英雄、眠る丘
翌日の昼過ぎアルタワグナー中央平原の嵐も去り、雲間より一筋の光が差し込むその光の道の先にある小高き丘に眠るは、皇国の英雄バイフォン。
その丘で祈るは皇女リィーファン、花を捧げるは皇子マーシフォンと皇女レインファン、三人の側には蒼の皇宮護衛師団リルフィンとフェンファン。
そこに来るはスミカ小隊長を先頭に1010小隊の面々、彼らは野で摘んだ花々を持ち丘に整列した後スミカは一歩前に出て背筋を伸ばし清んだ声を張り上げ、「捧げ銃!!!」と丘から見渡す遥かなる遠方に届くが如く響き渡る声で、その声を聞いた1010小隊は全員が胸に右手を当て、
そしてスミカが「敬礼!!!」と言い全員が英雄眠る丘に敬礼をした瞬間、天の雲間の一筋の光はやがて広がり光の大河となる、草花の水滴がその光に反射して丘は光で溢れ風が吹くと光は空に綺羅星の如く舞い上がる。
「献花!!!」スミカは最後に祈るように言い、小隊のそれぞれが手に持つ草花を捧げる。
アズマはリィーファンの前に立ち辛い表情を見せながら、「姫さん、信じてもら得ないだろうけど・・俺は、・・・彼を助けようと努力したんだ、」、リィーファンは真っ直ぐアズマを見つめ、「アズマ殿私は信じています、私には翁が自ら命を断ったように見えました、貴方は翁の攻撃を受けても貴方からは決して攻撃はしなかったそれはハッキリと私は見ました、リルも一緒に見ていましただからもう御自分を責めないで下さい。」、振られたリルフィンは一言「えっ?」
アズマは皇女リィーファンの心遣いに少し表情を柔らかくしそれを隠すために顔に手を置く、「ありがとう、姫さん、それと俺の呼び方だけど、・・その・・シンかアズマでいいから。」リィーファンはアズマが名前を呼んでいいと言ってくれた事が嬉しく、「では私はシン様と呼ばさせて頂きます、それと私の事も姫さんではなくリィと呼んで下さいお願いしますねシン様」、アズマはちょっぴり照れて、「じゃ、そう呼ぶよリィ」
それを聞いたマーシフォンは驚いて、「リーン姉さん、その呼び方は、「あなたは、黙ってなさい!マーシ!」、レインファンが慌ててマーシフォンの足を踏む、ギュウ「痛い!・・酷いよ、レイン何で僕の足を踏むのさ!」マーシフォンは口を尖らせてレインファンに怒るがおませなレインファンには敵わず、「いいから、今姉さんにとって大切な時なんだから邪魔しちゃダメなのマーシ!」と大声でマーシを怒る。
リィーファンは二人の会話がアズマに聴こえたため真っ赤な顔になり、「マーシ、レイン!」と堪らず二人の会話を止める。
そんな和やかな様子を見たアズマは、先程迄の緊張が和らぎつい言ってしまう、「その、君達マーシ君とレインちゃんだよね、リィの弟妹だってイシダさんが親切に教えてくれたんだけど、俺てっきり君の子供だと思った。」、右隣にいる整備班の班長イシダは「ちゃうやん、アズマがしつこく聞いてきたんちゃうの!」と雰囲気をぶち壊す。
リィーファンはアズマの勘違いに慌てて、「えっ、私はまだ独身ですから!・・その・・シン様は?」アズマはさらりと答える「うん?独身だけど?」、皇女はその答が嬉しく、「お互いに独身なんですねよかった、シン様これから私達は沢山お互いの事を知って行けるとゆう事ですねぇ。」、さすがにこの皇女の言葉にアズマは顔を赤くしながら「あぁ」
この会話を二メートル離れた右横で聞いていたミヨコは、「なんなんだ、あのバカバカしい初対面お見合い会話は!」、と好きなアズマが皇女に取られそうで内心焦りまくりのミヨコそんなミヨコを見てからかいたくなるゴローは嬉しそうに、「ミヨコさん、ヤバイですねアズマさんを皇女様に取られちゃいますよ。」、この言葉にカチンときたミヨコはゴローをニラミ一言、「お前殴るぞ!!」
そんな和やかな雰囲気とは裏腹に予定が遅れている事を気にしている左横のスミカはちょっと荒い声で、「アズマ悪いが献花を早く済ましてくれ、皇女殿下予定が遅れています申し訳ないんですが、出来るだけ早く此処をたちたいので雑談は後にして頂きたい。」
