表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルタワグナー戦記  作者: H氏
シーズン1 皇女慟哭編
4/56

疾風のバイフォン

アルタワグナーの中央平原に嵐が来ようとしていた。


二台目のトレーラーにあるスタッフルームそこにいるのはゴローとコトエ、他のスタッフは気を聞かして彼等二人だけにしていた、二人は中央テーブルに向かい合って座りお互いに言葉を交わさずただ沈黙の時が過ぎる、


最初に口を開いたのはコトエ「ゴロー様」ただ一言、ゴローは堪らず「コトエ!僕を信じてくれ!僕はアズマさんのように成れない!!分かっているんだ!!あの人が別次元の存在である事を!!!でも追い付きたいんだ!!!あの人を追いかけて今迄生きて来た、苛酷なトレーニングにも耐えてきたのもあの人に追い付きたかったからだ!だがあの人は更なる高みへ行こうとしているそれに引き替えなんなんだ僕の情けなさは僕はコトエ!!君すら守る事が出来なかった!!!」ゴローは一気にその胸の内を吐き出し震える両手を握り締めただひたすら机を見続ける。


コトエは立ち上がってゴローの側に駆け寄り後ろからゴローを抱き締める、「分かっています!ゴロー様分かっています!!だから私を置いていかないでください!!!私も連れていって下さい!私も一緒に二人なら、二人ならきっと追い付けます!!!二人なら」コトエは泣いていた。 


ゴローは気づく自分は一体何なんだと!コトエが震えて泣いている何故こんなにもコトエを悲しませているのか!!コトエが叫んでいる二人なら、二人ならと・・・ゴローはコトエの手に自らの手を重ねて「コトエ」と呟いた、


その瞬間、


ファンファンファンファンファン!!!


鳴る警告音スピーカからはミヨコの声が、『精霊機接近、タイブ獣王型!』更にスミカの声が重なる「警戒体制四、『黒竜、白凰』出撃準備!」


ゴローはコトエの手を握り、「行こうコトエ、二人で!」そしてコトエは涙を拭きながらニコリと笑い「はい!」そう答て二人はトレーラーのスタッフルームから手を握ったまま駆け出した、アズマに追い付き追い越すために。




トレーラーの隊長室から外に出たアズマは、胸のボケットから『時忘草』のタバコを取りだし、火を付け「二本めか、けっこう動揺しているな俺」、タバコを口に加え一人呟くアズマの前を、ゴローとコトエが専用巨人機『黒竜』、『白凰』に向かおうとしていた。


『白凰』に乗り込もうとしているコトエに、アズマは声をかける、「コトエちゃん!」コトエはアズマの方を振り向き「アズマさん」アズマの呼び掛けに立ち止まるコトエ。


小雨が降る中を、『白凰』の前で二人は向かい合い、「・・あのさぁ、上手く言えないんだけど、コトエちゃん無理してねぇ?」と心配そうにアズマ、コトエは「・・無理ですか?・・」


「そのう、なんだ、ほらもっとゴロー君信じても良くねぇ、今の彼はたぶん、昔の俺より強いと思うよ。」コトエは一瞬困った表情を浮かべ、「私は、・・わかって・・います、ですがもう大丈夫です私達は二人ですから!」


「?二人?」アズマはコトエの会話が理解出来なかった。


その瞬間、『黒竜』と獣王型精霊機が地響きと爆発音を伴いトレーラーの横わずか十メータでお互いに迎撃を繰り返す!!


バゴゴォォゴォォォゴォォォンン!


インカムからゴローの叫びが!


『コトエ!!!』


「失礼!!」コトエはアズマとの会話を打ち切りその場を離れ『白凰』に向かった。


「二人で一人か・・」アズマは呟く。


獣王型精霊機、獅子の胴部に人形の上半身を持つキメラ型、十年前の皇国の主力機動精霊機、現在の皇国の機動精霊機は多脚型であり、獣王型は旧式精霊機となる。


『白凰』が戦線に参加し一気に闘いは、巨人機有利に傾く、『白凰』の豪矢の一撃が獅子の頭部を撃ち抜き!


赤き精霊液が、豪爆とともに天高く噴き上がり!!


ズガガガガガゴゴゴゴゴォォォォン!!!


所詮、旧式か、アズマがそう思った時、


『アズマ!二人を止めろ!!』

インカムのイヤホンからスミカの怒鳴り声が、


「そりゃ無理だ、隊長」


獣王型精霊機が、ヨロケ、隙を作った瞬間、


『アズマ、皇女が向かった!あれは仲間だ!!』




時は少し遡りトレーラーの客室で言い争う皇女リィーファンと蒼の皇宮護衛師団長リルフィン、ローテーブル越しに向かい合う二人、皇女はリルフィンを問い詰める、「何故襲撃者が誰だったかを報告しないリル!」リルフィンは表情一つ変えず、「皇女とは無関係の軍属でしたから、」、リィーファン皇女はテーブルを叩く!


ダーアァン!!


響き渡る音、びっくりして振り替えるレインファンとマーシフォン変わらない表情のフェンファン、「あの闘いはバイソン翁の右腕『黄牙のガイゲルフォン』だ!リル・・ホンコンで一緒に戦った仲だから私には分かる、巨人機はコアを外した、だから彼は生きているはずだ!!何処に拘束されている!!」


皇女はリルフィンを責めるがリルフィンは動じずただ目を瞑り静かに「・・・皇女を殺めようとした反逆の輩は・・・自害しました。」、蒼白になるリィーファンは囁くように「自害だと・・ガイが自害!」と呟く、


その瞬間、


ファンファンファンファンファン!!!


