室みたいな所なのかもしれない。
「おお、よく来てくれた。遠慮せずに座ってくれ」
「はい、失礼します」
部屋の中には、既に国王様がいる。
あと、なぜかファルメイアさんも。
この前のパーティーで見たけれど、こうして間近で会うのは初めてなので、緊張する。
こんな服装で大丈夫だったのかな?
僕達は全員、普段通りの格好で来ている。
パーティーの時のように、スーツとドレスの方がいいんじゃないかと思ったんだけど、ラナが大丈夫って言うから、お言葉に甘えさせてもらった。
まぁ、僕達が冒険者って事も知ってるわけだし、この方が自然かもしれない。
「まずは、国を代表してお礼を言わせてくれ。よくぞこの国から、魔族を撃退してくれた。お主達が居なかったら、今頃はみんな死んでたかもしれない。ありがとう」
国王様が頭を下げて、僕達にお礼を言う。
魔族は勇者パーティが撃退したことになってるが、国王様には、ファルメイアさんが説明してくれたみたいだ。
それよりも、いくら魔族を撃退したといっても、国王が冒険者なんかに頭を下げてる事に驚いた。
「顔を上げて下さい。それよりも死者が出なくてよかったです」
僕が代表して答える。
馬車の中で、そういう事に決まった。
姉さん達に任せたら、どんな失礼な事を言うかわからないからね。
「それもお主達のお陰だ。これはこの前渡しそびれた、ドラゴン討伐の褒賞金じゃ、受け取ってくれ」
そう言うと、執事の人が机にドサッと大きな袋を四つ置いた。
あれに全部お金が入ってるとなると、相当な額になる。
「こんなにいただいていいんですか? いくら何でも多すぎる気がするのですが」
「これには、魔族を撃退してくれた事へのお礼も含まれておる。遠慮せずに受け取ってくれ」
……これだけのお金があれば、もうギルドで依頼を受けなくても暮らしてけそうだ。
「わかりました、ありがとうございます」
「それと、ラナから頼まれておった家の件だが、あれも受け取ってくれ。もちろん金はいらん」
なんと、家までタダで手に入ってしまった。
至れり尽くせりだ。
「その代わりと言ってはなんだが、お主達に少し頼みがあるんだが」
だと思った。
そんなに全てが上手くいくことなんてないよね……
無茶な頼みじゃなければいいけど。
「なんでしょうか? 僕達に出来ることなら、無茶な事でなければ大丈夫ですが」
「なに、そこまで無茶な事ではない。できれば、このままこの国に住んでてもらいたいだけだ。もちろん、ギルドの依頼でこの国を離れる事もあるだろう。だが、一応シルベスト王国を拠点にしてくれればいいのだ。どうだ?」
え、そんな事でいいの?
どっちみち僕達は、この国に暫く居る予定だったし、なんの問題もないけど。
何故だろうか?
「ふん、こやつはお前達の力が欲しいのだろう。この国に居てくれさえすれば、この前のような事が起こっても安心だからな」
僕が何故かと考えていると、今まで黙ってたファルメイアさんが口を開いた。
「ちょ、ファルメイア様、そんなストレートに言わなくても……」
「ええい、黙れ」
ファルメイア様が、コツンと王様の額を小突いた。
流石、何百年も生きてるエルフだ……
「ファルメイアさん落ち着いて下さい、僕達は大丈夫ですから。元々この国に住もうとしてたんで」
「そうか……妾としては、やはり一緒に来てもらいたかったが、仕方ないか……」
やっぱり、まだ諦めてなかったのか。
その為にここに居たのかも。
「すいません」
「なに、まだアテはある。そっちをあたるとしよう」
「他にも強い知り合いが居るんですか?」
「ああ、性格に問題はあるが、実力は確かだ。今はSランク冒険者とか言ってた気がするが。まぁ、とりあえずは訪ねてみるさ。今のままではマズイからな」
Sランク冒険者か……ファルメイアさんが認めるって事は、やっぱり凄い人達なんだろう。
味方になってくれるといいけど。
「家はすぐにでも使ってくれて構わない。これから困った事があったら、私に言ってくれ。なるべく力になろう。ラナも君を気に入ってるようだしな」
「お、お父様! 急に変な事言わないで下さいっ!!」
またラナの顔が真っ赤になった。
何をそんなに照れてるんだろうか?
ん?
視線を感じて横を見ると、姉さん達が冷ややかな目で僕を見ていた。
え? 僕、何もしてないよね?
その後は、軽く取り留めの無い話をしてから、帰る事になった。
国王様は僕達が、ラルク王国出身だと知っていた。
ファルメイアさんが口を滑らせたらしい。
特に問題もないので、何も言わなかったけど。
引っ越しに関しては、明日する事になった。
帰り道の馬車で、僕はどうやって自分の部屋を確保するか考えていた。
そう、僕の戦いはこれからなのだ。




