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16 縁談

小栗の待つ部屋へと戻ると、車の用意が整うのを待つことになり菓子とお茶が出された。

上品な甘さの(あん)を包んだ餅菓子を頬張っていると、初めての宮中に緊張し待っていた小栗は、世話をしてくれた女官が話しかけてくれて親しくなったと嬉しそうに話してくれた。

こちらも無事に役目が終わって母にも会えたことを伝えていると、己の失態に気づく。

縁談相手の素性は分かったけれど、断るつもりでいたので詳しく聞く事をしなかったのだ。

聞きに戻るにも道が分からないし、母も仕事に戻ると言っていたので会えないかもしれない。

縁談相手の冬継という殿方はどういう方なのだろうか。

年齢は?この縁談をどう思っているのか。

どんな人なのか、せめてこっそり顔は見ておきたい。

落ち着かない様子の菖蒲に、小栗は気づかってお茶をすすめる。

「姫様、いかがされました?餅でも詰まりましたか」

口に残る餅菓子をお茶で流し込み、何でもないと答える。

小栗は姫様もまた慣れない宮中に緊張しているのだろうと察し

「緊張なさらなくても、もう帰るところなのですから」

と優しく微笑んだ。

緊張などしていない菖蒲は考える。

ここは宮中の入り口、広くても運が良ければ縁談相手を見れる可能性もあるのではないか。

「ねぇ小栗、近衛府はどのあたりにあるのかしら」

小栗もまた、宮中は初めて来た場所でよく分からない。

「さて、宮中のどこかにあるのではありませんか?」

宮中のそれぞれの場所に入るには位か正式な許可がいる、菖蒲では立ち入ることはできないが、せめて出入りする所を覗けないものだろうか。

名前しか分からない相手では、視界に入ってもそうだと分かるはずもないか。

「そうよね」

ため息をつくと、諦めて屋敷へ帰るために牛車に乗り込んだ。

帰りの牛車のなかで、どうにか縁談を白紙にできないものかと思案するが一向に解決策が浮かばない。

初潮は時期が来れば始まってしまうし、体の変化を遅らせることはできても白紙にはならない。

母に逆らうことも出来ない菖蒲は、縁談が無くなればいいのにと思っていつかの言葉を思い出す。

「……顔を見られたら縁談が来なくなる」

小栗は驚くと、袖で菖蒲の顔を覆う。

「大丈夫です姫様。この小栗がついております」

車の揺れで御簾が乱れ、外の人々に顔を見られたのではと焦る小栗に、そうではないと小栗の手を取る。

「見られてないわ」

菖蒲は小栗を安心させるように微笑むと、母に教えてもらった縁談の話を聞かせた。

「そういえば縁談の相手は中将だそうよ」

母にもっと詳しいことを文で聞いてみようか、冬継に好意があると誤解されて引き合わせられる可能性もあるわね。

今までのように引きこもってばかりでは解決しないことを感じながら、菖蒲は縁談には興味のないふりをしながら情報を集めようと決めたのだった。

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