45話 王城へ
それから3日ほど経った。
国はすっかり元通り。
とはいかないが、着実にいい方向に進んでる。
僕は特にする事がなかったので、なんだかんだずっと剣を振っていた気がする。
一回だけ一人でゴブリンの討伐に行こうとしたんだけど、当然の様に姉さん達もついてきた。
お陰で僕は、一度もゴブリンと戦えなかった。
姿が見えたと思ったら、首が飛んでるか、ぺしゃんこに潰れてるんだもん。
修行にすらならない。
だから外で一人剣を振る事にした。
「ふぁ~、スッキリした」
鍛練を終え、お風呂で汗を流す。
やっぱり体を動かすのは気持ちがいい。
ルシアナはあれ以降、風呂場に入ってこない。
正確には、入ってこれないの方が正しいか。
姉さん達が目を光らせてくれている。
どうせなら、みんなして僕のベッドへ潜り込んでくるのもやめてほしいけどね…………
「すいませーん、ラゼルさん居ますか? お客さんが来てますよ」
部屋のノックと共に、シルビーの声が聞こえた。
誰だろうと思いながらドアを開けると、シルビーの横にはラナが立っていた。
もしかして、家のことかな?
「こんにちは、皆さん。この前の家の件で来ました」
「もう待ちわびたわ! いい報告なんでしょうね?」
レイフェルト姉が真っ先に食いついた。
「とりあえず、立ち話もなんだし部屋に入ってよ」
ラナを宿の一室へ招き入れる。
シルビーは、仕事があると言って戻っていった。
「では、失礼します」
「ちょっと貴女、この前お兄様と夜に会っていたみたいですけど、どういう関係なんですか?」
ラナが部屋に入って早々、ルシアナが両腕を組ながら、敵意を迸らせている。
一応初対面なんだから、自己紹介くらいしてほしい。
「この前の夜………………」
ポッと、ラナの顔が一気に赤く染まった。
「お兄様……?」
「ラゼル、この前は何もないと言っていたではないですか? お姉ちゃんに嘘をついたんですか?」
「嘘はよくないわよ。さぁ、ナニしてたのか白状なさい」
ラナの真っ赤な顔を見て勘違いしたのか、ジトーっとした目で三人が僕を見てくる。
あれ? 本当に何もなかったはずなんだけど……
「いやいや、そんな目で見ないでよ、本当に何もないって。偶々会って、少し話をしただけだってば。ね、ラナ?」
「え、ええ、何もありませんよ」
そんだけ動揺してたら、本当に何かあったみたいに見られちゃうよ……
「ほら、ね? そんな事より、家の話をしようよ。その為にきてくれたんだし、ね?」
これ以上話が変な方向へいく前に、元の話題へと戻す。
「まぁ、気にはなりますが、今回はお兄様を信じますわ」
「ラゼル様、そちらは?」
「そういえば、二人は会うの初めてだよね? 妹のルシアナだよ。ちょっと過激な所もあるけど、根はいい子だから宜しくね」
「まぁ、妹さんでしたか。初めまして、私はラナと言います。一応この国の第二王女ですが、気軽に接して下さいね」
何故か妹と聞いた瞬間、ラナの顔が晴れやかになった気がした。
「ええ、宜しくお願いします。貴女とは今度じっくりとお話したいですわ」
「是非とも」
二人がどんな話をするのか気になる。
意外と気があったりしてね。
兄としては、ルシアナに普通の友人ができるのは嬉しい。
「で、家はどうなったのかしら?」
「はい、その事なんですが。一度お父様の所に来ていただけませんか?」
そういえば、結局ドラゴン討伐のお金も、もらい損ねたままだ。
「実はファルメイア様が、お父様に本当の事を伝えてくれたのです。そしたら直接お礼をしたいという話になりまして。家はほぼ間違いなく手に入りそうなので、ご安心を」
本当の事とは、魔族を撃退したのが勇者パーティではなく、姉さん達という事だろう。
王様もファルメイアさんが言うのなら、信じない訳にはいかなかったんだろう。
「なら良かったわ。これでやっと、この宿ともサヨナラできるわね」
レイフェルト姉は、本当に嬉しそうにしている。
一番最初に家が欲しいって言ったのも、レイフェルト姉だしね。
こんなにすぐ実現するとは思わなかったけど。
「やっと広いお風呂に入れそうです」
「はい、これでやっとお兄様と一緒にお風呂へ入れますわ」
いや入らないから。
お風呂が狭かったから、一緒に入らなかった訳じゃないからね?
またラナが、顔を赤くしてこっちを見てるし……
「ルシアナ……ラナに誤解されるから、変な事言わないでよ」
「変な事なんて言ってませんわ、この前だって一緒に――――――――」
僕は慌ててルシアナの口を塞ぐ。
この歳で妹とお風呂とか、絶対におかしいからね。
「王様の所には、いつ頃行けばいいの?」
「ラゼル様達さえ良ければ、すぐにでも。下に馬車も来てます」
僕達は急いで用意をして、王城へと向かった。
申し訳ないのですが、次話から三日に一度の更新になるかもしれません。
その分、文字数は増やそうと思ってます。
宜しくお願いします。(-人-;)