31話 ニマニマ
二度寝から目が覚めると、もう昼過ぎだった。
ラナ王女の所へは、勇者パーティがこの国を出てから行く事になってる。
僕達が顔を合わせると、また一悶着あるかもしれないからね。
レイフェルト姉は、早く家が欲しくて仕方ないらしく、今日も家を探しに行ってしまった。
リファネル姉さんも一緒についていったようだ。
喧嘩する程仲がいいとはよく言ったものだ。
もちろん僕も誘われたのだが、今日はゆっくりしたい気分だったので遠慮しておいた。
どうせ一緒に行っても、僕の意見なんか通らないだろうし。
ただ、意地でも自分の一人部屋だけは手に入れてみせる。
別に一緒の部屋が嫌って訳ではないのだが、如何せんスキンシップが激しい。
いくら家族といえども、僕も年頃の男だ。
たまに、クラっとくるときがあるのだ。
本当にたまにだけどね。
それにレイフェルト姉とは、血の繋がりはないので、血縁上は他人なのだ。
それが毎晩あんな薄着でくっついてくるのだ、慣れてはいてもね……
そういえば、ルシアナは元気だろうか?
昨日、ファルメイアさんから妹の名前が出たからか、ふとそんな考えが頭を過った。
別れの挨拶もしないまま、国を追放されちゃったからなぁ。
寂しがってるだろうか?
昔からルシアナは僕にベッタリだったし。
いや、姉さん達も充分ベッタリなのだが、ルシアナはそれの遥か斜め上をいくというか……もはや依存と言った方がいいだろう。
幼い頃は、お風呂やトイレ、どこに行くにも僕の後ろをついてきた。
無理に引き離そうとすると大泣きして、暴れるのだ。
ただ暴れるのなら可愛いものだが、ルシアナの場合は生まれつき魔力が桁違いに多く、その魔力を暴走させながらわんわん泣くのだ。
引き離そうとした大人達が何人も吹っ飛んでたなぁ……
そんな事もあって、周りの大人達も、僕とルシアナを引き離すのを早々に諦めていた。
最近では心身共に成長して、お風呂やトイレについてくる事はなくなっていたが、僕に対しての過保護具合は、姉さん達以上だ。
「ラゼルー、ただいまぁ!」
そろそろ起きようと、ベッドから上半身を起こしたタイミングでドアが勢いよく開き、レイフェルト姉が入ってきた為、体がビクッとなってしまった。
「ちょ、そんな勢いよく開けないでよ!」
「あらららぁ? もしかしてお姉さん、邪魔しちゃったかしら? 大丈夫よ、ラゼルも男の子だもの、ソレは自然な行為よ」
この人、絶対変な勘違いしてるよ……
「いや、レイフェルト姉が勢いよくドアを開けるから驚いただけだよ。別にそんな事してないよ」
「え~、そんな事って何かしら? お姉さんに詳しく教えてくれる~?」
くっ、これはあれだ、完全にからかわれてる…………
顔がニマニマ笑ってるもん…………
「レイフェルト、あまりラゼルをからかわないで下さい」
後ろからリファネル姉さんが出てきた。
「だって~、ラゼルの困った顔がとっても可愛いんだもの。フフフ」
「ラゼルが可愛いのは認めますが、からかっては駄目です」
「はいはい、わかったわよ。そんな事よりもラゼル、いい家が見つかりそうよ」
そんな事よりって……まったくもう。
ん? 見つかりそう? まだ見つかった訳じゃないのかな?
「どういう事?」
「さっきラナと会ってね、色々と家を紹介してくれる事になったのよ」
「それは凄いね、王女様の紹介なら間違いないだろうね」
「そんな信頼されると、プレッシャーを感じてしまいますわ、ラゼル様」
リファネル姉さんの後ろから、ヒョイとラナ王女が出てきた。
あれ? もしかして……
「ラナ王女様……いつからそこに?」
「……最初からいましたよ」
少し顔を赤らめながら答える。
うわぁ、最悪だよ。
さっきの姉さん達とのやりとりも聞かれてたってことじゃないか。
恥ずかしい……
「それで、これから家を見に行くから、ラゼルも一緒にと思って、迎えにきたのよ」
「そうなんだ、じゃあちょっと着替えるから待ってて」
服を脱ごうとして
「「「……」」」
「あのさ、そんなに見られると着替えづらいんだけど……」
ラナ王女までちゃっかりと見てるし……




