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33話 魔族

 


 家が燃えて、住人が悲鳴を上げながら逃げている。

 方向的に、恐らく王城へと避難しているのだろう。


「姉さん……これは何が起こってるの?」


 本当にわけがわからなかった。

 昼間はあんなに平和的だったのに、今僕の眼前に広がる光景は地獄のような有り様だ。


「気配でしかわかりませんが、何者かがこの国へと攻めてきたようですね。中々に強そうです」


 リファネル姉さんが「強そう」って言うくらいだ、異常事態なのは間違いない。


「僕達はどうするの?」


 姉さん達の事だ、私達には関係ありません、とか平気で言うかもしれない。


「もう、せっかく家が手に入りそうだっていうのに、このままじゃあの家が燃えちゃうじゃない。どうしてくれようかしら」


「だそうです。ラゼル、私達は元凶を斬り捨ててきます。危ないので宿で待ってて下さい。安心して下さい、この宿には一歩足りとも近づけさせませんから」


 二人して窓から身を乗りだし、外へと出ようとする。


「待って、 僕も行くよ! なるべく足は引っ張らないようにするし、自分の身は自分で守ってみせるから、だから……」


 僕が行ってもどうにもならない事はわかってる、けどこの国には数は少ないけど、知り合いもいる。

 シルビーにラナ、それにギルドの人達。

 このまま宿でジットなんてしてられなかった。

 それに何者が来ようとも、今この国には勇者パーティがいる。

 ヘリオスさん達はどうかわからないけど、ファルメイアさんはこの前、幹部を一人で倒したって言ってたし、余程の事がない限りは大丈夫だろう。


「まぁ、いいんじゃない? この宿も安全とは限らないし、私達の近くが一番安全じゃないかしら?」


「それもそうですね……ではラゼル。背中に乗ってください」


 素直にリファネル姉さんの背中へと乗る。

 さっそく足を引っ張ってる気はするが、緊急事態だ、細かい事を気にするのはよそう。


「彼方ですね。では行きます!」


 新たに火の手が上がった場所を見据えて、勢いよく窓から飛び出る。













 姉さん達のスピードは相変わらず速く、あっという間についたのだが。


「ファルメイアさん、これはいったい……」


 そこには息も切れ切れな様子のファルメイアさんが、何者かと交戦中だった。

 何より驚いたのは、ヘリオスさんとハナさんが、グッタリと家屋にもたれかかっていた事だ。

 意識はなさそうだ。

 その近くでヒリエルさんが必死に回復魔術をかけている。


「おお、お前達、来てくれたか」


 ファルメイアさんは安堵の表情をみせる。


「貴女がこんな状態になるまで手こずるなんて、魔王でも来たのかしら?」


 レイフェルト姉も、ファルメイアさんの事だけは一目置いていた。

 そんな人が、ゼェゼェと息を切らしながら辛そうに戦っているのだ、気にもなるだろう。


「いや、それなんだが、この前妾が魔族の幹部を討伐したと言っただろう? どうやら殺しきれていなかったようだ。妾も耄碌したもんだ」


「きます!!」


 その時リファネル姉さんが声を上げた。


 僕達目掛けて、巨大な火の玉が飛んできた。

 各自、散らばってそれを避ける。

 僕は背中に乗ってるだけだが。


「ヒーッヒッヒッヒ!! おいおい、何回俺を殺せば気が済むんだよ!!えー? クソエルフがっ!!」


 火の玉が飛んで来た方から、一人の男が歩いてくる。


 スタスタとゆっくりと、たが確実に此方に歩いてくるソイツは、遠くから見た感じだと普通の人間にしか見えなかったが、近づくにつれて、その異常性が浮き彫りになってきた。


 まず、肌が薄紫色をしていた。

 顔色の悪い人間って言うのも無理があるだろう。

 そして、魔物のように鋭く伸びた爪に、牙まで生えている。

 腰からは2本の尻尾のようなものが、ウネウネと動いていた。


「……奴は魔族の幹部だ。どんな傷を負ってもすぐに再生する厄介な奴でな。この前は、妾の最大出力の魔術で跡形もなく吹っ飛ばしたつもりだったんだが、生きていたようだ。すまないが、力を貸してくれんか? 勇者達はあの様だし、妾の魔力も底をつきかけてる。このままでは、この国が滅んでしまう」


 そこまでの事態だとは、流石に思わなかった。

 まさか、魔王の幹部が攻めてくるとは。

 またいざとなったら、姉さん達が倒してくれるだろうと、心の中では思っていた。

 けど、ファルメイアさんの様子を見るに、今回は一筋縄ではいかなそうだ。


 あれ? 僕、素直に宿にいた方が良かったんじゃ……

 邪魔にしかならない気がする……













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