21話 敬語
待ちに待った今日がきた。
そうパーティー開催日当日だ。
昼頃に迎えの馬車がくると書いてあったので、早めに出て宿の外で待ってると、普段貴族や王族が乗る豪華な馬車がきた。
冒険者が乗る馬車とは大違いだ。
まさか国の中を移動するのに、馬車に乗るときがくるとは。
なんて贅沢なんだ。
国王の住む城に着くと、大きな広間に案内された。
見たこともない、高そうな食べ物がテーブルにズラーっと並んでいる。
すでに何人か貴族の人達がきているが、勇者パーティはまだいないようだった。
「ね? 剣は置いてきてよかったでしょ?」
姉さん達は当たり前のように剣を腰に差してパーティーに参加しようとしていて、僕が慌てて止めた。
綺麗なドレスに、腰の剣がアンバランスでおかしかった。
「確かに場違いかもしれませんが、何が起こるか分からないので持ってきたかったです」
国王主催のパーティーで危険なんてないだろうに、心配性だなぁ。
「ま、いいじゃない。いざとなったら剣が無くても戦えないことはないでしょ」
「ですが、やはり戦闘力は落ちると言わざるをえません」
「二人とも心配しすぎだよ。こんな場で滅多なことなんて起こらないよ。勇者パーティもいるんだし」
そうだ、もし何かあったとしてもこの会場には勇者がいるのだ。
何も心配することなんてないだろう。
「その勇者パーティが何か仕掛けてくるかもしれないじゃないですか」
「ははっ、そんな事ないって。リファネル姉さんは本当に勇者パーティが嫌いだね」
「当たり前です。私のラゼルの心を奪った、憎むべき怨敵です」
何度も言ってるけど、僕は姉さんのじゃないから……
その時、広間の扉が開いて、周りの貴族達の視線がそちらに集まった。
ラナ王女と勇者パーティの面々が広間へと入ってきた。
昨日見たときとは違って、女性は豪華なドレスに身を包んで、勇者も黒いスーツに着替えて登場した。
武器も装備してないようだ。
そりゃそうだよね、あの重装備のままくるわけないか。
貴族達が我先にと、勇者パーティに近付いていく。
その人だかりをかき分けて、ラナ王女が此方に向かって歩いてきた。
「お久しぶりです、ラナ王女様。今日はこんな素晴らしいパーティに呼んで頂き、ありがとうございます」
僕が代表して挨拶する。
久しぶりっていっても、この前会ったばかりか。
「もうラゼル様ったら、そんなに畏まらないでください。私の事は気軽にラナと呼んでください。敬語もいりませんわ」
いくら本人がいいと言っても、周りの目を考えるとそういう訳にはいかないんだよなぁ。
「それにリファネル様とレイフェルト様。この前は危ない所を助けて頂きありがとうございました。先日伺ったときは、お二人がいらっしゃらなかったので、今この場で改めてお礼をさせて頂きます。本当にありがとうございました」
深々と頭を下げてお礼を言う、ラナ王女様。
僕は二人の姉を横目でチラッと見る。
大丈夫だろうか、王女様にタメ口とかきかないか心配だ。
「頭を上げて下さい、王女様。困ってる人が居たら助けるのは当然の事です。今回はそれがたまたま王女様だっただけです。見たところ大きな怪我もないようでよかったです」
よかった、レイフェルト姉もちゃんと敬語使えたんだ。
でもなんか変な感じだな。
ラルク王国は実力さえあれば、だいたいの事は許されていたから、レイフェルト姉が敬語を使うなんて中々に珍しい。
リファネル姉さんは横で黙ったままだけど。
「まぁ何と素晴らしいお考えでしょうか。それでいてドラゴンを討伐するほどの実力も兼ね備えているとは。良かったらこれからも仲良くしてください。一応、第二王女なんて肩書きはありますが、そんなのは気にしないで気安く話しかけて下さい。敬語も結構なので」
「あら、じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。宜しくねラナ」
速攻で敬語をやめたよ、この人。
でも王女様がいいって言ったんだからいいのか……僕が難しく考えすぎなのかな?
握手を交わす王女様とレイフェルト姉。
「リファネル様も、これからも仲良くして下さると嬉しいです」
レイフェルト姉の後でリファネル姉さんにも握手を求めて手を差し出す。
「ええ、此方こそお願いしますよ、ラナ」
リファネル姉さんも王女を呼び捨てだ。
姉さんは普段から敬語みたいな喋り方だから、そんなに失礼には聞こえない。
「直にお父様からの挨拶が始まると思いますので、それまで少々お待ち下さいね」
「冒険者なんかにペコペコと媚売っちゃって、なに企んでるのよラナ」
ラナ王女が貴族達の所へ戻ろうとした時、女性の声が聞こえてきた。
声の方を振り返ると、この国出身で勇者パーティの一人でもある、天才魔剣士ハナさんが腕を組んでラナ王女をみていた。
2ちゃんねるとかでよく、ポイントくれ~とかスレ立ってますけど、書き始めるとやっぱり評価点とか欲しくなるものですね。(/ω・\)チラッ