表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/89

28話 帰ろう

 


「絶対お断りよ」「お断りします」


 やっぱり断るんだ……何となくわかってたけどね。

 でも何故か、それを少し嬉しく思う自分もいる。

 ファルメイアさんはできた人だと思うけど、勇者ヘリオスさんとハナさんは、会って早々にあんなことになっちゃったし。

 まぁ、ハナさんの事に関しては僕のせいだけど。

 いや、勇者もなんだかんだで僕のせいかもしれない……


「一応聞いてはみたが、やはり断られたか……」


 駄目元で聞いてみたのだろう。

 落ち込んでる様子はない。


「それに私達はラルク王国の出身よ? 勝手に勧誘なんてしたら面倒臭くなるわよ?」


「こんな国で冒険者なんてやってるんだ、お前達も事情があるのだろう?」


 レイフェルト姉はカマをかけたつもりだろうけど、逆に見抜かれてしまった。

 ファルメイアさんだったら、僕達がラルク王国を出たのを知ってても不思議じゃない。

 何百年も生きてるエルフだ、そういった情報を知る術を持ってるかもしれない。

 と言っても、ラルク王国から追放されたのは僕だけで、二人は勝手に国を抜けてついてきてくれただけなんだけどね……


「そうね、色々とあるのよ。私達も」


「どんな事情があるかは知らんが、ラルク王国ならば、剣聖が抜けても大丈夫だろう。彼処はお前達の様な、化物染みたのが何人もいるからな。それでも国の戦力はだいぶ落ちるだろうが」


 この言い方だと、ラルク王国の事も多少は知ってるみたいだ。

 知り合いでも居るのかな?


「確かに、一筋縄じゃいかないのが結構いるわね~」


「ふふ、所詮私の敵にはなりえませんがね」


 ラルク王国は、実力主義国家と言われてるだけあって、姉さん達の他にも猛者はいる。

 けど僕は、この二人が戦って負けてる所を見た事がない。


「剣聖に会えたのは光栄だが、どうせなら同じ魔術師としては、賢者ルシアナにも会ってみたいものだな」


 やはりルシアナの事も知ってるようだ。

 姉さんの事を知ってたんだから、妹を知っててもおかしくはないが。

 ルシアナの魔術は派手なのが多いからね、認知度的には姉さんよりも知れ渡ってるかもしれない。


「妹を知ってるんですか?」


「なんと、お前の妹であったか。これは驚いたな。それと先程からこの二人を姉と呼んでいるが」


「はい、ルシアナは妹でリファネル姉さんは姉です。レイフェルト姉も血は繋がってないですけど、似たようなものです」


「……お前もとんでもない姉妹に囲まれて大変だな、何かあったら妾に言うがいい。ナタ茶を出して、話を聞くくらいはできるぞ」


 僕の肩をポンポンと叩き、慈愛に満ちた目で見てくる。


「ありがとうございます」


「何を言ってるんですか、ラゼルはお姉ちゃんが好きで一緒にいるんです。大変な事なんてありません」


「そうよ。ラゼルは私が好きでしょうがないのよ。ね?」


「ハハハ……」


 なんて答えようか、とりあえず笑って誤魔化そう。

 いや、嫌いじゃないけどさ。

 素直に好きっていうのも気恥ずかしいものだ。


「それじゃ、そろそろ私達はいくわよ。勇者達に何か言われたら、次は加減できないかもしれないし」


「ああ、手間を取らせたな。先程の話だが、気が変わったら教えてくれ。長居はしないが、あと二,三日はこの国にいる予定だ」


「気が変わる事なんてありませんよ。私が剣を振るのはラゼルの為だけです。魔族がラゼルに危害を加えようとするのなら、斬り捨てますが、そうでないのなら知った事ではありません」


「わかった。最近じゃ魔族も動きが活発になってるから、気をつけるんだぞ」






 僕達は歩いてきた廊下を、そのままは戻らず、更に進んで裏口から外へと出た。

 ラナ王女に挨拶くらいしときたかったけど、この国にいればまた会うこともあるだろう。

 とりあえず宿へと戻る事にする。

 でも何か忘れてるような気が…………





「あーーっ!」


「どうしましたラゼル? 何処か痛いのですか?」


「何処が痛いの? お姉さんが撫でてあげるわよ?」


 近い近い、ベタベタくっつきすぎだってば……


 今はそんな事よりも


「ドラゴン討伐のお金、まだ貰ってないのに出て来ちゃったねって思ったんだけど……」















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