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Book Dive  作者: カオス
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出逢い2

{神崎side}



植物の生い茂る道なき道を、苦労しながらも進んで行くこと数十分。



少し先にこの世界にはそぐわない鉄製の巨大な門らしきものが見えてきた。



門を境に、左右には高い鉄の壁が連なっている。俺たちは一度足を止め、遠くから様子を窺う。



「あれがハンターの村への入り口だよな?」



「うむ。あの門の向こうに私達の目的地の村がある」



「一つ思ったんだが、俺たちこんな格好で大丈夫か? 怪しまれるんじゃないだろうか?」



「大丈夫さ! ――――たぶん」



 この世界の住人がどんな格好をしているのかはわからない。



しかし、学生服を着ている奴は確実にいないだろう。流石に会った瞬間、襲われることはないと思うが――



 ここで躊躇っていてもどうしようもないので、俺たちはゆっくりと門の前まで向かう。



付近まで近づくと、巨大な門の隣に建てられていた小屋から、ゴツゴツとした鎧を身に着けた男が出てきた。



男はまさに狩人といった感じの初老の勇ましい顔つき。



男は手に持っていた槍を此方に向け、鋭い声を上げる。



「とまれっ! 何者だ!!」



 ――日本語? いや、おそらくこれもスキルブックの機能の一つなんだろう。


全ての言葉を日本語に翻訳するくらいわけないだろうから。



 雨宮は両手を上に挙げ、男の前に出る。そしてしたり顔で言い放った。



「私達は怪しい者ではない! ただの通りすがりの夫婦だ!」



 突然のわけのわからない主張に、俺は雨宮の言葉を理解するのに時間がかかってしまった。



「――――おい! ふざけるな。俺たちは夫婦なんかじゃない」



「何を言っているのダーリン? 今まであんなことやこんなことをいっぱいしたじゃない……っ! 全部忘れたっていうのっ!?」



 雨宮は目に涙(勿論嘘の)を浮かべ抱きついてくるのを無理やり剥がし、俺は反論した。



「断じて俺は何もしてない。そもそも俺たちはまだ会って1日もたってないだろうが」



 雨宮はまるで浮気現場に出くわした奥さんのように、ヒステリーな叫び声を上げる。



俺はどうにか止めさせようとするが、ノリに乗っている雨宮を止めることはできず、助けを求めるかのように男に視線を向ける。


すると男は、憮然とした顔で此方を見つめていた。



「何をやっているんだお前らは……?」



「俺たちは本当に怪しい者ではない。化け物に襲われて、こいつも気が動転しているんだ。――お願いだ。信じてくれ」



 俺は雨宮の妨害を受けながらも、なんとか男に弁解を試みる。



すると男は再度まじまじと俺たちを見詰め、口を開いた。



「お前らのようなバカ夫婦が敵ではないと言うことはわかった。――――だが、信用したわけではない。現段階では、お前達をどうするかは俺がが勝手に決めることはできん」



「俺達は夫婦ではない。――いや、なんでもない。それで、俺たちはどうすればいいんだ?」



「お前らを族長の元へと連れて行き、これからのことを決めてもらう。だから、大人しくついて来い。妙な真似をしなければ命は取らない。わかったな?」



 俺は雨宮を横目で確認し頷いた。男は此方に向けていた槍をゆっくりと下ろし、着いて来るように促した。



そして、先ほど出てきた小屋へと歩き出す。俺は小声で雨宮に話しかる。



「お前のせいで危うく捕まるところだったぞ?」



「何を言っている? 私のおかげであの者は私達に害はないと思ったんじゃないか?」



