22話 姉妹
すいません、勇者パーティのハナの設定を少し変えました。
『剣の才能を認められて勇者パーティに入った、天才剣士』から
『剣と魔術の才能を認められて勇者パーティに入った、天才魔剣士』へと変更になりました。
宜しくお願いします。
「人聞きの悪いことを言わないでください、何も企んでなどいませんよ。お姉様」
「は、どうだか。どうでもいいけど、私が魔王を討伐して戻るまでこの国をちゃんと支えてなさいよ」
お姉様? 僕の聞き間違えじゃなければ、今ハナさんの事を『お姉様』と、そう呼んでいた。
確かに、よくみると髪の毛も同じ銀色だ。
顔も似てるような気がしてきた。
お姉さんのほうが若干……いや、だいぶ気が強そうな顔をしてるが。
「お姉様にそんな事を言われずとも、私は私で自分のすべき事をするだけです。いつまでもこの国にお姉様の席があると思わないで下さい」
僕達と話す時と違って、姉であるハナさんにはやけに刺々しい態度をとるラナ王女。
だが、手が僅かに震えている。
「生意気言わないでちょうだい。貴女は所詮、私が戻るまでの代わりに過ぎないのだから。そうね、私が戻ったらあんたなんて用なしで要らなくなるんだから、そこにいる冒険者の仲間にでも入れてもらうといいわ。でもあんたみたいな、何の才能も取り柄もない奴なんて、精々魔物の囮くらいしか使い道ないでしょうね、アハハッ!」
何なんだこの人は、これが妹にとる態度なのか?
この二人の間に何があったのかはわからないし、これから先も知ることはないかもしれない。
でもこれはいくら何でも酷すぎじゃないか?
才能がない? 取り柄がない? それの何がいけないっていうんだ。
そんな事は、言われるまでもなく、本人が絶対にわかってることなんだ。
才能がないからと国を追放された自分と重なってみえてしまって、急にラナ王女が他人に思えなくなってきた。
「姉妹なんですよね? どうしてそこまで酷いことが言えるんですか?」
気がついたら自然と、ラナ王女の前に立ちハナさんに問いかけていた。
涙目になりながら、手を震わせるラナ王女をみて、どうしても放って置けなかった。
僕が口を出した所で何もならないのはわかってるが、どうにもムシャクシャしてしょうがなかったのだ。
一言どうしても言ってやりたくなった。
「どうしてですって? そんな事、貴方には関係ない事よ。冒険者風情が気安く話しかけないでくれる?」
「それはすいませんでした。でもこれだけは言わせてもらいます。僕は勇者パーティに憧れていたんです。尊敬すらしていました。でも、勇者パーティの一人である貴女がこんな人だとは思わなかった。冒険者風情といいましたよね? 自分の妹をあんな風に罵れる貴女は、冒険者にも劣る、最低の人間だと思います」
言いたいことを言った後で、冷静になって気付いたけど、もしかして、いや、もしかしなくても言い過ぎた。
つい頭に血が昇ってしまった。
レイフェルト姉とリファネル姉さんも呆気にとられた顔をしてるし……
「……随分舐めた口を利いてくれるじゃない。もう二度と冒険者なんか出来なくしてあげるわ」
目をヒクヒクさせながら、こちらに右手を向けてくる。
「ラゼルッ!!」
リファネル姉さんが僕を抱えて後ろに下がった。
僕がいた場所を見ると、氷の柱ができていた。
あ、危なかった。
リファネル姉さんがいなかったら今頃、氷付けになっていたところだ。
それにしても、一瞬であれだけの氷の魔術を放つとは……天才の名は伊達じゃないな。
「ありがとう、リファネル姉さん。助かったよ」
「いえ、あの程度の魔術はなんの問題もありません。それにしても、さっきの啖呵は格好よかったですよ。お姉ちゃんもスッキリしました」
「うんうん! 格好よかったわよラゼル! お姉さんキュンキュンしちゃったわ」
「レイフェルト姉……」
「だ、大丈夫ですか、ラゼル様!」
氷の柱の方からラナ王女が、心配そうに駆け寄ってくる。
「僕は平気だよ、リファネル姉さんのお陰でね」
「よかったです。それにしても……
お姉様! いくらなんでもやりすぎです! 人に向けて魔術を放つなど、下手をしたら大怪我をしてたかもしれません」
周囲がザワザワしだした。
この騒ぎで、貴族達の視線が此方の方へと集まってる。
「そんなの知らないわ。生意気な口を聞いたそこの冒険者がいけないのよ。あと、そこのツリ目女! 私の魔術が、あの程度とか言ってたわね? このままで済むと思わないことね」
「あら、私は事実を言ったまでですよ? 『あの程度』では何発きても問題ありませんね。それにあなたこそ、このままで済むとは思わないように。私の大事なラゼルを氷付けにしようとした報い、きっちりと償ってもらいます」
「フン、まぁいいわ。覚えておきなさい!」
ハナさんは勇者のいる方へと去っていった。
どうすんだろ、この氷の柱…………




