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Book Dive  作者: カオス
22/28

全面戦争の開始4

{神崎side}


俺達は地下室を出た後、敵のいなくなった城内をくまなく探索した。しかし、雨宮の姿を見つけることは出来なかった。



最後に城外を見渡すために城の頂上部の部屋へと来ていた。



 高級感溢れる内装の一室を抜け、もう一つの部屋に移動する。



そこはまるで図書館のように膨大な量の本が敷き詰められた部屋が広がっていた。



「何か情報があるかもしれない。其々探してみよう」



 俺達は各自たくさん並べられた本棚から抜き取っては戻し、抜き取っては戻しを繰り返していた。



「科学とは何か――。魔法の種類――。倫理と哲学――――。わけのわからない本ばかりだな……」



「――神崎先輩! これ見てくださいよ!!」



「りくちゃん何か見つけたの??」



「これを………………」



「神崎大翔の実験記録? ――――なんだこれは?」



 鈴が首を傾げながら口を開く。



「大翔さんと同じ名前の人だっていますよ! まずは中を見てみましょう」



 俺達は葛西が見つけた奇妙な本に視線を落とし、恐る恐る中を開いた。本の中身は題名通り、神崎大翔と言う人物について書かれた日記のような中身だった。



しかし、途中から何も書かれていない真っ 白なページが続く。そして、最後の1ページを開いた瞬間―――――



「――なんだ!?」



「うわっ…………!」



「りくちゃん! 大翔さん!!」



 刹那。本は凄まじい輝きを放ち、俺達の悲鳴と共に視界は一瞬にしてホワイトアウトした。身体は浮遊感に包まれ、景色は移り変わっていく。



この感覚はまるで小説の中にダイブしたような感覚――。そして、足が地面に付くのを感じると同時に目を見開く。



すると、目の前に写る一人の男――。彼は俺達に気が付くと言葉を漏らした。



「まさか此処まで来るとは……。神崎大翔君」



「あんたは……? うぅ――。うはぁ……」



 目の前に立つ男を見た瞬間。何故か俺は急激に息が出来なくなる。



俺は葛西と鈴に支えられながらなんとか立ち上がり、目の前の男を見た。



「な……何をした!?」



「何をしただと? 私は何もしていない――。おそらく昔の記憶に反応したのだろう」



「――昔の記憶だと!?」


「そうだな……。君は知る権利があるか――。だが、お仲間の二人には退出を願おう」


「なんだとっ!?」




葛西が必死に叫ぶ中、目の前の男は何時の間にか握っていたスキルブックを掲げる。



すると、俺を支えていた葛西と鈴の全身が輝き出し

、次の瞬間にはこの場から完全に姿を消失する。支えを失った俺は床へと崩れ落ちる。



「――てめぇ! 二人を何処にやった!?」



「安心しろ。君のお仲間は此処に来る前の図書室に戻しただけだ」



「――くそっ! ――お前はいったい何者だ!? ……まさか、お前がギリスか!?」



 胸の苦しみは徐々に和らぎ、俺はなんとか立ち上がりながら叫ぶ。すると、男は浅いため息を一つすると、こう言った。



「きみは真理奈から何も聞いていないのかね?」



「まりな……? 雨宮のことか!? 何故お前が雨宮の事を知っている……!」



「そう熱くなるな。――――なるほど。どうやら君にかかっていた支配もずいぶんと解放されているようだな」



 ――こいつはさっきから何を言っている? 俺の名前に雨宮の名まで知っているなんて……



「俺の質問に答えろ! お前は誰だ? 何故俺と雨宮の名を知っている?」



「わかった。わかった。一つずつ答えてやる。まず初めに、私の名は――渡辺。そして、何故君と真理奈の名を知ってい

るだが――私は真理奈の父親だ。


そして、きみに昔会った事がある。だからきみ達の名を知っている。――理解したかね?」



 ――この男が雨宮の父親……! それに俺は昔会っているだと?



「どうやら信じていないと言う顔をしているな? まぁ、仕方ないか。きみと会ったのはきみが生まれて直ぐの事だったからな。


覚えていないのも無理ないだろう。だからと言って証明はできんな――」



「雨宮の父親って言うのはどうなんだ?」



「それなら――――」



 男は隣にあった机の上から一冊の本を取り出す。俺が手渡された本を恐る恐る開くと、中はたくさんの写真が貼り付けらているアルバムだった。



「これは……雨宮か?」



「そうだ。それは真理奈の幼少期から今に至るまでの写真だ。――これで信じてくれたかな?」



 ――たしかに今の雨宮の写真もある。本当にこいつは雨宮の父親なのか――? まてよ……! そう言えばあの時見た腕輪のイニシャルはたしかM・W――――。あれは渡辺真理奈って事だったのか……!



「――わかった。お前が雨宮の父親だということは認めよう。しかし、まだわからないことが多すぎる。支配とはなんだ? 