「そうだとしても他にやり方があっただろう― ―。おかげで俺達は夫婦扱いだ」



「なんだ? もしかして恥ずかしいのか? ……ふふっ。私は本当の夫婦になってもいいんだぞ~? ――だけどこれだけは言っておく! 毎月のお小遣いは三万円だぞ!」



「――妙にリアルだな。って、まず誰がお前と結婚するかよ」



 コソコソと話していると、男が此方を振り向き怒鳴り声を上げたので急いで駆け寄った。



 小屋に着くと中に入るのではなく、男は小屋の後ろ側へと回った。



後ろには巨大な門の横に、大人一人入れるくらいの鉄製の扉が取り付けられていた。



「ここから村の中に入る。もう一度言っておくが、可笑しなことはするんじゃないぞ?」



 男は鋭い視線を向け、中へと入って行く。



俺達も鉄製の扉の先に足を踏み入れと、無人で静けさ漂う森が嘘のように、様々な服装を身に着け、賑やかに笑い合う人々が住む村が視界に飛び込んできた。



「ここがユーグの村だ。族長のもとへと連れて行く。着いて来い!」



 雨宮は先に行こうとする男を呼び止め口を開く。


「一つお願いがあるのだが……。私達に何か着るものを恵んでくれないか?」




 男は雨宮の頼みに一瞬顔をしかめたが、人々の視線が俺達に集まっていることに気づき、理解したように首を縦に振る。



「わかった。そんな姿で族長のもとへ連れて行くわけにもいかねぇしな」



 男はそう言って歩き出す。俺と雨宮は周りから突き刺さる視線を避けながら、舗装された道を進んでいく。



前方には大きな一本の道が通っており、その両脇に様々な店が連なっていた。



何処からともなく現実世界と変わらぬ元気な物売りの声が聞こえてくる。



俺は辺りを見ながら言葉を漏らす。



「店や家は木で作られているんだな?」



「そうだな。おそらく、鋼鉄資源はを使用する余裕がないのだろう」



「あの化け物達のせいで活動範囲が限られているってことか……」



 少し進むと目的地に着いたらしく、男が立ち止まり此方を振り向いた。



「さぁ、着いたぞ。ここが族長が住むこの村の集会所――ギルドだ!」



 目に前に聳え立つのは、円形状の三階建ての大きな木製の家。



三段の雪だるまのように一階が一番大きく、三階が一番小さい構造になっている。



入り口の両脇には、村のシンボルのようなものか、肩に大剣を担いだ男の銅像が設置されていた。



俺達は 銅像の間をすり抜け、拠点の中へと入っていく。



 一階は飲食をする場所らしく、円形のフロアの中心には料理や酒を提供する場所があった。



さらにそれを囲むようにたくさん置かれたテーブルやイスには武装をした男達が飲み食いをしていた。



皆、独特の覇気を纏っているように感じられ、おそらくあれがハンターと言う者なのだろうと勝手に納得する。



 ――流石集会所と言ったところか。



「おぉー。いかにもギルドって感じだな? ――あそこを見てみろ。とてもいかつい連中が集まってるぞ! まるで犯罪者の顔だな! ははは!!」



 雨宮は無邪気な笑みでハンター達を指差すので、その声に反応して彼は物凄い目で此方を睨む。



俺は彼女を無視し他人のように振舞うが、必要以上に絡んできたため、いつしか彼女に向いていた視線が全て俺に変更されていた。



「怖い目で狙われているぞ? 何か恨まれることでもしたのか?」



 ――誰のせだと思ってんだよ。それにしてもあいつらはこんな昼間から酒を飲んでいていいのか?



「おい! 何をぐずぐずしている? 早くついて来い」



 男の叱責により雨宮もやっと大人しくなる。



集会所の左右には上の階へ続く階段があり、俺達は突き刺さる視線を尻目に二階へと上がって行く。

 


