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18 姫の支度

まだ朝日が顔を覗かせる前の明け方、菖蒲は女官達によってたたき起こされた。

まだ眠気の覚めやらぬ菖蒲を湯殿へと連れて行くと、温泉を張った湯船に沈める。

この光翠国には各地に温泉の源流がある。

もちろん都でも近くの源流から温泉を引いていて、この屋敷にも常に供給されている。

たとえ庶民でも、町や村にある温泉施設が無料開放されているので1日に1度はお風呂に入ることができた。

これは300年前に疫病が流行った折り、「清潔こそ1番の特効薬」と、時の帝によって国の隅々までお風呂の文化が浸透し、この国に住めば誰もが温泉の恩恵を受けられるようになったからだ。

菖蒲はお風呂が大好きだ、けれど女房達に体をこすられたり、髪を洗われたりするのは苦手だ。

体を見られることがとても恥ずかしいからだ。

女房達の手から逃るように湯船へとブクブク身を沈めても、すぐに引き上げられてあちこち磨かれる。

体を清め、髪が乾く頃にはすっかり朝日も登っていた。

白の(ひとえ)に紫の袴を着て、桃色、梔子色(くちなしいろ)黄色、橙色、萌黄色(もえぎいろ)と衣を重ねて羽織る。

成人すれば、正式な場で長袴や()を付けることも許されるようになるが、大抵の場合は袿姿で済ませることが多かった。

そのため、袿の色合わせにはどの姫も力が入っている。

菖蒲がどうでも良さそうに前髪を結ぶ紐に橙色を選ぶと、横では扇に付ける房の色を女房達がああでもないと選んでいる。

顔には薄く白粉(おしろい)を叩いて、唇には艶を出す蜜蝋(みつろう)を塗る。

念の入った準備にすっかり疲れたまま菖蒲は出発した。

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