お前は何故雨宮を置いてまでこんな世界にいる? ――お前は敵なのか?」



「はぁ……。質問が多いな。まぁ、あいつの息子だ。きみには真実を聞いた上で判断して貰うしかないな……」



「あいつの息子? ――――俺の父親の事を知っているのか?」



「知っているも何も奴はこの世界を共に見つけた仲間であり、親友でもあった」



「俺の父親がお前と一緒にこの世界を見つけただと……!?」



「そうだ。40年前、私ときみの父は共に科学者として政府に勤務していた。そんな時、ある場所でこの世界の原点とでも言われる本――支配者の本。


またの名を始まりの本を見つけた。それによって私達は日本政府にこの世界の調査 の任務を与えられた」



「――まさか、お前も元プロトポロスのメンバーだと言うのか?」



 渡辺は俺の言葉に頷く。



「プロトポロスのメンバーはギリスによって全員殺されたはずじゃないのか?」



「たしかに殺された……。私達もその殺人に加担したんだ――。当時、私と私の妻、そして君の両親は既に君達を身ごもっていた。


それに私と私の妻はダイバーで、コードネームはウラヌスとガイア。そのためギリスは私達にも決起の声をかけてきたのだ。


私達は断ることだ出来なかった――。私達は君達夫婦も助けることを条件として裏切りに加担した」



 俺は渡辺の言葉を一言も聞き漏らしまいと意識を集中させる。



「しかし、それが地獄への始まりだった――。私達は日本政府に追われる身となった。暫くして私の妻と君の母親は君達を生んだ。


そして君の両親は政府の連中のよって殺され、私の妻も同様に政府の人間によって自殺に追い込まれた」



「俺の両親が政府に殺された……?」



「――そうだ。裏切り行為の復讐としてな」



 ――本当のことなのか? 正直、両親の事はまったく覚えていないため、殺されたと言われても他人事のようにしか思うことが出来ない。



「きみは真理奈から何処まで話を聞いてる?」



「あるダイバーが現実世界を造り変えようとしているっていう話しか?」



「その様子だとそのダイバーが誰とまでは聞いていないようだな?」



俺は一抹の不安を抱きながらも頷く。



「――――そのダイバーが私だ」



「なんだと……! お前が!? ――ギリスじゃないのか!?」



「ふん。奴がどう考えているかは私もわからん」



「何故だ? 何故……お前は現実世界を? ――――まさか、自分の妻を殺されたから?」



「そうだ。可笑しいか? 俺には彼女が全てだった。彼女のいない世界なんてなくなった方がいいと思っていた……。妻を殺した世界なんて存在しても意味が無いと思っていた。お前にはわからないだろう……」



