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Book Dive  作者: カオス
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最後の選択2

{一ノ瀬side}



目の前にはギリス政府の最高幹部の一人。コードネーム『ファイ』の名が与えられた男。



私は雨宮さん達が立ち直ったのを見て安堵の息を吐いた。



「よかった……。それでは私達も行きましょうか獄道さん?」



「そうですね。相手も相手ですし――――」



 本部から逃げて来た隊員達と合流した後、私達は思惑通り奇襲をかけ、今の状況に至る。



プロトポロスのメンバーであったゼウスさんの命を懸けた戦いにより、ギリス政府の戦力は大幅に削られていました。



なんとたった一人で幹部達を多く倒したというのです―――。



「最高幹部――不死身のファイ……。あいつは厄介ですよボス? しかもまだ子供だ――」



「わかっていますよ。ですが甘く見てはいけません。殺るしかないのです。これは戦争――。例え子供でも――。行きます? 


全てを囲いし陣の技術。己を凌駕するほどの円を生成する力を我に与えよ! 能力――封印されし陣の技術ブランチ スキル!!」



 私の身体からBDエネルギーが溢れ出し、背後に四つの魔方陣が造り出されていく。



私の能力は背後に作り出された陣を使用する。



陣にはそれぞれ効果があり、攻撃の陣、防御 の陣、召喚の陣、封印の陣の四つだ。



 隣でも獄道さんが能力――異次元のディメンション ロードを発動させていた。



そして手には巨大な斧が見える。獄道さんの能力

自体は戦闘に向かない補助の能力だが、彼自身の戦闘スキルは恐ろしい程高い。あの斧も相当な代物だ。



 敵は私よりもはるかに年下の少年。彼はポケットに手を入れたまま此方を無表情で見ていた。



背後から召喚の陣を前に出し、陣の中に手を入れて引き抜く。すると、中から金の装飾が施された武器が現われる。



「ジョワユーズ――――。かつて伝説の剣と言われた武器の一つです。獄道さんは右から! 私は左から行きます!」



 私達は回りこむようにしてファイに突っ込む。そして、左右から全力で振るった武器がファイに迫る。



しかし、ファイは避けようとはしなかった。ザクザクザクザクッ――――。



私のジョワユーズと獄道さんの斧がファイの身体を切り裂く。飛び散る鮮血。ファイの身体は三等分され、無残に地面に転がる。



私達は様子を窺いつつ後退する。



「やったか!?」



「どうでしょう……? 奴は不死身と聞いていますからね――――」



突如として異変は起きた。三等分にされたファイの身体から流れていた血がまるで逆再生されているように身体に戻っていく。



身体もお互いに接合し合い、ほんの数十秒で身体は完全に修復されてしまった。彼は無表情で此方を見る。



「まさか――。本当に不死身なのか……?」



「何か必ずトリックがあるはずです――。彼もまた普通の人間のはず。必ず攻略方法があるはずです!」



 私達が動き出す前に、ファイは此方に向かって走り出していた。しかし、予想よりはるかに遅いスピードで彼を見失うことは皆無であった。



彼は小さな拳でなんの仕掛けもないパンチを私に向けて打つ。その攻撃を反射的に避け、がら空きの身体にジョワユー ズを水平に振るった。



 鮮血が空中を舞う。私は続けざまに蹴りを入れ、上半身、下半身を左右に吹っ飛ばした。



彼の身体から出た血は先程よりも速いスピード

で身体へと戻る。しかし、今回は切り離された半身が接合することはなかった。



代わりに裂けた部分に膨大なBDエネルギーが集まり、残りの半身を急速に生成していく。



 そして――――――彼の身体は両方とも完全に修復され、目の前には二人のファイが此方を無表情で見詰めると言う異常な光景を造り出していた。



