39話 片付け
朝食を済ませた後で、僕は動きやすい服装に着替えて、外に出た。
魔族のせいで、焼けてしまった家だったり、崩れた擁壁などが散乱しているのだ。
朝から沢山の人達が、その片付けに手を割いている。
特に、魔族と対峙した付近なんかは酷いもんだった。
半壊どころか、全焼して跡形も残ってない建物も多い。
住んでいた人達は、今どうしてるんだろうか?
国が面倒を見てくれるといいんだけど。
で、今日はそのお手伝いって訳だ。
困った時は助け合わないとね。
きっとこういうのが、巡りめぐっていつか、自分に返ってくるものだと僕は信じてる。
姉さん達やルシアナは、面倒臭そうにしてたから僕だけで来ようとしたんだけど、気付いたら後ろにいた。
建物の残骸を拾っては、馬車の荷台に積む作業を延々と繰り返す。
姉さん達は僕の後ろに引っ付いて、適当に拾ってる。
そんな近くにいても意味がないからと、散らばってもらった。
渋々だが、各々散っていった。
「お疲れ様です。ラゼル様」
そんな時、声をかけられた。
この声はラナだ。
「お疲れ、ラナ…………って、その格好はいったい……」
振り返り、ラナの姿を見る。
いつもの綺麗なドレス姿ではなく、僕達冒険者がするような格好をしていた。
顔には煤がつき、体もあちこち汚れてる。
「まさか、手伝ってたの?」
「ええ、皆さんが大変な時に、私だけ何もしないというのも心苦しいので。それに負傷して動けない人も多いので、人手が足りてないのです。こういう時こそ、王族とか関係なく手を取り合うべきだと私は思うのです」
驚いた。
いくら人手が足りないんだとしても、王女がこんな格好で一般人と同じく作業してるなんて。
でもラナのそういう考え方は、正直好きだ。
素直に尊敬できる。
「それと、昨日はすいません。助けていただいたのに、あのような事を言ってしまい……」
「大丈夫だよ、気にしないで。結果的に二人とも無事だったんだ」
「ありがとうございます、それと家の件ですが、もう少し待ってもらってもよろしいですか? 少々バタバタしてまして」
「急いでないから、落ち着いた時でいいよ」
「そう言ってもらえると助かります」
レイフェルト姉が騒ぎそうだけど、多分大丈夫だろう。
「それと、お姉様……勇者パーティですが、もう少しこの国に滞在するようです。魔族が生きてた事実を知って、レイモンド王国への凱旋もなくなりました」
倒したと思ってた魔族の幹部が生きてたんだ、必然とそうなるか。
幹部相手にこの有り様だ、魔王討伐なんてできるのかな?
今後の旅を思うと、ファルメイアさんが大変そうだ……
「では、私はこれで失礼します。一度王城へ戻ります。詳しくわかり次第、宿に使いをだしますね」
そう言ってラナは帰っていった。
「……お兄様? 今のは誰ですか? 随分親しそうにしてましたが?」
ルシアナが腕の裾をクイクイと引っ張っていた。
ビックリした、いつの間にいたんだ?
「ラナはこの国の王女様だよ、一度助けたことがあってね、それで知り合ったんだ」
助けたのは、姉さん達だけどね。
「そうですか。ですがあまり他の女ばかり見ていては嫌ですわ。せっかく久しぶりに会えたんです、もっと私に構ってください」
「はいはい、片付けが終わったらね」
「約束しましたよ。私の魔術で速攻終わらせてあげますわ」
「え?」
それからのルシアナは凄かった。
どういった魔術かはわからないが、次々と建物の残骸を浮かして移動させてった。
重くて、中々持ち上がらない物も軽々と浮かしていた。
これなら、片付け自体はすぐに終わりそうだ。
ありがたいんだけどさ、こんな事ができるんならもっと早くやって欲しかったな……
ルシアナの活躍もあって、片付けは本当に1日で終わってしまった。
残りは建物等の復旧だが、それは僕達ではどうにもできないので、本職の方に任せる。
とりあえず、やれる事はやった。
あとは何事もなく、復旧作業が終わるのを願うだけだ。
今日は帰ろう。
姉さん達と合流して、宿に戻った。
とにかくお風呂に入って、汗と汚れを流したい。
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