二階も一階と同様に円形の形をしていて、半円を描くように壁で区切られていた。



そして、たくさんの人が壁に貼り付けてある紙を見つめてがやがやと騒がしかった。



男がその紙について説明してくれた。



「あれは依頼書だ。簡単に言えば、化け物の討伐などが書かれている紙だな」



 そう言うと男は俺達を連れ、ハンターの集まる場所を掻き分け奥に繋がる扉へと進んで行く。



まるで満員電車の中にいるような感覚に陥り、途中何処からか「また奇妙なガキどもか……」 と気になる声が聞こえた。



しかし、込み合っているため、誰が言ったのか特定するのは不可能だった。



奥の部屋へと入ると、数人の女性がせっせと依頼書を整理しているとこであった。



集中しているのか俺達の存在には気づかず、仕事

を黙々とこなしている。



女性は男性と違い、白を基調とした露出度の高い服装をしていた。



 男はいつも通りの事なのか気にすることはなく、隅に設置されているタンスを開く。



中には部屋にいる女性が着ている真新しい女性服が二着と、薄汚れた布の服が一式掛けてあった。



「まずはこれに着替えろ。女の方はそこに着替える場所がある。男の方はここでかまわないだろう?」



 雨宮は服を一着持ち出し移動し、俺も薄汚れた服を試着する。



俺の服は殆ど装飾などは施されていなく、下着のように薄い。



 ――おおざっぱの性格である雨宮でも着替えは長いもんだな。



 そんな事を考えているうちに、雨宮の着替えが終わったらしく着替えスペースから姿を現した。



そして、雨宮はモデルのようにポーズを取りながら言葉を漏らした。



「どうだね私の美貌は? 興奮するだろう?」



 俺は目を見張り、まじまじと雨宮を見つめる。異様な程に似合っている雨宮。



彼女が露出度の高い服を着ると、今にも神秘の世界が露になりそうであ る。



 ――これは服と言えるのか? 俺にはただの下着としか思えないのだが。



「まぁ。似合ってる……かな? 俺は可愛いと思うぞ?」



「ぇっ……」



 俺が褒めたことによほど驚いたのか、雨宮は呆然としたかと思えば、急に顔を真っ赤にして俯く。



そして弱弱しく言葉を漏らした。



「――――――――ぁりがと」

 


「お礼なんていらない。本当のことを言ったまでだ」



 雨宮は恥ずかしさの余り縮みこまった身体を上げ、満面の笑みを浮かべた。見詰め合うこと数秒。



俺はその笑顔にまたドクンと心臓が脈打つのであった。



「ったく……。俺がいる前で何いちゃついてるんだ? 早く行くぞ!」



 男はあからさまにに苛立ちを募らせながら言葉を放つ。



すっかり男の存在を忘れていたため、俺達は急いで制服を仕舞い、部屋を出た。



部屋の外は相変わらず混み合っており、依頼書を取り合って喧嘩する男達も見かけられた。



足早に階段を駆け上がり、ついに族長がいる階へと足を踏み入れる。



三階は他とは異なり静けさが支配していた。中心には大きなテーブルがあり、様々な年齢層の七人の人間が座っていた。



皆厳しい表情で依頼書のような紙に視線を落としている。



一番奥に座る老人は、特に鋭い目つきで紙を凝視していた。



「ここで待て」



 警備兵は俺達に指示を出し、一番奥に座る老人の元へと向かった。



おそらくあの老人がユーグの村の長なのであろう。



「神埼。あの老人どこかで見たことがあるような気がするんだが……?」



「そうか? 俺にはまったく見覚えがないが?」



「きみに聞いたのが間違いだったよ。うーん……。気になるなぁ」



 雨宮は腕を組み唸りだす。俺はそんな彼女を放置し周りを見渡すと、部屋の壁には様々な武器や防具が飾られていた。



どれも見たことのないような武器だらけである。中には自分の背丈よりも大きな剣も飾ってあった。



「おいお前ら! こっちに来い!」



 族長であろう人物の元へと行っていた男が俺達を呼ぶ。



相変わらず唸り続けている雨宮を置いて、イスに座る連中の視線を浴びながら向かった。



俺が彼女の様子を伺うために後ろを振り向くと、子供のような無邪気な声が部屋に響いた。



「 わかったぞ神崎! あの銅像のおっさんだ! いやー。予想以上に老けていてわからなかった。アハハ。やっとモヤモヤから開放されるよ。すっきりすっきり!」



 ――あの馬鹿。今の俺達の状況を忘れたのか? しかも族長の悪口まで……

 


