9 会えない日々
季節は春……
白木蓮は満開で咲き始めた桜ももうすぐ見頃だ、花見も楽しめる時期だというのに、先に送った宝珠へのお伺いの文の返事はなぜかお断り。
宝珠の母君に会うことで宝珠に会えないものかと母へ恐る恐る文を書いても、「無用」との返事。
姫らしく振る舞う事にも慣れてきたと思うし、作法だって今のところ大きな失敗はしていない。
花見の名所でいつもの会でも開いてみたいと言ってみようか。
欄干から足を投げ出しブラブラさせていると、祖父が帰宅したようだ。
菖蒲は祖父の元へとしずしず歩きながら走り出したい衝動と戦った。
宮中では今、父と同じ国の高貴な方が使節として帝に謁見するらしく、お付きの者には騎士もいるとかで親善試合が行われると話題になっている。
「お祖父様、お勤めご苦労様です。宮中のことをお聞かせください」
「菖蒲や、頑張っておるのう。宮中?おお、母親のことか」
菖蒲は違うとばかりに頬を膨らませる。
「わかっておる、異国の客人のことであろう?話さんでも直接会う方が早かろう。ちゃんと招待しておるしの」
光翠国での接待役を引き受け、滞在先として屋敷に招いたのだ。
花見の宴でも開いて歓迎会をすると聞いただけで菖蒲は立ち上がった
「さすがお祖父様だわ、せっかくの宴なら私の新しいお友達を呼んでもかまわないでしょう?」
菖蒲のお願いに祖父は頷き
「それはよい、あちらも似た年頃の子を連れてきておるしの」
さっそく、宝珠と「お友達」に文を送らなくては。
菖蒲は祖父の話を聞き流して乳母の小栗を探して走り出す。
元気な孫娘に祖父は叱るでもなく微笑みながら見送ったのだった。