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17話 贅沢

 


「ただいま~! 私がいなくて寂しかったでしょ? はいお姉さん成分よ。ウリウリ~」


「レイフェルト、あまりラゼルにくっつかないで下さい。ラゼルはあなたがいなくても寂しくありません。私がいますからね」


 ラナ王女様が帰ってから、受付カウンターでシルビーと世間話をしてると、二人が帰ってきた。

 一緒の所をみると、途中で合流して買い物でもしてたんだろう。

 何だかんだいって、やっぱり仲がいいからねこの二人は。


「いいから、そんなにくっつかないでってば、レイフェルト姉」


 僕に頬擦りするレイフェルト姉を、半ば強引に引き離す。


「……あら? おかしいわね、ラゼルから別の女の匂いがするわ……」


 クンクンと鼻を僕に近付けて匂いを嗅いでくる。

 犬か、この人は……


「あら本当ですね。いったい誰の匂いでしょうか?」


「あっ、ちょっ、くすぐったいって! や、やめてってば!!」


 二人して僕に顔を近付け、クンクン、クンクンと鼻を近付けてくる。

 それがだんだんと顔の方に近づいてきて、しまいには首筋まできた。

 首にあたる息がやけに熱く感じる。

 僕、首よわいんだって。

 横ではシルビーが「はわゎ~、ラゼルさんモテモテですぅ」とか言って顔を手で隠してるけど、指の間から思いっきりガン見してる。

 もうちょっとわからないように見ようね。


「だったら何処で誰と、ナニをしてたか答えなさい!」


「そうです! お姉ちゃんというものがありながら……シクシク……」


 興奮する姉二人を何とか引き離してから、僕はさっきの出来事を説明するのだった。

 というより普通に話すつもりだったんだけど、まさか王女様の匂いに気付くとは思わなかったよ……










「へぇこの前の子が、まさかこの国の王女様だったとはねぇ。高そうなドレス着てるとは思ってたけどね」


「ですね。けれど、王族だったのなら一つ腑に落ちない点がありますね」


「なんか気になる事でもあるの?」


「はい。何故、護衛が冒険者だったのでしょうか? それも盗賊に殺られてしまう程度の腕しか持たない。王族ならば間違いなく騎士団が護衛につくと思うのですが」


 言われてみると確かにそうだ。

 なぜ王女様は冒険者を護衛に雇ったんだろうか?

 騎士団が護衛についていれば、あんな事態にはならなかったはずだ。


「それは確かに疑問だけど、私達が考えたってしょうがない事よ。それよりも王女様に、いい物件がないか聞いてみましょうよ! 命を助けたんだからそれくらいはしてもらいましょ」


「ええそうですね。お風呂は大きめのを希望します」


 え~、僕がお願いしなかったら、助けないで素通りしようとしてたじゃないか。


「王女様には今度お願いするとして、今日はパーっと美味しいものでも食べに行きましょう! お金は沢山あるわけだし!」


 それに関しては大賛成だ。

 白いゴブリンを討伐した日は、結局贅沢できなかったからね。

 たまにはお金を気にする事なく、好きなものを好きなだけ食べてみたい。


 満場一致で、今日の夕御飯は贅沢することに決まった。

 ちなみにシルビーも誘ってみたのだが、宿屋の仕事があるからと断られてしまった。

 結構行きたそうな顔してたし、お土産でも買ってこよう。














「うぅ~、調子に乗って食べ過ぎた……」


 翌朝、お腹の苦しさで目を覚ます。

 昨日は結局、随分遅くまで食べて飲んで騒いでしまった。

 まぁ飲んで騒いでたのは主に姉二人だが……それに付き合ってたら、ついつい食べ過ぎてしまった。

 苦しい……


 ベッドから起きようとすると、布団の中でモゾモゾと動く感触が……

 布団を捲ると、当然のようにレイフェルト姉とリファネル姉さんが一緒に寝ていた。


 お金あるならまず、部屋を別々にして欲しいんだけど……

 この前その事をシルビーに聞いてみたら、


「今使ってる部屋の代金を、レイフェルトさんに一月分頂いてます。その部屋以外はちょうど一月先まで予約でいっぱいなんですよぉ」


 とかニコニコと笑顔で言われちゃって。

 流石に一月先まで、あの部屋以外が予約で埋まるなんてないと思うんだ……

 シルビーがレイフェルト姉に買収されたことが確定したのだった。




 寝てる二人の顔を見てみると、昨日あんだけお酒を浴びるように呑んだとは思えないほど、綺麗な寝顔でグッスリと寝ていた。


 ツンツンと頬っぺたをつついてみる。

 女の人の頬ってこんなに柔らかいんだ……ツンツン、ツンツン、ツンツン

 ムニャムニャしながらとても気持ち良さそうだ。

 この寝顔だけみたら誰も、この二人がドラゴンを倒す程の強さを持つ剣士には見えないだろうなぁ……


「ラゼル、いつまで触ってるのかしら?」


 つい夢中になって頬っぺたをツンツンしてたらレイフェルト姉が目を覚ましてしまった。

 リファネル姉さんはまだ熟睡中だ、よかった。

 二人だと二倍面倒臭くなるからね。


「そんなにお姉さんの頬っぺは気持ちよかったかしら? なんならもっと柔らかい所も触っていいのよ?」


 僕を下から見上げるようにして、ドロッとした目でみつめている。

 上に羽織っている寝間着がはだけて、その凶悪なまでの胸がこぼれ落ちそうになっている。

 これは不味い。

 いくら姉のようだと思ってはいても、意識してしまう。


「もう、まだ酔っ払ってるの? 僕は先に顔洗ってくるから、早く酔い冷ましてね」


 何とか平静を装いベッドからの脱出に成功した。

 く、不覚にもドキッとしてしまった。


 あ~、早く一人部屋が欲しい!!









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