アズマはスミカの機嫌が悪いのはこの慌ただしい時にノンビリと自分と皇女がイチャイチャしているからだと気づき、頭をかきながら片手に持った花を献花しようとした時リィーファン皇女がその白き花の正体に気付く、「シン様!その花は!・・・『時忘草』」、『時忘草』の名前を聞いてマーシフォンとレインファンもすぐにアズマの手に持っている花を見て驚き、「うそ!」とレインファン、「えっ!本当?・・始めて見た」とマーシフォン。
皇女と二人の子供達が余りにも驚くので逆に驚くアズマ、「うん?・・・皆知ってんの?・・これ、俺の廻りで良く咲くから以前少し取って鉢に入れて栽培していたやつ、皆も見た事ある雑草でしょ?」そのアズマの言葉にリィーファンは驚いて聞き返す、「良く、・・咲くのですか!」、アズマは何言ってるのとゆう困惑した顔で「リィ、この花がどうかした?」と堪らずリィーファンに聞き返し、リィーファンはアズマを直視しながら、「我々にとって、『時忘草』は伝説上の花です、私も絵でしか知りません何故ならばその花は、伝説の精霊、運命の守り手様が愛した人の側にしか咲かないからです!」
「えっ!・・・うそ!」
シンアズマ、時の精霊サラディーネに愛された男、今その贈り物の真実を知る。
1010小隊とリィーファン皇女の一行が丘を離れ中央平原南側の半島南端に向かった数刻後、アルタワグナーのバイフォンが眠る平原に再び夕陽を背にし五つの影が浮かび上がる、中央の影が前に出て花に囲まれたバイフォンの墓を確認する、「ドルガァータは正しかったようだな、ここは父の墓だ精霊様が語っている。」
声の主はバイフォンの一人娘、皇国第七機甲精霊師団長、
『大撃のサリィオリフィン』
白き皇国の軍服に身を包みし美女、金の髪に蒼の瞳、その額にある精霊紋は大地の白黄、手に持つは花束そして酒、付き従うは自ら志願した皇国第七機甲精霊師団独立部隊の四人の部隊長、
サリィオリフィンは墓に花束を捧げながら、「親父殿、良かったなぁ姫殿下が立派な墓を用意してくれた、ここなら春は花が咲き乱れ風は自由に吹き上がり親父殿の好きな花びら舞い飛ぶ光景がたくさん見れるぞ。」
サリィオリフィンは胡座をかきその後ろの四人の部隊長は直立不動、「なぁ親父殿、あんたの受けた命令は兄皇様は姫殿下を殺せ、次皇殿下からは拉致そんなバカげた命令かい。」、彼女は酒瓶の蓋を開け、「それで命を賭けて、姫様を逃がしたのかい、あんたらしいねぇ」
サリィオリフィンは墓に酒を掛けながら更に言葉を続ける、そこにバルハラに行きし父があたかも入るが如く彼女は語り続ける、「兄が妹を平気で殺す命令が出来る悲しい時代だねぇ、そんな悲しい時代が嫌であんたは姫殿下を助けてさっさとバルハラに行っちまったのかい、昔から親父殿は姫殿下が好きだったからねぇ私に殿下を紹介してくれたのもあんただった、あれは・・」、サリィオリフィンの亡き父との会話は続くそれは長い間だ会えなかった親子の会話、限りなく愛する父との別れの言葉、言葉は続きやがて終わりの時が近づくとサリィオリフィンは一時沈黙し再び繋ぐ言葉は「・・それでねぇ親父殿、私にもその勅命がきて更に鬼神を殺せとさ、」
白く透明な酒は大地に落ち、その飛び散った滴は吹いた風で霧となる、サリィオリフィンは風で乱れる髪をかきあげながら、「・・・勝てるかな、・・あの鬼神に・・親父殿、」
彼女は立ち上がり墓を背にして、「だが、我等は勝たなければならない!勝つまでは、生きて戻らず!!」、四人の部隊長は復唱する。「生きて、戻らず!!!」
サリィオリフィン騎乗するは第七機甲精霊師団師団長機、
脚部が大蛇、上部が人形の蛇甲型その特長は四本の腕、右二本に精霊槍、左二本に精霊斧、その一撃は高き鋼鉄の城壁を一瞬に破断する!その名は、
『大撃壊砕ジャンベルネ』
その後ろに続くは部隊長機、
高速誘導の多脚型が二体、脚は十本、
迎撃格闘の大猿型が二体、その特長は太き長きその両腕!
その腕の一撃は大山を破壊する。
今、皇国、第七機甲精霊師団の精鋭が共和国の鬼神討伐に出陣する!!
アルタワグナーの花咲丘に吹くは一陣の風その風は数多の花の花弁を舞い上がらせ、そしてその花弁は荒野に散る。