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18話 招待状

 


 それから二人に気付かれないようにそっと宿を出た僕は、一人でギルドに向かった。

 宿でのんびりすごしてもよかったんだけど、ラルク王国にいた頃は毎日のように剣を振って修行していたせいか、何か身体を動かしてないと落ち着かない。

 けどレイフェルト姉達と一緒だと僕が戦う前に終わる可能性が高いので、一人でも倒せそうな魔物の討伐でも受けようと思ったのだ。

 そうそう白いゴブリンみたいな、Aランクの魔物となんて遭遇しないだろうしね。







「あ、ギルドマスター! ラゼルさんが来ましたよ!」


 ギルドの扉を開けて早々に、受付のお姉さんが僕に気付き少し慌てた様子でセゴルさんを呼ぶ。


「おお! 丁度よかった、今お前らの居る宿に使いを出そうと思ってたんだ」


「国王様に会う日が決まったんですか?」


 その時にドラゴン討伐のお金もくれるって言ってたっけ。


「それはそうなんだが、ちょっとすごい事になってな。近々勇者パーティがこの国に来るって噂は知ってるだろ?」


 もちろんだ。

 この前僕が聞いた時は知らない人も結構いたが、今じゃ国中の噂になっている。

 なんでも、魔族の幹部の一人を討伐したらしく、勇者の故郷であるレイモンド王国に一度凱旋するようだ。

 その帰り道にこのシルベスト王国にも寄るらしい。


「はい、それは知ってますが、それと何か関係が?」


「それに伴って、国王主催のパーティーが開かれるんだが、それにお前らのパーティが招待されたんだよ! 出席者はほとんどが王族や貴族だ。冒険者が呼ばれる何て異例の事だろうよ」


 て事は勇者パーティを間近に見れるって事じゃないか!

 もしかしたら喋ったりもできるかもしれない。

 どうしよう、すごい嬉しい。


「それは今回ドラゴンを討伐したからでしょうか?」


「それが大きいのは確かだがな。一番の理由は王女様が参加を強く望まれたそうだ。お前ら王女様を盗賊から助けたらしいじゃねーか。それでどうせならドラゴン討伐の賞金の授与も、その場でやるってことになったらしい。王女様がここにきた時は驚いたぞ!」


 だから近いうちにまた会うことになるって言ってたのか。


「ほれ、これが招待状だ。嬢ちゃん達にも渡しといてくれ。呉々も失礼のないようにな。まぁお前は大丈夫そうだが……残りの二人は不安だな」


「よく言い聞かせておきます」


 豪華な封蝋の施された招待状を三枚受け取り、僕はルンルン気分でギルドを出た。

 あれ? 僕、依頼を受けにきたのに何で出て来ちゃったんだろ……

 でも今更戻るのもなんか恥ずかしいしなぁ。

 それに今はそれどころじゃない、リファネル姉さん達にも早く知らせてあげよう!







「ただいま! 聞いてよレイフェルト姉、リファネル姉さん」


 僕は興奮冷めやらぬままのテンションで、勢いよくドアを開けた。


「あら、私達を置いて何処に行ってたのかしら?」


「ラゼル、出掛ける時はお姉ちゃんに一声かけて下さい。もう少しで探しに行くところでしたよ! まったくもう」


 部屋に戻ると、少しだけ冷たい目を向けてくるレイフェルト姉と、頬っぺたを風船のようにプクッと膨らませたリファネル姉さんがベッドに腰かけていた。

 出掛けたって言っても、ギルドに行って結局すぐに戻ってきたから、そんなに時間は経ってない筈なんだけど……

 それにリファネル姉さんは寝てたし。

 どんだけ心配性なんだこの二人は。


「ごめんね、ちょっとギルドに忘れ物しちゃって、取りに行ってたんだ」


 こういう時は誤魔化すに限る。


「そうなの、私はてっきり一人でもできそうな、簡単な依頼でも受けに行ったのかと思ったわ……」


 く、鋭い……それにこのレイフェルト姉の目。

 多分バレてる……


「そ、そんな訳ないじゃないか。ほら、可愛い弟を疑わないでよ」


「もう、こんな時だけ! で? 何か私達に聞いて欲しいんじゃなかったの?」


 二人にシルベスト王国のパーティーに招待されたことを伝える。

 もちろん勇者パーティが来ることも。




「よかったじゃないラゼル! 貴方、勇者パーティが大好きだものね」


「そうなんだよ、すごい楽しみなんだ!」


「フン、何が勇者ですか! 確かに初代勇者パーティは、魔王を討伐して国に平和をもたらしたかもしれません。ですが今回の勇者は、何年もかけてようやく幹部を一人倒したらしいではありませんか。私ならそれだけの時があれば、とっくに魔王を討伐してます!!」


 相変わらずリファネル姉さんは、勇者パーティに対して対抗心が凄い!

 でも姉さんの場合、冗談じゃなく本当に討伐してしまいそうだから恐い。


「はいはい、貴女はいったん落ち着きましょうね」


 まぁまぁとリファネル姉さんを宥めるレイフェルト姉。


「それで二人にお願いなんだけど、国王様の前では礼儀正しくしてよ?」


「心配しないでも大丈夫よ。流石に国王に失礼な口は聞かないわよ」


「私もよっぽどの事がない限りは善処します」


 僕はその「よっぽどの事」がないことを心から願ってるよ……










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