 渡辺は悲しそうな表情をすると天井を仰ぎ見る。



「さっきからまるで過去の事を話しているようだが?」



「――――あぁ。私の決意は簡単にも変わってしまった よ。真理奈に会った瞬間にな……。神崎君着いて来たまえ」



 そう言うと背後の扉を開け、中へと進んで行き、様々な花々が咲き誇る部屋へと到達した。



中心には真っ白なベッドが設置されており、見慣れた姿が視界に移った。



「あめみや……? 雨宮!!」



 ベッドに寝ていたのは捜し求めていた女性――――雨宮真理奈だった。俺は慌てて駆け寄ると、俺の声に気がついたのか彼女は身体を起こし、こう言った。



「――あれ? しんざき……。そんな泣きそうな顔してどうした?」



「お、おまえ……! この野郎!! どれだけ俺達が心配したかもしらずに!!」



 雨宮のもとぼけた言動に俺は怒りを露にして叫ぶ。すると、彼女は何時も見せる太陽のように眩しい笑顔を見せた。



俺はそれを見ただけで心が落ち着き、全てがう上手く行くような気持ちにさせられる。



「――真理奈起きたのかね?」



「ん? あっ……! 父さん!! また私を眠らせたな!!」



「ははっ。すまないね。神崎君と二人で話がしたかったんだ」



「そっか……。それで神崎は聞いたんだな? 私の父親が世界を造り変えようとしていた張本人だって……?」



 雨宮は哀しみを帯びた目で見る。



「あぁ。だけど、雨宮の説得のおかげで気持ちが変わったんだろ?」



俺は雨宮と渡辺二人に向かって問う。



「そうだ。恥ずかしながら私の長年の野望は娘によって簡単に崩れ去ってしまったよ……」



「父さん……」



 渡辺は俺達に背中を向け、ドアの方へと向かう。それは現実世界を滅ぼそうとする悪人の姿ではなく、父親の優しさに溢れた大きな背中だった。



「私は少しやらなけばいけないことがある。後は二人で好きなようにしてくれ。――――心配するな。私の決意は決まった」



 渡辺そう言って俺達の前から姿を消す。雨宮に視線を向けると、彼女は顔を火照らせこう言った。



「たすけっ……。――助けに来てくれてありがとなっ!!」



「当たり前だろ? お前は俺達の仲間だ!」



 俺が笑みを浮かべると雨宮も元気な声を出す。



「そう言えば鈴と りく君はいないのか? あと戦争はどうなった??」



「待て待て。俺も聞きたいことがあるんだが?」



「そうだな――。ならお互いに質問しよう。最初は私からだからな! 鈴達はどうしたんだ?」



「鈴達はお前の父親に他の小説の中に飛ばされた。だが、無事だろう。次は俺だ。――何故今まで黙っていた?」



「何度か言おうと思ったんだけどな、タイミングが合わなかったんだ。すまない――――」



「そうか……。まぁ、落ち込むな。戦争はどうなったかだったよな? 戦争は今も続いている。俺達は人質救出任務に当たっていたから詳しい戦況はわからないが」



「――やはり戦争は止められなかったか……。でも、きみ達が無事でよかったよ! 本当に……!」



 俺が雨宮の頭を撫でると彼女は上目遣いで此方を見た。



普段は見せない甘えた表情に俺の心は今まで感じたことのない気持ちにさせられる。



何故だか彼女の可愛らしいピンクの唇に目がいき、無意識に俺は彼女の唇に自身の唇を――――。



「うわあああああああああぁぁ」




突如として別室から聞こえた悲鳴。その悲鳴の主が誰だかわかると、雨宮は俺の元から離れ一目散に駆ける。



彼女が寝ていた場所を抜けて俺が先程現われた部屋へ通じる扉を開ける。すると――――その室内には悲惨な光景が広がっていた。



「と……うさん? 父さん!! どうしたんだよ! とうさあぁぁん!!」



 雨宮は泣き崩れ、血まみれになった渡辺を抱き抱える。数分前まで恥ずかしがっていた男の体からは今は血が溢れ、雨宮を染めた。



俺は何が起きたか理解することが出来ずに、呆然と立ち尽くす。



「――とうさん! 死んじゃ嫌だ! お願いだ……! 目を覚ましてくれよ! 父さんっ――! くそっ。止まれ! 止まれ! 止まれよっ……! くそおぉぉ!!」



 なんとか渡辺の血を止めようと彼女は自身の服を破る。すると、抱きかかえられていた渡辺の震える手が雨宮を制止した。



「まりっ……な。もういい――」



「父さん……? ――生きてるぞ! 神崎!! 何かないか! 何か!?」



 俺は必死に周辺を探し回る。しかし、回復できそうな物は見当たらない。それでも必死になって探す。そんな俺を見て渡辺が口を開いた。



「無駄だ――。もう… …私は………………」



「うるさい! なんとしてでもわたしが……! だから黙っていろ!!」



「ありがとう……。わたしは…………もうっ――――。これで母さんのところに……いけるっ……………………」



「ふざけるな! せっかく……会えたのに!! あんたは大好きな娘を置いて先に行くって言うのか――!? おい! 父さん!!」



  雨宮は声を張り上げ、彼は虚ろな目で雨宮を見つめ言葉を漏らした。



「君は生きるんだ……。神崎君――。頼んだよ………………」



 渡辺の言葉に俺はただ頷くことしか出来なかった。そして彼は――――――――



「まりな……。最後に君に会えて本当に……よかった――――――――」



 最高の笑顔を浮べ、雨宮の手の中で息を引き取った。彼女はまるで時が止まってしまったかのように動かない。




俺も同様に彼女に対して何をしてやることも出来なかった。



 どれくらいの時間が経過しただろうか。一分、十分。いやもしかしたら一時間かもしれない。



彼女は依然として動かない。ただ顔を俯かせているだけ。



俺は何度も飲み込んでいた言葉をどうにかして吐き出す。



「あめみや……?」



「…………………………」



返事は無く、俺の言葉は虚空へと消える。静寂が全身に重苦しく圧し掛かり、再度言葉を口にしようとした瞬間、彼女は突然フラフラと立ち上がりこう言った。



「――――神崎。父さんを殺したのは誰だ?」



「………………わからない」



「私にはわかる――」



「だれだ……?」



「ギリス政府のボス――――ギリスだ」



「なぜ……そうだと?」



 彼女は視線を渡辺に落とした後、低いトーンでこう言葉を放つ。



「父さんが死んだ直前。脳内で父さん声がした……。そして、言っていたんだ。ギリスには絶対に手を出すなって――。父さんを殺したのは――――――ギリスだ」



「――――――――」



 雨宮はそう言うと此方を振り向く。俺は彼女の表情を見て絶句した。彼女は無だった。



まるで感情が欠落した人形のように無表情の顔。悲 しみに暮れてるわけでもなく、怒りに支配されているわけでもない。



彼女は何処を見ているかわからぬ目でこう言った。



「ギリスを殺す。行くぞ神崎………………」



 雨宮は背を向け歩き出す。その姿からは何も感じ取る事が出来ない。俺は何もしてやれることが出来なかった――――――。





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