響き渡る警告音、直ぐに反応する皇宮護衛師団の面々、師団長リルフィンはフェンファンに指示、「フェン、外部モニタを付けろ!」浮かび上がる『黒竜』と獣王型精霊機!驚愕するリィーファンは叫ぶ「あれはバイソン翁の『獣王バルガンゲイヤ』!!」と同時に客室から外へ、リルフィンは「フェン!スミカに戦いを止めさせろ!私は皇女を追うレイン皇女とマーシ殿下を頼む!」と指示して直ぐにリィーファン皇女の後を追うフェンファンは一言「了解」!




『アズマ!二人を止めろ!!』とイヤホン越しにスミカちゃんは叫び「そりゃ無理だ、隊長」と答える俺。


『黒竜』は全てのブーストを全開にし、大剣クサナギを天にかかげ!


「残念、もう終わる、」と俺


雨は雷雨となり、クサナギの赤光は荒れ狂う大地を照らす!!


トレーラーの客室から飛び出る皇女!

皇女は降りしきる雨の中を走る!

続く蒼の皇宮護衛師団長リルフィン!


『黒竜』の赤く光り輝くクサナギが轟音を発し、今、降り下ろされ、


皇女は叫ぶ!「戦いをやめろぉぉぉ!!」


大剣クサナギが獣王型精霊機の獅子の胴を断ち切る!!!


ズバシャシャシャシャシャシャンンン!!!


荒野は、精霊機の噴出する赤き精霊液で染まり!


ズドドドドドドドォォォォンンンン!!

地響きをたてながら、精霊機が崩れ落ちる!


リィーファン皇女は膝を付きながら、

「ぁぁぁぁ、バイフォン!」


アズマは皇女に近付き警戒するリルフィンを無視して、「姫さん、大丈夫だゴロー君はコアを避けた、奴さん生きているぜ。」


精霊機の残骸である人型の腹部のコアが開き、血だらけの老齢な美情夫が立ち上がる。


彼の名はバイフォン、ホンコン戦役の陰の英雄にして皇国、白の近衛師団、師団長!その精霊紋は白翠、二つ名は『疾風のバイフォン』手に持つは碧の精霊剣『雷精のガルリオン』、彼の姿を見た皇女は安堵して「あぁあバイフォンじい」と呟く、しかしバイフォンは『ガルリオン』を抜きその剣を皇女に向けて大地が震える音量で怒鳴る!「皇国を見捨てし、不忠の逆賊が!!!」


驚愕のリィーファンは立ち上がり叫ぶ!「誤解だ!!!違う私は共和国にいる妖精王に合いに、」バイフォンはその声を打ち消すが如く更なる大声で、「黙れ!黙れ!!黙れぇぇぇぇえっ!!!」その剣を凪ぎ払い、


「聞け!闇の精霊の眷属、黒のドルガァータよ!!聞け!皇国の全民よ!!我は男に狂いし共和国に亡命しようとした逆賊リィーファンを討つ!!!」と怒鳴った、


その瞬間、バイフォンは天に舞い上がり、


「バイフォン、聞いてくれ!!!」


轟雷が、リィーファンの切なる声を打ち消し、


宙よりバイフォンはその渾身の一撃を、


『雷精のガルリオン』が皇女の前の大地を抉る!!


バゴゴゴォォォォンンンン!!!


その轟音に隠すようにバイフォンは皇女に囁く、その笑顔、気高く、その瞳は限りなく優しく、「行くのです、信じる道を」


振り返りざま、シン アズマに斬りかかるバイフォン!「この、皇女をたぶらかす、共和国の奸計が あぁぁぁぁ!!!」


アズマは、腰の軍刀カミカゼを起動させ、『ガルリオン』を受ける!


『軍刀カミカゼ』アズマの愛刀、袖口に隠された十五センチの持ち手がアズマの意思で袖口から手に飛び込み、アズマが掴んだ瞬間レーザ片刃が起動し対人族殺傷兵器となる。


軍刀カミカゼのレーザ片刃と『ガルリオン』の精霊雷刃が交差した瞬間、数千の火花が飛び散り、衝撃波が雷雨を草木を、大地を抉る!


バイフォンの千を越える疾風雷撃が、アズマに打ちかかり、


アズマは受ける!受ける!!受ける!!!


「やめろぉ!じじい!!」


アズマは、受けながら叫ぶ!


バイフォンの疾風雷撃が、豪速雷撃に変わった時、


アズマ、たまらず時を遅くする、


その瞬間、バイフォンは瞼を閉じ、『ガルリオン』を下ろす、己の首を軍刀カミカゼの片刃に差し出しながら、


「バカヤロゥ!!!停止!停止!!停止!!!」


あぁぁ!願いは叶わず、時は無情!!


ゆっくりと、片刃がバイフォンの首に迫る、


「止まれえぇぇぇぇぇぇ!!!」


『もう良いのだ、時に愛されし若者よ。』

バイフォンの声が、アズマの時間軸の世界に響く、


「ばかな!!!」


『我には見える、時の精霊にして運命の守り手、サラディーネ様の御姿が、

我は先に行かん、バルハラへ、

皇女を、皇女を頼む! 若者よ。』


「サラディーネェェェェェェ!!!!」


その瞬間、時は戻り、


スパァァァァァァァァンンンンン!!!


バイフォンの首が、天に舞い!!!


平原に降り注ぐ豪雨が! 千を超す落雷が!!


リィーファンの絶叫を隠す!!!


時に、精霊暦2098年、皇国、希代の英雄『疾風のバイフォン』、アルタワグナーの中央平原にて、散る。


それは、『鬼神アズマ』と『亡国の皇女リィーファン』の伝説の始まりだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