 凄まじい視線が突き刺さる中、びっきりの笑顔を浮かべ此方に駆け寄って来る雨宮。



そして惚けた表情でこう言った。



「何故みんな喋らないんだ? まさか……神崎。なんかやったのか?」



「お前絶対わざとやっているだろ?」



「――――ん?」



 ――まさかの天然なのか? ありえない――いや、これが天然と言うやつなのだろうか? まったくもって興味もなかったが女の子の性格について勉強するべきだったろうか?



 男は、冷や汗を垂らしながら一度喉を鳴らすと話を再開する。



「お前達! この方がユーグの村の族長であるユルグ様だ!」



 俺達も軽く会釈し、真っ赤な鎧を身に着けた白髪の老人――ユルグを見据える。



彼は獰猛な光を帯びた目を此方にに向けた後、覇気の篭った声で話しだす。




「――なるほど。あの連中よりは出来そうじゃな。おぬしらがわしらにとって害になるかならないか、今の段階では見極めることは出来ん。――そこでじゃ。見たところおぬしらは不思議な力を持っているんじゃないか?」



 ――あの連中? それにこいつは何故俺達の力のことを?



 雨宮が眉を潜めながら疑問を口にする。



「たしかに私達はおじさんが言う通り不思議な力を持っている。しかし、何故わかった?」



 雨宮の言葉遣いに男は注意したがユルグが手で制止し、返答する。



「ただの直感じゃ。わしらのような狩人は何時でも相手の心を読まねばならん。戦いに勝つには最初にどれだけの情報を読み取れるかじゃからのぉ?」



「――ふん。そんなものなのか? まぁ、いい。それで私達はどうすればいいんだ?」



「そうじゃのぉ。おぬしらはモンスターが凶暴化しておるのは知っているじゃろう? 実はユーグの村から少し東に行った場所に大きな湖がある。


わしらはそこから生活に必要な水を引いているんじゃ。しかし、最近になって水が流れてこなくなったのじゃ。そこでハンターを数人湖に送り、状況を調べさせた。


すると、異常なまでに凶暴化した巨大な化け物 が湖に住みついていることがわかったんじゃ。さらには

村まで続く水路が壊されていることも……」



 ――そうか。族長は俺達をこの村に入れる代わりにその怪物を倒して来いってことか



「そこでじゃ。おぬしらにはその化け物を討伐してほしいのじゃ」



 ――やはりな……。



 

雨宮は指を唇に当て、考え込むように黙り込んだ。


暫くの間雨宮は族長の目を見詰め、俺の意見も聞かずに肯定の意を込めて頷いた。



「わかった。私達に任せてくれ。――だが一つ頼みたいことがある。いいか?」



「どんな頼みだ? 言ってみろ」



「その湖を討伐するにあたって武器が欲しい。それと湖まで案内してくれる人を一人用意してくれ」



「そんなことなら直ぐにでも用意しよう。ウッド頼んだぞ?」



 族長は警備兵の男――ウッドに俺達を手伝うように命令した。



彼は嫌そうな顔をしたが、族長の命令を拒否するわけにはいかないらしく渋々頷いた。



 ――この男の名前を聞くのを今まで忘れていたな。まぁ、今聞けたからいいか。



「お前らいつまでもグズグズしているんじゃねぇ! 早く行くぞ! ――――ったく」



 話は終わりらしく族長は既に手元にある紙に視線を戻していた。



俺達は彼に軽く会釈した後、ウッドと共に来た道を引き返した。



そのため、族長であるユルグの「今日だけで四人目か……」 という独り言が俺達に聞こえることはなかった。





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