全面戦争の開始2
{高崎side}
目に前にはそれぞれ片方の手に小説を、もう片方にスキルブックを持ったプロトポロスのメンバー達。
「――それでは行って来ます。ゼウス部隊とアポローン部隊は俺と来い。ポセイドン部隊は敵の第二拠点へと行ってくれ。
アフロデーテ部隊は此処で防衛を任せる。――わかったなお前ら? 必ず奴らを潰すぞ!」
皆、決意の篭った瞳で力強く頷く。そして、それぞれ始動語を唱え白い光と共に姿を消していった。
「俺達も行くぞ!」
『ダイブ イン オリンポス』
有能なエスポワールの科学者により、ギリス政府の本部が置かれた小説のプロテクトを解除することに成功した。
今回の戦争の目的は人質の解放と一ノ瀬は言っていたが、正直俺達には関係ない。
俺達の目標はギリス政府の壊滅――。それだけだ。そのため、ポセイドンには奴らのナンバー2がいる拠点へと向かわせた。
視界が元に戻ると予めポイント設定しておいた洞窟の中に出現する。
即座にその場に仮拠点を整え、ポセイドンとアフロデーテからの通信を待つ。少しすると二人からの連絡が入り、俺達は洞窟の外へと出た。
この洞窟は山岳の上にあり、外に出ると敵の拠点を一望出 来た。
眼前は底が見えぬ崖で下には広大な平原が広がっていた。敵の拠点は平原に出来た小高い丘に悠々と聳え立つ大きな黒い城。
丘の周りには町が広がっており、さらにその町を巨大な城壁が取り囲んでいる。
アポローンが憎しみの篭った声を出す。
「あれが敵の本部。――行きましょう! 高崎さん!!」
「まぁ、慌てるな」
「そういうわけにはいかなそうじゃぜ? 奴らはもうわしらの潜入に気が付いておる」
ゼウスは厳しい顔つきで前方を睨んだ。
城門からはもの凄い人数が出てきていた。皆、様々な武装を施していた。中には巨大なモンスターも見られる。
「――どうしますか?」
「予想の範囲内だ。最初の指示通り、俺達は奴らと正面から戦闘する。幹部序列10以下は俺達に任せろ。後の敵戦力はお前達に任せる。いいな! ――――戦闘開始!!」
俺達は同時に崖から平原に飛び降りた。どんどんと加速する身体。
このままでは後数秒もすれば地面に激突してしまうだろう。俺がゼウスに目配せするとゼウスが声を張り上げる。
「――秩序を守護する天空神よ。我に世界を変えうる力を与えよ!! 行くぞ! 能力――全知全能の力。皆の重力をゼロに!」
ゼウスが能力を使用すると落下していた身体がゆっくりと減速し、地面に激突することなく着地に成功した。
足が着いたと同時に俺達は目前にまで迫る敵に駆け出した。
「ここは私達に任せてください! ボス達は先に!!」
部下の一人がそう叫ぶと、アポローンとゼウスの部下達は目の前に敵に攻撃を仕掛ける。
「――わかった! 頼んだぞ!!」
俺達は部下達によって作られた隙間を駆け抜ける。しかし、前方から10メートルはあるであろう一つ目の巨人が3人立ち塞がった。
アポローンに目配せすると、彼はスキルブックを出現させる。
「――守護神にして光明の神よ。我に皆を守り、悪を射抜く力を与えよ!! 能力――闇を射る者!」
刹那。アポローンのスキルブックが眩い光を放出させ ながら形を変え、何時の間にかアポローンの手には神々しい輝きを放つ黄金の弓が握られていた。
彼はその弓の弦を手を当てる。すると、弓から漏れていた光が手に集束し、光の弓を作り出した。
「射抜け!! 聖なる弓!!!」
アポローンが弦を引くと、光の矢は目にも留まらぬ速さで放たれる。そして途中で一本だった矢が三本に分断され、巨人の目玉へ一直線に突き刺さった。
矢が刺さった瞬間――巨人の身体からは光が漏れ出し、最期には全身がひび割れて崩れ去る。
その光景はまるでガラスを割った時のようであった。
「よっしゃ!!」
「喜んでいる暇はない。行くぞ!!」