二人となった彼は初めて口を開き、見た目どおりの幼い声が響く。




「僕を殺すことはできないよ? だって僕は不死身だもん――――」



 二人のファイはそう言うと、片手を私達に向けて突き出す。そして再度言葉を漏らした。



「実は魔法が使えるんだ。僕をいじめるおじさん達なんて燃えちゃえ……。火炎魔法――炎の息吹」



「まさか! あいつは普通の人間にして魔力に目覚めたというのか!?」



 ファイから放たれた炎が迫る中、獄道さんの声が響いた。私は即座に目配せし、守るようにして前に出る。



「防御の陣発動!!」



 私は獄道さんを囲うようにして魔法陣を肥大化させ地面に描く。すると、陣から透明な半球が私達を包み込んだ。



そして迫り来る高濃度の炎を防ぐ。



「ボス大丈夫ですか?」



「はい。このくらいの威力ならば余裕です。それにしてもまさか魔法を使用できるとは――」



「やはり最高幹部だけはありますね。――これからどうしましょうか? 奴は不死身なうえに魔法も使えるとなると……」



「弱気になってはいけませんよ?」



 弱音を漏らした獄道に私は鋭い言葉を放つ。



「いえ。そんなことはありませんよ! しかし、不死身のトリックを解明しなければまずいですよね?」



「そうですね。今の ところ奴を封印するのが一番の策でしょうか」



「それならばこれ以上分裂させるわけにはいかないですね……」



「大丈夫です――。分裂の方はなんとなくですが、法則が見えてきましたから」



「それは本当ですか!?」



 私が微笑みを浮べ頷くと、獄道は目を見開いた。彼にその方法を教えると、彼は深く頷き、作戦に乗ることを承諾してくれた。



 ファイの魔法は徐々に勢いが弱まっていった。私の指示通りに獄道さんは能力を発動させ、ファイの背後へと移動した。



そして、攻撃が終わった瞬間を見計らい、斧で二人同時に切り裂いた。



すると、切り裂かれファイの身体はまた接合していくが、今度は新しいファイが生まれることはなかった。獄道さんは感極まった声を出す。



「ボスの言う通りですね!!」




「そのようですね! 彼は自身が攻撃を行っている最中に体が傷つけられた場合、急速に回復しながら新しい固体を生成するようです。今の彼みたいに――。


ならば、攻撃が行われてない時に傷つければどうなるか実験してみたのですが……、思惑通りになりましたね。まぁ、不死身の解決策は見つかってないんですが――――」



「これなら簡単に倒せますよ! 私が切り裂いた後にボスが封印すれば!」



「そうですね……。それでは頼みますよ!」



 ファイは完全に身体が修復すると、幼い声を上げる。



「またおじさん達は僕をいじめるんだ……。やめてよっ! 氷魔法――大吹雪!!」



 突如としてファイの身体を中心に大量の雪が舞い出し、地面を凍結させながら此方に襲い掛かってくる。



「貴方だけが魔法を使えるとは思わないで下さいよ……。攻撃の陣――風!! 二重展開!!」



 背後に展開していた攻撃の陣を二枚に増やし前に出す。そして、魔方陣からは強風が放出された。



ファイの吹雪と強風が衝突し合う中、獄道さんは能力を使用し、再度ファイの背後に移動した。



しかし、二回目という事もありファイは即座に彼に向けてさらなる魔法を放つ。



「火炎 魔法――狼炎獣!」



 ファイを守護するように炎で生成された狼が何匹も出現し、獄道さんに一斉に襲い掛かる。



私は即座に防御の陣を彼の元で発動させた事で狼の攻撃は透明なバリアに阻まれた。



その隙に彼は斧をなぎ払った。それを見たファイは怒りを露にする。



「――――もう僕は怒ったよ! 僕のとっておきの魔法で倒すもん!! 究極光魔法――太陽光線シャインニング・レイ!!」



 ――まずいっ! すぐに防御の陣を展開しなければ……!



