表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの場所は、どこにある  作者: ふじこん
3/3

第二話 ラノべ?




           ――――


「……」

「……」


目と目が合ってから、またも沈黙してしまう。が、神岡は勇気を振り絞り、


「そ、その〜……自己紹介でもしようぜ? 互いに素性が分かんねぇのはなんか嫌だろ?」

「……は、はぁ〜」


当の桜井は困惑していた。と、言うよりも恐怖していたに近いだろう。突然声を掛けられたどころか、自己紹介しようなんて言い出す始末だ。それも、ヤクザ顔負けの男がそんな事を言い出すのだから。


「俺は神岡誠也ってんだ。あんたは確か……」

「桜井」


「桜井、司です」


突然、名前をキッパリと名乗りだした。神岡は少し驚いたのか、一度ハッとした表情をしてから、


「司、ってのか。いい名前だな」


神岡は少し笑みを浮かべた。


「そうですか……」


桜井も安心したのか、少し息を吐いて、下を向いた。



「……そういや、その手に持ってるヤツ、何なんだ?」

「え?」


桜井がずっと手に持っていた物、それは本であるのは間違いは無い。表紙には男のキャラの両脇に女性キャラがいる。所謂、ハーレムの様な表紙であった。


「……ずっとどっかに隠してたのか?」

「ええ……まぁ」


少し見られたのが恥ずかしかったのか、またも下を向いていた。


「何つうか、変わった本だな」

「まぁ、そうですね……」


「読ませてくんね?」

「……え?」


神岡の突然の言葉に、桜井は思わず声を漏らした。


「……構いませんけど」

「ありがとよ」


そう言うと、桜井はどこかぎこちない様子で神岡に本を手渡した。


「……“現実で何もかも駄目だった俺が異世界でチートだった件”……? チートってなんだ?」


(えっ……そっから?)


桜井は内心、少し小馬鹿にするかの様な感情が湧いた。しかしそれを表情には出していなかった。むしろどこか微笑ましかった。



「よし、読むぞー」





           ――――



「ど、どうでしたか……?」

「……」


神岡はどこか、気難しそうな表情でラノベを見ていた。


「……まだよく分かんねえや」

「そ、そうですか」


神岡からすれば、それは未知の世界だった。それもそうだ、彼は生まれてこの方、ラノベなんて読んだことも無いのだ。


「……図書館」

「へっ?」

「図書館に、この本の続き……ある気がすんだ」

「ホントですか!?」

「ウオッ!?」


桜井が突然、顔を前に出してきたので、神岡は、後ろのめりになった。


「あ、ああ」

「い、行きましょうよ! あ、明日行きませんかぁ!!?」


(な、なんだよ!? 急に元気になりやがった!?)


(でも、なんだか……いいやつそうだ)





神岡にはどこか、微笑ましくなるような感情が湧いていたのだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