俺達はさらにスピードを上げ進行する。途中、何度か敵が立ちはだかったが突破に成功した。
そして、敵の町の城門が見え始める。
「あと少しだ!! 行くぞおぉぉ!!!」
そう叫んだ瞬間――上空からとてつもない殺気を感じ、俺達は咄嗟に後方へと回避した。
すると、今まで立っていた場所にどす黒い色をした大鎌が上空から降ってきた。そして、さらに降って来る人間が一人。
そいつは黒のフード付きのマント被り、地面に刺さった大鎌を抜き取った。
その姿はまるで――死神。俺達はその正体を知っていた。
「お前は……! ギリス政府最高幹部四人の一人――死神のカイ!!」
俺がそう叫ぶと、カイはその姿を露にした。カイは血を連想させる程真っ赤な長髪の女性。
顔立ちは女優並みに整っているが、その顔からは深い狂気が見て取れた。
「うふふふ……。貴方達エスポワールの人間じゃないわね?」
俺はアポローンとゼウスに視線を向ける。すると、ゼウスが小さく言葉を漏らす。
「あいつとはわしが殺ろう。お主らは先に行くのじゃ……」
「――わかった。お前ら!! ここはゼウスに任せる! 先に行くぞ!!」
「頼みましたよゼウスさ ん!!」
「うむ……………………」
カイは不気味な笑みを浮べながらこう言った。
「あらあら。私の質問には答えてくれないのかしら?」
俺達はカイを警戒しつつ前方を目指す。意外な事にカイが俺達を邪魔することはなく、彼女の視線は目の前に立つゼウス一人に向けられていた。
アポローンは背後を盗み見た後、複雑な表情で言葉を漏らす。
「ゼウスさん大丈夫かな――――」
「大丈夫だろう。なんたってあの人は俺達よりはるかに強いんだから……」
俺の言葉にアポローンはニヤリと笑い、前を見詰める。そして俺達は敵の拠点へと足を進めるのであった。
{ゼウスside}
高崎殿達が敵の拠点のある町に入って行くのが視界に見える。
――上手く進入出来たようじゃのぉ。さて、わしも早く追いつかねば……………………。
わしは眼前で不気味な笑みを浮べながら佇む娘に視線を向けた。彼女は黒々とした大鎌を肩に置き、口を開いた。
「貴方が私の相手かしら? かなり老いているようだけど……大丈夫?」
「――ふん。馬鹿にするなよ小娘が? お主程度殺すくらいの実力はあるつもりじゃぜ?」
「ふふふふ。その言葉もどうやら嘘ではないようね……。久々に全身が疼くのよ。さぁ、殺りましょうか?」
カイは殺気を放出させ、鎌をクルクルと巧みに回す。わしは構えるわけでもなくその姿を傍観した。
「あらあら、貴方は戦う気がないのかしら? 殺気すら感じないわね。――それなら私から行きましょうか」
刹那、目の前に立っていたカイが消失し、次の瞬間には背後に現われる。彼女は大鎌をわしの首元目掛けて振るった。
しかし、その鎌は空を切る。カイの興奮した声が響いた。
「あははは! まさか避けられると思いませんでしたわ。本気を出したんですのに――」
わしは先程奴が立っていた場所でカ イに鋭い視線を飛ばした。
「ほざけ。貴様とてまったく本気を出しておらんじゃろうが? 末恐ろしい娘じゃのう……」
――流石にギリス政府の最高幹部の一人なだけはある。それにあの大鎌――。まるであの鎌自体が生きているように感じられたわい。――――あれは触れてはいけないじゃろう。
「これでも私はSSランクですから、この程度の事はたやすいですわ。――あら、少しは興味を持ちましたか?」
「SSランクか……。上限であるSランクを超えた存在。そんな奴がいるとはのぉ」
「ここまでの高ランカーと戦うのは貴方のようなおじいちゃんでもないんですわね? もっと楽しみましょうね。――ふふ。お出でなさい! 死の人形劇」
カイがそう叫ぶと、彼女の周囲の地面から漆黒のローブを身に纏った者達が幽霊のように浮かび上がってきた。