 刹那、暗雲が立ち込めていた空から光が溢れ出した。



「防御の陣発動! 九重結界――陣神の守り!!」



 私と獄道さんを透明の半球が九枚重なって包み込む。空からは眩い光が溢れ出し、高濃度の光線が私達に向けて落ちた。



そして――――――




舞い散る砂塵。全身に感じる疲労と痛み。



ファイの攻撃をなんとか防ぎきったのはいいが、獄道さんの方にBDエネルギーを多めに使用したため、私は多大なダメージを食らってしまった。



「くっ――。はぁ、はぁ……。獄道さんは大丈夫でしょうか……?」



 突如目の前に現われる獄道さん。



「――――ボス! 大丈夫ですかっ!?」



「はい。なんとか……生きていますよ」



「何故こんな大怪我を――。まさか! 俺を庇ったんですね!?」



「当たり前でしょう? 私は貴方達を守る責務があります……。リーダーとはそう言う者です――」



「くっ………………後は俺が殺ります。ボスは休んでいてください。――絶対に死なないでくださいよ? ボスなんですかね……」



「――――――わかりました。封印は任せなさい」



 獄道さんは片手に斧、そしてもう片方に銀色に輝く盾を出現させる。



 ――彼も本気のようですね。あれは一対一の時に出現させる盾。



 前方には荒い息を吐くファイの姿が見て取れた。不死身だとしても疲労は感じるらしい。



獄道さんは即座に彼との距離を詰める。もう一人のファイが炎の魔法で迎撃をしてくるが、彼は盾で防御しつつ 斧をファイに振り下ろし、真っ二つにした。



さらに能力を発動させ、切り裂いたファイを私の元へ移動させて声を張り上げる。



「ボス!! そいつを頼みます!!」



「――いいでしょう。――――封印の陣発動!!」



 真っ二つになったファイの地面に紫に輝く魔方陣が出現する。



そして、その魔方陣から何本もの鎖が現われ、彼に纏わり付いた。



メキメキと音をたてながら縛り付ける鎖。



「きみみたいな子供が何故こんな世界で戦っているのか、私にはわからない。――だけど、これ以上きみを悪人にするわけにはいけないんだ。許してくれ――。陣封印――――五式。悲しみの鎖!!」



 眩い紫色の光が魔方陣から溢れ出し、その光が消え去るとそこには既にファイの姿はなかった。



私は声を振り絞る。



「獄道さん!! やりましたよ―――。獄道……さん?」



私の視界に移ったのはボロボロになった獄道さんと、何時の間にか数え切れないくらい増えたファイの姿――。



今もどんどん数が増加していた。獄道さんの斧は砕け散り、盾も原型を留めきれていない。ファイの幼い笑い声が響く。



「――やった! やったよ!! ギリスさんの言っていた通りだ!! 僕の能力が進化したよ!! ギリスさん!」



 私はファイが興奮している隙に防御の陣を呼び出し、彼を守るように発動させた。



 ――能力の進化ですって!? あの話は本当だったのか!? それにまさかこんな時に起きてしまうなんて……。どうすれば――



 獄道さんはなんとか立ち上がり此方に振り向いた。そして、口を動かした。



声は聞こえないが、彼はたしかにこう言った。



『今までありがとうございます――』と。



 私は彼の言葉の意味を即座に理解し叫んだ。



「獄道さん! やめてください!! 獄道さああぁぁぁあんん!!!!」



 彼の身体中から膨大なBDエネルギーが溢れ出す。そのエネルギーは周りの数十人のファイをも包み込み、そして――



「能力発動――異次元のディメンション ロード。閉ざされた世界(ロック オブ ワールド) ――――」



 刹那。彼と共に数十人のファイは一瞬にして私の視界から消え去った。



 ――閉ざされた世界(ロック オブ ワールド)。獄道さんから聞いた事があります。これは彼の最後の手段で、全BDネルギーを使用することで可能になる技。



出口のない異次元への扉を生成し、自分もろとも相手を引きずり込む能力。一度その世界に入ってしまえば決して出ることは出来ない――。



「――――くそっ……。くそおおおおおおぉぉ!!」



 溢れ出る大量の涙は地面を深く湿らせる。光のない戦場には私の悲しみに溢れた雄叫びが響き渡った。




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