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25話 ファルメイア


すいません、16話でラナのことを第一王女と書いてましたが、正しくは第二王女です。直しました。


感想欄で指摘してくださった方、有難う御座います!

 


「ファ、ファルメイア様! 違うんです、これはコイツらが仕掛けてきて、それで……」


 今まで、強気な態度をとっていたハナさんだが、初代勇者パーティの一人でもあるファルメイアさんには頭が上がらないようだ。

 中々の狼狽えっぷりだ。

 というより、当たり前のように嘘をつかないでほしい。

 最初に手を出してきたのはあっちだ。


「馬鹿者が! お前らの会話は聞こえていたぞ。妾の耳を侮るでないぞ!」


 そう言って、肩の辺りで切り揃えられた緑色の髪を、手で耳にかけながら、エルフ特有の長く尖った耳を、強調するかのように出す。

 耳がピクピクと動いている。


 昔読んだ本に書いてあったっけ、エルフの耳は地獄耳って。

 貴族達に囲まれた状態で、僕達の会話が聞こえていたってことは、本に書いてあったことは本当だったんだ。


 それにしても…………僕はファルメイアさんの方をみる。

 昨日見たときは気付かなかったけど…………小さい。

 僕も身長が高い方ではないけれど、その僕よりも頭半分くらいは低い。

 こう言っては失礼かも知れないけど……子供みたいで可愛い。

 見れば見るほど、何百年も生きてるとは思えなかった。

 エルフ……不思議な種族だ……


「でも、コイツらがヘリオスを無視するから……」


「言い訳の前に、その物騒な氷を引っ込めろ! さっきの氷柱も妾が何とかしたのだぞ!」


 うわ、本当だ。

 いつの間にかさっきの氷の柱が綺麗になくなってるよ。


「もう出しちゃってるんですから、引っ込められないですよぉ」


「仕方ないのぉ、あまり年寄りに無茶させるでないぞ」


 ハァ、と深い溜め息をついて、氷に向けて手を軽く振る。

 すると驚く事に、数十個はあった氷の塊が瞬く間に消えていく。

 いったい何をしたんだろうか?僕の目には、ただ手を振っただけにしか見えなかったけど……後で姉さんに聞いてみよう。


「ほれ、お前もいつまで固まっておる」


 ファルメイアさんが、さっきから固まったままのヘリオスさんを小突く。


「は、すいません。ちょっと夢を見ていたようです。そこの女性冒険者二人をパーティに勧誘したんですが、フルシカトされるという怖い夢でした」


 無視された事実を受け入れられず、無かったことにしたようだ。


「いや、夢じゃないぞ。お前はガッツリとそこの冒険者にガン無視されておったぞ。 受け入れ難い現実に直面した時、無かったことにする。お前の悪い癖だぞ」


「そんな……僕が無視された? ハハハ、ファルメイア様、冗談はやめて下さい。僕が無視される訳ないじゃないですか。僕は勇者なんですよ? 世界の為に戦っている。それを無視だなんて、ある訳がない!」


 ファルメイアさんが遠慮なしに事実を告げるが、ヘリオスさんはまったく信じちゃいない。


 なんだろう、僕の中で勇者パーティへの憧れが、急速に冷めていってる。

 勇者は、僕みたいな弱者とはまともに会話もしてくれなかったし、ハナさんに至っては論外だ。

 ファルメイアさんは流石にまともそうだけど。


「どうだい君達、僕達のパーティに入らないか? 魔王討伐を果たせば、地位や名誉、お金だって手に入る! 君達程の実力があれば足を引っ張ることもないだろう」


 やっぱりさっきの事を無かったことにしたようで、本日2回目の勇者パーティへの勧誘がきた。

 熱い視線を二人に向けている。


「はて? 何か耳障りな声が聞こえたような気がしましたが、気のせいですかね? どうですか、レイフェルト」


「ん~私も何も聞こえなかったわね。耳の周りに虫でも飛んでたんじゃないかしら?」


 あ、まだそのスタイルを貫くんだ。


「ラゼルはどうですか? 何か聞こえましたか?」


 え~、そこで僕に振るの?

 どうしたもんか……


「いや、僕も何も聞こえないよ。最近暑いからね。虫でも飛んでたんだよ」


 少し悩んだが、姉さん達に合わせる事にした。

 さっきのラナ王女のこともあるし、勇者も何か嫌な感じだった。

 これくらいは許されるだろう。


「……成る程、どうやら夢じゃなかったようだ。未だに信じられないけどね。

 ……僕は、この世でどうしても許せない事が一つだけあるんだ……それは――――」


 やっと現実を認めたようだけど、様子が少しおかしい。


「――――実力もないのに僕を馬鹿にするやつさ!!」


 怒りを顕にした勇者の姿が一瞬ブレたかと思うと、次の瞬間には僕の目の前にいた。

 まったく見えなかった。

 やっぱり勇者といわれてるだけはある。

 僕に掴みかかろうと、手を伸ばす。

 当然僕がそんな勇者の速さに対応できる訳もなく、なすすべなく捕まりそうになった時。


 僕と勇者の間を、何かが通りすぎた気がした。

 それが、レイフェルト姉の足だと気付いた時には、勇者がもの凄い勢いで壁にぶっ飛んでいた。


「ラゼルに何かするつもりなら、流石に無視できないわよ?」


 勇者が飛んでいった方を見ると、体が壁にめり込んでいた。

 完璧に意識を失ってるようだ。


 蹴りで勇者を吹っ飛ばすって…………相変わらず僕の姉は規格外だった。











なんと、この小説がハイファンタジーの日間ランキングに載りました!!(一番下の方ですが)


かなりテンション上がりました(笑)


ブクマや評価して下さった皆様のお陰です。ありがとうございます!!



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[良い点] テンプレですが普通に面白い
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