皆、カイと同じく鎌を持っており、その姿はまたしても死神のようであった。
「――さぁ。殺しなさい!!」
死神達はカイの掛け声で襲い掛かって来る。わしはその攻撃を淡々と避けながらも、時折隙を窺っては反撃に転じた。
しかし、死神達には打撃攻撃が効かないのか、一向に倒す事が出来ない。
――これでは埒が明かんのぉ。少し能力を使用するか……。
わしを取り囲むようにして攻撃を仕掛けてくる死神達。能力を発動させると、わしを中心に暴風が巻き起こり、死神達を空へと押し上げた。
そして、わしが即座に片手を軽く下ろすと、上空に舞っていた死神達が地面へと急降下する。
さらに、もう片方の手を軽く振ると、地面に埋め込まれた死神達は落雷に見舞われる。
落雷により死神達は元の形を維持できず、初め出てきた時と同じように地面へと吸い込まれるように消失する。そんな光景を見たカイは歓喜した。
「こんな簡単に私の人形達が殺されてしまうとは――。ふふ……。いいわ! 次は私が自らっ!!」
突如カイは自身の手を鎌の刃に当て切り裂く。彼女の手からは大量の血が流れ出した。
しかし、その血が地面に落ちることはなかった。
なぜなら、大鎌の黒々した刃が彼女の血を吸収していったのだ。
血を吸う度に大鎌は肥大化し、黒い靄のような エネルギーを纏い始める。
「あっふふふふふふ……。死神よ! 私の血を糧に死を誘う力をっ!!」
漆黒の大鎌はカイの血を吸い続け、赤黒く染まる。彼女は狂ったように笑い出し、鎌を振るった。
それによって鎌に纏わり付いていた黒いエネルギーが斬撃と形を変えて飛来する。その禍々しい力には決して触れてはいけないと全身が警報を鳴らした。
放たれるいくつもの斬撃。即座に能力を発動させ、不規則に放たれる攻撃の隙を窺う。
そして、その時は直ぐに訪れた。わしの能力『全知全能の力』は天候を操り、自身の指定した場所を無重力にする事ができる能力。
わしは身体の重力を下げ、スピードを上昇させる。それによりわしは一瞬でカイの懐に潜り込んだ。
――自我を失っているのぉ。しかしこれで終いじゃぜ……。
わしはカイの隙だらけのお腹に重力を通常の二倍にした拳をめり込ませる。カイの身体からは鈍い音が鳴り響き、弾丸のように後方へ吹っ飛んだ。
完璧に成功した攻撃だったが、彼女は何事もなかったかのように立ち上がる。
「なんと……! これでも倒せぬか――」
「うふふふふふ。衝撃で全身の骨が砕け散ったわ……」
「なんじゃと? なら何故起き上がれる?」
カイは質問には答えずに気味の悪い視線を向けた。
「――あふふふ。貴方の腕は大丈夫かしら?」
「わしの腕? ……む!」
カイの視線を辿り自身の右手を見ると、右手がうっ血した様に黒々と変色していた。
しかも、それは徐々に腕へと進行しているではない
か。
――これは!? まさか、先程奴を殴った事からか? ――小賢しい。おそらく全身に鎌の刃と同じエネルギーを纏わせていたのじゃろう。アフロデーテがおれば治療が出来るのじゃが……。
「仕方ない――――。ふんっ!」
わしは左手を手刀の形にして、能力で雷を纏わせる。そして、そのまま右ひじに向けて振り下ろした。
その光景を見たカイは感極まった声を出した。
「――流石ですわ!! 私の死神の力が全身に 行く前に、腕を切り落としたのですね! 少しの躊躇もなさらないとは……。興奮しますわねぇ」
切り落とした腕からは大量の血が流れるが電流を流して傷口を焼き、出血を止める。
身体には激痛が走るが顔色一つ変える事はない。
「お主を甘くみすぎてようじゃのぉ……。そろそろ本当に時間が無くなってきおったぜ。さて、殺るかの?」
わしはスキルブックを出現させ、言葉を放つ。
「――人類と、神々双方の秩序を守護する天空神ゼウスが使いし神器よ、我の元へ現われろ! 雷神器――雷霆!!」
スキルブックはわしの言葉に反応して光り輝き、黄金のステッキ程のサイズの武器へと変化した。
この武器こそかつて天空神ゼウスが使用したとされる武器。その力は一瞬で人間を炭化してしまう威力を誇る。
「――――行くぞ? 小娘」
わしは左手に持つ雷霆をカイ目掛けて軽く振った。すると、突如として上空から彼女目掛けて雷が落ちる。
落雷は広範囲の地面を抉り、周囲にいたモンスター達も一瞬で炭へと化した。舞い散る砂煙が晴れると、フードがボロボロとなって肌が露出したカイの姿が現われた。
「一発では流石に死なぬか……」
「はぁ、はぁ……。まさかここまでの威力とは思ってもいませんでしたわ――。ですが、まだまだですわ!! 次はこちらか……」
突如として鳴り響く雷鳴。わしはカイが言い終わらないうちに再度雷霆をもっと速い速度で振り下ろす。
すると、先程よりもはるかに速く、そして威力の高い落雷に彼女は見舞われる。
「わしには時間がないといったじゃろう?」
それから続けて何度も雷を落とした。しかし、落雷により周辺の敵が全滅しても彼女の刺々しい殺気が消えることはなかった。
――死神の力を借りて防御して いるのか? ――――やはり遠距離では致命的なダメージを与えることは出来ないか。
雷鳴だけが鳴り響いていた大地に彼女の笑い声がこだまする。
「あはははははは!! 何度やっても同じですわ! 例え世界最強の神――ゼウスの雷であっても! 私の死神の力を破ることは出来ないのですわっ!!」
「それはどうかのぉ?」
「――うっ!? いつの間にっ!? うはっ!!」
この時には既にわしは遠距離の落雷を止め、カイに肉薄していた。
そして、高濃度の雷を充填した雷霆が彼女に触れると、カイの全身は感し、で後方に吹っ飛ぶ。
わしは瞬間移動のような速さで、彼女が吹っ飛ばされる場所に移動し、再度雷霆を彼女に当てた。そして、また彼女はまたゴムボールのように飛ばされる。
「お主は言ったの。SSランクの私に興味を持ったかと……。その逆じゃ。落胆したのじゃよ、わしは――。SSランク如きで強くなったつもりのお主にな……」
「なんですっ……て? SSランク如きですって!?」
わしは再度懐に飛び込み、雷霆に今まで以上の雷を充填する。そして――――
「そうじゃ。わしのランクはSSS。お主の限界をさらに超えた存在じゃ。小娘――。一瞬で灰になるがいい。神の怒り(デオス シモス)!」
雷霆に充填された高濃度の雷は、一瞬で光線のように解き放たれカイを包み込んだ。
そして、彼女の断末魔の悲鳴をも飲み込み戦場を
焼け野原にする。後に残る物は何も無い。全てを灰にする力――。わしは雷霆を消し言葉を漏らす。
「ふぅ……。やっと終わった。ちと、腰に来たぞい――。そうとも言ってられないか。わしも早く行くとしよう……」
「――やぁ。久々だね………………ゼウス」
敵の基地へ向かおうと体を反転させると、そこには驚愕の光景が広がっていた。
「おぬしは……カオス!! ――――いや、今はギリスじゃったか? それに……他の幹部の連中まで――」
目の前には憎きギリス政府のボス――ギ リスと幹部達の姿。
「高崎殿達はどうした!?」
「高崎? ……あぁ。さてどうだろうね?」
ギリスは笑みを浮かべ、わしは急激に湧き出る殺気を抑えて睨んだ。
「――おっと、そんな怖い顔をしないでくれよ? 貴方が暴れたら此方にも被害が出てしまうからね」
「ほう。それでぞろぞろと仲間を引き連れて来た、というわけかのぉ?」
「そうですよ。強敵は先に倒しておこうと思いまして」
「――ふん。流石に用心深いのぉ? じゃが、それだけで足りるのか?」
わしは高崎殿達が生きている事を祈りながら、ここまで抑えていた怒りを爆発させた。
そして、雷霆を出現させ100パーセントの力を開放する。
「皆殺しじゃ――――」




